先制して、前半のうちに逆転されて、後半に入ってひっくり返す――。スリリングな得点経過による3-2の逆転勝利だったが、内容に満足する選手はひとりもいなかった。


セットプレーで3点目を決めた川崎フロンターレの板倉滉「リスク管理をしっかりしないと失点してしまう。改めて今日気づかされてよかった」とキャプテンのMF坂井大将(大分トリニータ)が反省すれば、センターバックのDF冨安健洋(アビスパ福岡)は「(U-20ワールドカップは)楽しみですけど、今日のような出来では戦えないだろうな、というのも感じました」と振り返った。

 U-20ワールドカップの初戦を6日後に控えた5月15日、静岡のエコパスタジアムで行なわれたU-20ホンジュラス代表との親善試合は、いくつかの課題が浮かび上がった一方で、このチームの強みも見て取れた。

 スターティングラインナップは、GK:小島亨介(早稲田大)/DF:初瀬亮(ガンバ大阪)、冨安、中山雄太(柏レイソル)、舩木翔(セレッソ大阪)/MF:坂井、原輝綺(アルビレックス新潟)、堂安律(ガンバ大阪)、三好康児(川崎フロンターレ)/FW:岩崎悠人(京都サンガ)、小川航基(ジュビロ磐田)の11人。おそらく、南アフリカとの初戦を睨んだものだろう。

 ゲームが動いたのは15分、坂井の左CKに小川が頭で合わせて日本が先制。この少し前、坂井はニアにいた冨安にCKを合わせている。これで冨安への警戒心を強めたホンジュラス守備陣の裏をかく、ファーサイドへの見事なキック。「ドンピシャでいいボールが蹴れた。狙いどおりでしたね」と坂井も胸を張った。

 実は、日本の3ゴールはすべてがセットプレーによるものだった。

 47分の同点ゴールは、坂井がPKで決めたもの。63分の3点目は、MF遠藤渓太(横浜F・マリノス)のCKにDF板倉滉(川崎フロンターレ)が頭で合わせたものだ。

 小川をはじめとして「セットプレーでしか取れなかったのは不甲斐ない」と嘆く声が選手たちから聞かれたが、セットプレーでゴールが取れるならこれほど効率的なことはない。「キックの質がよかった」と内山篤監督も納得の表情を見せていた。

 キッカーには坂井や遠藤のほかにも三好、MF市丸瑞希(ガンバ大阪)、FW久保建英(FC東京U-18)と豊富な人材が控えており、南アフリカ戦までにバリエーションをさらに増やすことも可能だ。セットプレーはこのチームの強みと言っていい。

 もっとも、先制したとはいえ、日本が前半の主導権を握れていたわけではない。

「ちょっと慌てた部分があった」と坂井が振り返ったように、ホンジュラスのプレッシャーを受けて横パス、バックパスで逃げるシーンが何度かあった。ボールを握っているようで、実は持たされている形。「ただの横パスが多くて、縦パスを入れるための横パスではなかった」と坂井も認めるしかなかった。

 そんななかで、日本は逆転されてしまう。

 18分の失点は、日本のCKをクリアされ、そのまま一気に運ばれて喫したもの。スピードに乗ったMFホルヘ・アルバレスに見舞ったタックルがかわされた初瀬は「僕がカットできればよかったんですが……」と悔やんだが、世界の戦いにおいてカウンターへの対応を誤れば即、致命傷となる典型例。リスク管理の甘さを突きつけられたシーンだった。

 32分の失点は、中盤でのミスから相手に奪われ、スルーパスによって中央を破られたもの。ペナルティエリア近くのミスは見逃してもらえないという、これも世界との戦いにおける典型的な失点パターンだ。指揮官も「もう一回、詰めてやっていかないといけない」と修正を誓った。

 1-2で折り返した日本が反撃に出るきっかけとなったのは、市丸の投入だった。

 後半に入ってホンジュラスの運動量が落ちたこともあったが、原に代わってボランチに入った市丸と坂井が攻撃で縦の関係を築いて相手のマークから逃れ、代わるがわる縦パスを入れていく。

 加えて、市丸が右ボランチに入ったことで、右サイドハーフの堂安、右サイドバックの初瀬による「ガンバ・トライアングル」が築かれ、右サイドにおける攻撃の組み立てが見違えるようによくなったのだ。初瀬が言う。

「ワンタッチでポンポンってつなぐのは中学のころからやっていることなので、言わなくてもわかり合えている」

 こうして右サイドで作られたチャンスをフィニッシュへと結びつけようとしたのが、61分から投入された久保であり、遠藤だった。「右サイドで崩して、左で仕留める形が何回かあったので、いい形を作れていたと思う」と、坂井は手応えを口にした。

 2トップの一角に入った久保と左サイドハーフに入った遠藤は、自らもドリブルで仕掛けてゴールに迫ったが、2トップの軸に小川を据えてそのパートナーに岩崎、久保と異なるタイプを使い分けられるのも、このチームの武器だろう。

 岩崎は小川の周りを衛星的に動きながら、相手ディフェンスラインの裏に飛び出して勝負するタイプ。一方の久保は小川のやや後方、セカンドトップとしてボールを受けてドリブルを仕掛け、スルーパスを繰り出すこともできる。

「縦パスを入れたり、裏に蹴ったりと、(岩崎)悠人と(久保)建英によって使い分けています」と坂井は言う。岩崎と久保を戦況に応じて試合途中に交代させたり、相手によってスターターとスーパーサブの役割を変えたりすれば、面白い。岩崎を起用すれば「速攻の色」が強まり、久保を起用すれば「ポゼッションの色」が強まるというように、攻撃のカラーに変化をつけられるのは、明らかな強みだろう。

 日本にとって実に5大会ぶりとなるU-20ワールドカップの舞台は、5月21日の南アフリカ戦で幕が切って落とされ、ウルグアイ戦、イタリア戦と続く。とりわけ、南米王者のウルグアイと欧州2位のイタリアはタレント揃いで、決して簡単なグループではないが、自身やチームの強みを出し切ったと誰もが言い切れる戦いができたなら、大きな財産が得られるはずだ。

 ワールドユース準優勝に輝いた小野伸二や遠藤保仁らの「黄金世代」ですら、なし得なかったアジア選手権優勝の誇りと自信を胸に、世界大会へと臨んでほしい。

■サッカー代表記事一覧>>