女優のエマ・ワトソンさんが主演するディズニー映画『美女と野獣』(ビル・コンドン監督)が『アナと雪の女王』を上回るヒットスタートを記録し、ただ今上映中です。

本作のヒロイン、ベルは読者家で聡明なヒロインですが、閉鎖的な村では浮いた存在で「ここではないどこか」を探しています。“女性はこうあるべき”という周囲からの固定概念に窮屈さを感じていて、彼女の悩みはまるで現代の女性が抱える悩みの一つでもあるように重なります。

そこで、ウートピではシリーズで、女性のしがらみとなってしまっている「その、呪われたドレスを、脱ごう。」をテーマに著名人に話を聞いてみることにしました。

インテリ枠は「おいしい」

--インタビューを受けていただき、ありがとうございます。今回は、ディズニー映画『美女と野獣』の公開を記念して「その、呪われたドレスを、脱ごう。」をテーマにお話を伺えればと思います。映画はディズニーきっての知性派ヒロイン・ベル(エマ・ワトソンさん)が保守的な村で”浮いた存在”ながらも自分の手で幸せをつかみ取っていくストーリーです。

進歩的なベルが村人から煙たがれたように、21世紀の日本でもなお、まわりと変わっている女性が煙たがれるという部分ってあると感じています。「女はやっぱり愛嬌」とか、「ハイスペ女性は結婚できない」とか、そんな発言は今の時代もちらほら耳にします。そこで今日は、語学に堪能で「若い女性には珍しく」政治にも興味がある春香さんに“女の知性”をテーマにお話を聞きたいと思いました。

春香クリスティーン(以下、春香):知性ですか? 私には知性がないので「邪魔」と感じたことはないですが……(笑)。語学が堪能なのもすごいって言われることもありますが、向こうに住んでいたから話せるだけでそれが果たして「知性」かどうかはわからないですね。

--なるほど、そうですね。何をもって「知性」とするかも難しいですね。

テレビで春香さんを見ていると「インテリ枠」に入れられていることが多いなと感じます。つまり語学ができて政治など社会ネタにも通じている「知的な女性」というイメージです。そういう世の中から求められる自分のポジションについてどう思います?

春香:正直、おいしいですね(笑)。日本の女性芸能人では、インテリ枠が比較的空いているんです。だから、入りやすい。ホントの自分がインテリだとは全然思わないけれど。

--女性のインテリ枠が空いてるというのは、面白いですね。でも、確かにそうかも。競争率が低いかもしれませんね。

まだ「周りの目」を気にしてるの?

--インテリ枠が空いているという話にも通じると思うんですが、日本の女性の中には、男性と接するときにも「男ウケ」を考えちゃったり、モテないからという理由で学歴を隠していたり、まわりを気にして自分を出していない人が多いように感じます。そのあたりについて、何か思うことはありますか?

春香:そもそも男性がたくさんいる飲み会とかに行かないのでわからないんですが、ただ、ちょっとバカなほうが(女の子は)可愛いっていう人もいるのは確かですね、バカにしているなと思いますけど。

--春香さんは“政治オタク”としても知られていますが、「女性なのに、政治が好きって変わってるね」と言われることはありませんか?

春香:うーん、どうなんだろう。政治もそういう話題が好きな人が自然と集まってきている感じなので居心地の悪さや周りの目を気にしたことはないですね。私、もともと友達も少ないんです。気が合う人や一緒にいて落ち着ける人がいれば友達になりたいけれど、無理して付き合う必要はないと思います。

--その通りですね。春香さんと話していると、なんだか「周りを気にしないようにしたい」って言っている自分が一番周りの目を気にしているよなって思ってきました……。

春香:自分が好きなことや自分が勉強したいことがあるんだったら、誇りを持っていいのかなと思います。せっかく何かに興味を持っているのにそれを隠すのは「どうして自分を押し殺さないといけないの?」と思うし、逆に興味のない分野なのに賢ぶっても心がついていかないですよね。100人いたら100通りの意見や見方があるもの。自分が楽しくて面白いと思うことをなぜ追求しちゃいけないの?って思います。

日本はぬるま湯? だから心地よい

--はっきりされているのが潔いですね。それってやっぱり16歳までスイスに住んでいたからというのもあるんでしょうか?

