「グルテンフリー」は無意味だった!?

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 「遅延型フードアレルギー」をご存じでしょうか? 特定の食品を口にしてすぐに鼻水や肌荒れが起きるタイプのアレルギーではなく、1〜3日後に遅れて症状が現れるタイプのアレルギーのことです(1)。

 この現象を日本に知らしめたのは、2015年のベストセラー「ジョコビッチの生まれ変わる食事」でしょう。

 謎の不調に悩んでいたプロテニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチが、ある日、医師から遅延型アレルギーの可能性を指摘されて食事を改善。ウソのように体調がもどり、世界のトッププレーヤーに返り咲くまでを記した一冊です。

 本書でジョコビッチが使ったのが、「ELISA」という検査法です。体内の抗体を調べる定番のアレルギーテストで、「生まれ変わる食事」でも手軽な方法としてオススメされていました。

 近年は日本でも「ELISA」が流行っており、1回5〜6万円の高値で検査を行うクリニックが増加。その評判は上々のようで、ネットでも「謎の疲れが」や「しつこい咳の原因がわかった」などの声もよく見かけます。

 確かに、いつもの食事が不調の原因だと言われれば、誰でも怖くなるはず。テストをしてみたくなるのが人情でしょう。

 が、ダマされてはいけません。実はいまの科学では、遅延型フードアレルギーのテストはまったく認められていないからです。

 たとえば、2013年に中国で行われた研究を見てみましょう(2)。

 これは北京国際医療センターの論文で、21,305人の成人を対象にしたもの。なんのアレルギーも持たない人と、特定の食品で症状が出てしまう人をランダムに選んだようです。

 研究チームは全員にELISAテストを行い、小麦や卵などをふくむ14種類のIgG抗体をチェックしました。

 IgG抗体とは、人間が持つ免疫システムの大事なパーツです。体内に入ってきた異物と戦う働きを持ち、特定の食品に反応して血液中の量が増えていきます。そのため、IgG抗体の量を調べれば遅延型フードアレルギーの有無がわかると考えられているわけです。

 ところが、研究の結果は次のようなものでした。

・IgG抗体が多くてもフードアレルギーの症状が出ない人も多い
・IgG抗体が少なくてもフードアレルギーの症状が出る人もいる

 ELISAテストの診断は、まったく当てにならなかったのです。

◆遅延型フードアレルギーは一度では検証不可能

 このような問題が起きるのは、そもそも個人によってIgG抗体の量が大きく違うからです。健康な人でもIgG抗体が多いケースは普通なため、いくら大量に検出されたからといってアレルギーだとは判断できません。

 フードアレルギーテストが間違いを起こす確率は、およそ50%と考えられています。つまり、本当は問題がない食品でも、2回に1回はアレルギーだと判断されてしまうわけです。まさにムダ金ですね。

 それでは、遅延型フードアレルギーを見つける方法は他にないのでしょうか?

 ここでもっとも参考になるのが、2015年に出た論文でしょう(3)。免疫の専門家チームが過去のデータを洗い直し、「グルテン過敏症」(遅延型フードアレルギーの一種)を診断する最高の方法をまとめたのです。

 その方法とは、以下のようなものでした。

1.グルテンを完全に絶った食事を6週間続け、そのうち3週間は専門医の症状診断を受ける
2.6週間でアレルギー症状が30%以上改善しなければ、グルテン過敏症の可能性はない
3.ステップ2で症状の改善がみられた場合は、さらに厳密なテストに進む
4.1週間だけ「グルテンが入った食事」か「グルテンフリー食」のどちらかをランダムで続ける。もちろん、被験者にはどちらの食事をしているかを隠す
5.次の1週間で「グルテンフリー食」を行う