ロシアから北朝鮮に贈られた消防車(画像:朝鮮中央テレビキャプチャー)

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北朝鮮の各地で、同時多発的に山火事が発生していることが衛星写真で確認された。当局はこれといった対策を取れずにいるもようだ。米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

山火事が発生したのは今年3月のこと。衛星写真からは、江原道(カンウォンド)、黄海道(ファンヘド)、平安道(ピョンアンド)の10数カ所で山火事が起きていることが確認できるという。

ところが、4月に撮影された衛星写真では、山火事は消えるどころか全国30数カ所に拡大していて、中でも江原道のものは非常に大規模となっている。3月に発生したものが、今に至るまで燃え続けているようだ。

山火事が続く原因のひとつは乾燥した天気だ。韓国気象庁によると、江原道では少雨が続いており、ここ3ヶ月の降水量は平年の約半分に過ぎず、異常高温が続いている。

もうひとつ考えられる原因は、焼畑だ。

今回、山火事が多く発生している江原道と咸鏡南道は、朝鮮王朝時代から焼畑農業で生計を立てる火田民と呼ばれる人々が最も多い地域だった。脱北者によると、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の頃に焼畑農業が復活。山間地には焼畑で開墾した畑を1000〜2000坪ほど所有している人が多いという。

このような山火事に対して、北朝鮮当局は有効な対策が打てていない。

北朝鮮農業科学院で勤務経験を持つ脱北者のイ・ミンボクさんによると、北朝鮮には消防用ヘリコプターがなく、地方では消防車や様々な消防設備が不足している。火を消そうにも、住民を動員して、手や布で叩くぐらいのことしかできない。

装備をまともに供給できないことを棚に上げ、現場を批判するのは北朝鮮当局の常套手段だ。

2015年5月31日の労働新聞は、咸鏡南道の咸興(ハムン)、耀紱(ヨドク)、虛川(ホチョン)の幹部に対し、山林の監視、山火事の通報、消火人員の動員を怠ったため、山火事に対処できず、被害を拡大させたとして、「胸に手を当てて、党の政策を貫徹する精神と愛国心があるのか反省すべき」などと厳しく批判する記事を掲載した。

一方、火事を見ても何もできない状況に、現場の消防士は心苦しい思いをしている。

2012年に脱北した慈江道(チャガンド)江界(カンゲ)出身の元消防士、キム・ヨンウクさんは、韓国の北朝鮮専門ニュースサイト、ニューフォーカスに次のように語っている。

「夜中に民家が燃えているとの知らせが入ったが、消防車にガソリンが入ってなかった。上部に連絡してガソリンを手配しても、今度はタンクに入れる水がなかった」

「現場に向かう途中で、消防車のタイヤがパンクした。消防隊長が、タイヤを中古にはめ替えていたからだ。新品のタイヤは、盗んで上官にワイロとして渡していた」

「ようやく現場に着いたころには、村人たちがたらいで炎に水をかけていた。やがて、家はコンクリートの壁を残して燃え尽きた。恨めしそうに泣く住人を見て、心苦しくなった」