中室牧子(なかむろ・まきこ、写真右)  慶應義塾大学 総合政策学部 准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、日本銀行、世界銀行、東北大学を経て現職。コロンビア大学公共政策大学院にてMPA(公共政策学修士号)、コロンビア大学で教育経済学のPh.D.取得。専門は教育経済学。著書にビジネス書大賞2016準大賞を受賞し、発行部数30万部を突破した『「学力」の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。津川友介(つがわ・ゆうすけ、写真左)  ハーバード公衆衛生大学院 リサーチアソシエイト。東北大学医学部卒業後、聖路加国際病院、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター(ハーバード大学医学部付属病院)、世界銀行を経て現職。ハーバード公衆衛生大学院にてMPH(公衆衛生学修士号)、ハーバード大学で医療政策学のPh.D.取得。専門は医療政策学、医療経済学。ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関するエビデンスを発信している。

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◎メタボ健診を受けていれば健康になれる
◎テレビを見せると学力が下がる
◎偏差値の高い大学に行けば収入が上がる

一見正しそうに見えるが、実はこれらの通説は経済学の有力な研究ですべて否定されている。ここでいう「メタボ健診」と「健康」のように、「2つのことがらが因果関係にあるかどうか」を調べる方法のことを「因果推論」(いんがすいろん)と呼ぶ。
この因果推論の考えかたを一般書で初めて紹介した書籍『「原因と結果」の経済学』が全国の書店で話題。毎日新聞朝刊、日経新聞朝刊に書評が掲載され、池上彰氏も「私たちがいかに思い込みに左右されているかを教えてくれる」と推奨。
どうすれば、ある2つのことがらが因果関係にあるといえるのだろうか。『「原因と結果」の経済学』から、一部を特別に抜粋する。

相関関係を因果関係のように
見せてしまう「第3の変数」

 「まったくの偶然」(第13回)の次に私たちが疑ってかからなければならないのは、原因と結果の両方に影響を与える「第3の変数」の存在だ。専門用語で「交絡因子(こうらくいんし)」と呼ぶ(注1)。

 これは、相関関係にすぎないものを因果関係があるかのように見せてしまう厄介者だ。

 交絡因子の具体例を見てみよう。第1回で述べたとおり、「体力がある子どもは学力が高い」と言われている。このことを知って、子どもに運動をさせようと考える親もいるかもしれない。

 しかし、体力と学力とのあいだに因果関係があると断定するのは早計だ。子どもの体力にも学力にも両方影響している第3の変数があるかもしれない(図表1)。

 たとえば「親の教育熱心さ」などがある。教育熱心な親は、子どもにスポーツを習わせたり、食事に気をつけたりする(体力に影響を与える)だろうが、同時に子どもを勉強するように仕向けるだろうから、学力も高い(学力に影響を与える)傾向がある。

 この場合、本当に子どもの学力を上げているのは体力ではなく「親の教育熱心さ」だ。もしそうなら、無理やり体力をつけさせても、子どもの学力は上がらないだろう。

 「因果関係かどうか」を検討するときには、原因と結果の両方に影響を与える交絡因子が存在しているかどうかを疑ってみることが重要だ。

注1 経済学には「欠落変数」という用語があり、「交絡因子」とかなり近い概念である。用語の定義に関する詳細は専門書に譲る。

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