NHK『あさイチ』番組公式サイトより

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 本日、沖縄の本土復帰から45年目の節目を迎えたが、安倍政権による「沖縄いじめ」は苛烈さを増している。国は新基地建設のためにキャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立てる護岸工事を開始、波打ち際に石材を投下して重機でならすという作業が行われているが、これは国が漁業権の消失を主張することで知事権限を奪うという姑息な手段で、県が規制する岩礁破砕許可を得ないまま作業を押し進めているのである。

 基地反対という選挙で再三示された民意を無視し、また、反対を訴える市民を強制的に排除するという暴力的かつ民主主義の破壊行為が進められる一方、しかし、「本土」では、その暴挙を問題視する空気はまったくといっていいほど起こっていないばかりか、『ニュース女子』(TOKYO MX)のようなデマ報道までもが飛び出している始末だ。

 そんななかにあって、本日放送の『あさイチ』(NHK)は沖縄を特集。「沖縄の問題は日本全体の問題だ」と提起した。

 これまでも『あさイチ』では、写真家・篠山紀信と元歌手・南沙織夫妻の息子であり俳優の「アッキー」こと篠山輝信が、母の故郷である沖縄をレポート。今回はその「アッキー旅」に番組コメンテーターである柳澤秀夫解説委員が同行。最近のNHK世論調査では、「本土の人は沖縄の人を理解していると思うか」という沖縄の人への調査で70%が「理解していない」と回答しており、番組は「どうしたら沖縄のことを理解できるか」「どうしたら沖縄を我が事として考えられるか」と投げかけてスタートした。

 そして、VTRでは、沖縄に暮らす人びとのリアルな声が次々に飛び出した。

 たとえば、市の面積のじつに約24%を普天間基地が占める宜野湾市にある、沖縄国際大学でのレポート。同大学では2004年にキャンパスに米軍ヘリが墜落するという事故が起こったが、その屋上からはすぐ目の前に普天間基地が広がり、取材時もオスプレイが爆音をたてて住宅街の上を旋回。大学生たちは「(事故から)何も改善されていない。まだまだ怖い、飛んでいるだけでも」「たまたま自分のところに落ちていないだけで、そういう危険性はいろんなところにあるから、落ちる可能性が高い・低いではなく、飛ばないでほしい」と、いつ事故の犠牲になるのかわからない当事者として不安を漏らした。

 また、宜野湾市は篠山にとっては母の実家がある場所でもあるのだが、彼が2年前にも取材した小売店を営む女性のもとを訪問。以前、その女性は基地への不安を示しており、篠山は昨年12月に起こったオスプレイ墜落事故のことが気に掛かっていたからだ。

 すると、女性は「うちの上空をこんなふうに飛び回っているから、怖いですよね」と変わらぬ気持ちを打ち明けると、こう続けた。

「でも、こういう気持ちって全然伝わらないみたい。歯がゆい感じがします」
「(いまは)復帰前と全然変わらない。つねにこういう状態、アメリカ軍に脅かされて生きるっていう」

 本土復帰前といまは変わらない──。この言葉を聞いた篠山が「ほんとうに復帰したと思えるとしたらどういうとき?」と尋ねると、女性は「ほとんどの基地が撤去されるときでしょうね」と答えた。

 いわずもがな、在日米軍専用施設のじつに約7割が沖縄県に集中している。それはすなわち、事故や事件といつも隣り合わせにあるということだ。篠山は「沖縄ではひっきりなしに軍用機が飛んでいる」「やっぱりこういう景色を見ると、沖縄の方が『不安だ』と言うのはすごくシンプルですよね」と言葉にし、柳澤も「一目瞭然」と同意していたが、その現実が、本土には伝わらない。

 なかでも、放送中に嘉手納基地の近くに住んでいるという20代の女性の視聴者から届けられたFAXは、生々しいものだった。

「基地の影響は飛行機の爆音だけでなく、ガソリン系の化学薬品の臭い、夜間に消えることのないオレンジの強い街灯。静かな夜はないです。先日は夜間にパラシュート訓練がありました。もし飛行機や人が落ちてきたら、ミサイルが落ちてきたらと考えていますが、ここで生活していくしかないのです。本土の方には関係ないかもしれませんが、こういう場所もあるのだと知っていてほしいです」

 だが、こうした声の一方で、同じく沖縄に住む20代からのFAXでは、「沖縄県民全員が基地反対運動をしているわけではない」「わたしたち沖縄の若者は基地があるのが当たり前になっていて、基地について何も思わない人も多いと思う」という意見が寄せられた。

 しかし、このFAXの意見に対し、柳澤は「45年前の復帰も知らなくて、復帰以降の沖縄の現実をひとつの前提として受け入れてきている」世代ではないかと述べ、沖縄の現実を掘り下げようとする。