春香:ヨーロッパにいた頃は、意見をはっきり言う人が多くて「何で意見を言わないの?」と言われることもありました。同級生と話していても私は黙っているタイプで。性格なんだと思います。どちらかと言うと、人の話を聞くのが好きで、何かを決める時も決め切りたくないタイプ。白黒はっきりさせたい人もいればギリギリまで考えたい人もいるし、性格ですよね。

--面白いですね。「意見をはっきり言うヨーロッパ」はちょっと苦手だったんでしょうか。むしろ「意見をはっきり言わない日本」にはすんなり馴染めたとか?

春香:日本は居心地がよいですね。言葉も「すごーい」「かわいい」「マジー?」を使いまわせば会話が成り立っちゃう(笑)。曖昧にしやすい言語なんだと思います。わざわざ「私はこう思う」と言わなくてもいい。「〜と言われていますよね」と主語をあいまいにした表現もできるし、擬音語や擬態語も多いからふんわりニュアンスで伝えることができる。そこが日本の美徳や素敵な文化だなとも思うし、ちょうどいい温度のお湯でずっと浸かっていたいと感じることもあるんですが……。

でも、同時にそれはぬるま湯ということでもあるので、時には自分を客観視してちょっと引いた場所から見ないといけないなとも思います。「甘え」にもつながってしまうから。

--逆に日本に来てイヤだなとか馴染めないなと思ったことはありますか?

春香:高校生で日本に来たばかりの時は「外国人? ハーフ?」って聞かれて「自分はバリバリ日本人だって思っているのに、日本人って思われないんだ」ってショックで落ち込んだこともありました。

でもだんだん「おいしいな」と思うようになったんです。自分を知ってもらうきっかけの一つだなって思うようになりました。スイスに16歳まで住んでいたからドイツ話もできるし、一つの会話のネタくらいに考えています。毎回、聞かれて面倒な部分もありますが(笑)。でも、私はしゃべるのも苦手だから逆にありがたいなって。自分のコンプレックスが強みになりました。

特にこの仕事をするようになってからは本当にそう思う。イジられたりキャラになったりするので。だから、自分の要素、例えば親からもらったものとか勉強してきたことを大事にしないとなって思いますね。

「ありのまま」を自信のタネに


--最初の質問に戻るんですが、「オンナの知性」についてどう思いますか?

春香:”知性”をどう定義するかにもよりますよね。私は大学を卒業できなかったので学歴はないですが、せっかく学歴や知性があるんだったら、武器にすればいいのにと思います。それがクレーバーに生き抜くってことなんじゃないかな。

よく「ありのままで」って言いますが、人って「ありのまま」でしかいられないものだとも思うんです。どんな自分も自分というか。例えば東大卒なら東大卒キャラにしたりネタにしたりしちゃえばいい。それが活きる人だっていますよね。見せびらかしたり、自慢したりするわけじゃないけれど自信のタネにすればいいと思うんです。

--上智大学を中退されているんですよね。名門大学だし、入るのも大変だと思うのですがそれでも退学したことはコンプレックスに思っているんですか?

春香:そりゃコンプレックスですよ! もっと勉強したいという気持ちもあります。ただ、大学を卒業するということだけに限らず、今はいろいろなことを学びたいという気持ちのほうが強いかな。

それに今の芸能界の仕事を経験したから次にいけることもあるし、今できることは何で、何を得たのかが大事なんだと思います。キレイなピカピカの履歴書じゃなくたっていい。この仕事をやってしかできないものもあるし、どの道を歩んだとしてもそうだと思います。一つの道を選んだことで可能性が狭まって落ち込むこともあるかもしれないけれど、同時に別の可能性が開けるんじゃないかなと思っています。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)