単なる注射ではなく再生医療

写真拡大

 厚生労働省は2017年5月9日、愛媛県松山市の「医療法人大手町クリニック」に立入検査を行ったところ、本来必要な届け出を提出せずに他人の「さい帯血」を使った再生医療を提供していたことが確認されたとして、5月8日付で一時停止を命じたことを明らかにした。

インターネット上ではアンチエイジングや美容効果が期待できるとして、さい帯血の注射を進める情報やクリニックが溢れているが、今回のように違法な医療行為が提供されている可能性もある。

高リスクの第一種再生医療等に該当

「さい帯血」とは、妊娠中の女性の体内で母体と胎児をつなぐ「さい帯(へそのお)」に残った40〜100ミリリットル程度の胎児の血液だ。ただの血液ではなく、赤血球や白血球、血小板などの血液細胞のもとになる「造血幹細胞」が大量に含まれており、白血病のような血液疾患の治療に使われている。さらに、神経や骨、筋肉細胞になる機能を持つ「間葉系幹細胞」も含まれており、骨や血管の再生医療への応用も期待され研究が進められているのだ。

若返り効果なども期待できそうな気がするが、さい帯血の注射は町のクリニックでアンチエイジングや美容のために手軽に受けるような治療ではない。前述のとおりさい帯血には幹細胞が含まれるため、他人のさい帯血を直接注射するような行為は移植による再生医療とみなされ、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が適用される。最も高リスクな「第一種再生医療等」として事前に計画を申請し、厳しい審査を受ける必要があるのだ。

J-CASTヘルスケアが厚労省で再生医療を管轄している医政局研究開発振興課・再生医療等研究推進室の担当者に取材したところ、「健康な人が見た目をよりよくする、若さを維持するといった目的でさい帯血を使った再生医療をおこなうという計画が申請されたことはない」との回答を得た。

「加齢による疾病の治療という意味でのアンチエイジング的な計画は申請されているかもしれませんが、そもそも若返りや美容効果が期待できるとするエビデンス(科学的な証拠)は存在しません」

担当者はリスクがあるからこそ厳しい審査があるとし、さい帯血の場合、適切な管理がされていなければ肝炎に感染するリスクもあると指摘した。人のさい帯血ではなく牛や豚のさい帯血を使用しているので安全としているクリニックも散見されるが、担当者はさい帯血を注射するのであれば人か動物かに関係なく、第一種再生医療等としての規制対象となるという。

再生医療として申請しているか確認を

 利用者側はどのように注意すべきだろうか。厚労省の担当者は医療機関でさい帯血注射が提供されている場合や、注射するようすすめられた場合は「再生医療として実施しているのか」「(法に則って第一種再生医療等)適用計画は申請し許可されているのか」を確認するようにと話す。

「安易に受けるべき治療ではありません。無許可であると思われる場合は厚生局などに連絡をしていただければと思います」