「それ以前の沖縄戦の時代、土地をアメリカ軍に接収された時代を知っている年配の方とギャップもあるし、そういうところで沖縄の現実って、一言で『良い・悪い』と『賛成・反対』で括れない現実がある。そういうことがなかなか本土の人には伝わっていないんじゃないかなって想いが、(VTRの女性の)『歯がゆさ』という言葉の背景にはあるんじゃないかなと」

 同様に、番組にゲスト出演していたNHK沖縄放送局の西銘むつみ記者も、米軍が事故や事件を起こしても捜査権が日本にはないなど、不当なかたちで日米地位協定が結ばれている事実を踏まえ、そうやって「対等な関係じゃない」ことを「若い人に伝えていっていない大人の責任もある」と言及した。

 だが、土地を強制的に奪われ基地との"共存"を為す術もないまま強いられてきた沖縄の歴史や、地位協定の不平等さ・主権のなさを知らないのは、沖縄の若者以上に「本土」の人間だろう。

 事実、番組でも紹介されたように、NHK世論調査では「沖縄経済は米軍基地がないと成り立たないか」という質問に、沖縄では「そう思う」と答えた人が31%に留まり、60%の人が「そうは思わない」と回答した一方で、全国で「そうは思わない」と答えた人は32%、「そう思う」と答えた人がなんと58%にも及んだのだ。──つまり、沖縄では「基地がなくても経済は成り立つ」と多くの人が考えているのに、「本土」の人びとが「沖縄には基地がないと困るだろう」と勝手に決め付けているのである。

 西銘記者が番組内で指摘したように、基地から返還された土地に商業施設が出来るなどして経済効果が生まれていることを沖縄の人びとは知っており、「基地が返還されたほうが自分たちで自立した経済をつくれるのでは」という向きが現実にはある。しかし、その現実を「本土」は見ないし、意見を聞こうともしない。「本土」の本音とは、とどのつまり「沖縄に基地を押し付けていたい」というものではないのか。

 VTRでは、篠山と柳澤が昨年12月にオスプレイが墜落した場所からすぐ近くにある集落を歩き、住民に話を聞いていたが、そのなかのひとりの「おばあ」は、喋ることに不自由さがあるようで、手振り身振りで一生懸命、墜落したときに大きな音を聞いたことやとてもびっくりしたことをふたりに伝えた。そして、地元の海は貝を捕っては食べるなど、思い出が詰まった自慢の場所だということも。

 別れたあとも何度も振り返ってふたりに手を振るおばあ。その姿に、篠山はしみじみと「俺のおばあちゃん思い出す」と言い、このように口にした。「なんでこの人たちが、そういうリスクに晒されているんだろう」。

 このおばあだけではない。沖縄に住むすべての人が、いつ米軍機が墜落するかもしれないというリスクや、昨年も起こったように、米軍に暴行を受けて殺されるかもしれないという"軍隊のある街"の恐怖に晒されている。だが、ネトウヨのみならず、「本土」で暮らす多くの人たちや評論家を気取る人間たちは「国防のためには沖縄の基地は必要」などと"上から目線"で語っては、そうした不安の声を黙殺してきたのだ。

 柳澤は、こうした「本土」の傲慢をこのように指摘する。

「僕自身も正直、こうやって沖縄の基地のことを取り上げるときに、原稿上は『沖縄の基地問題』って書くじゃない。これにものすごく違和感を感じているんですよ、最近。『沖縄の問題』『沖縄の基地問題』、これ違うんじゃないかと。『日本の問題じゃないか』って。沖縄と本土というよりも日本全体の問題だってことを意識しないと、これは現実をきっちり捉えることできないんじゃないかって、つくづく思う」

 そして、司会の井ノ原快彦は、「沖縄の生活が脅かされた現実を想像すること」を視聴者に投げかけた。

「(本土から切り離されていた過去は)全部それって、しょうがないことじゃなくて、いろいろ軍のことだったりとかいろんなことが関わっているわけだから、それをずっとひきずりながらいまも暮らしていて、いまも生活を脅かされているというところで想像していかないと」

 また、番組ゲストだった俳優の内藤剛志は、「沖縄の新聞っていまだに戦争のことを毎日のように取材している」ことを"評価"した上で、こうした知る機会が「本土にはない」からこそ、「知るところからはじめよう」「行ってみることも大事」と訴えた。

 このように、今回の『あさイチ』の特集は、「基地問題は沖縄じゃなく日本の問題」とした点でも、重要な問題提起を行う意味のある企画だったと言えるだろう。惜しむらくは、基地に反対する人びとに安倍政権がいかに牙を剥き出しにしているかという現実が伝えられなかったことだが、同番組では高江のある北部への取材もすでに行っており、「近日放送する」とのことなので、それに期待したいと思う。
(編集部)