好きか嫌いかで極端に意見の分かれそうな大仁田厚は26位。いわゆる大仁田劇場にハマったファンも多い。
 「電流爆破マッチのド迫力を体感してからは、それまでインディー団体を見下していたのがある種の尊敬に変わりました」(44・男)
 「長州戦を実現させるまでのバイタリティーは見習うべき」(46・男)

 インパクト勝負では負けていないのが、フレッド・ブラッシーだ。
 「あの噛みつき攻撃は一生忘れられない」(70・男)

 “プロレスの神様”カール・ゴッチが上位となるのは日本ならではの傾向で、その多くは新日やUWFの選手たちへのコーチングを評価したものだ。
 「プロレスの求道者的エピソードがいちいちすごい」(45・男)
 「国際プロレスでモンスター・ロシモフを名乗っていた頃のアンドレに、ゴッチがジャーマン・スープレックスを決めた試合を生で見たのが自慢」(68・男)

 ダイナマイト・キッドは、ジュニア時代の藤波や初代タイガーの好敵手だった。
 「クールな表情なまま激しく攻め続ける、そんなドSぶりが素敵」(46・女)
 「鍛え抜かれた肉体から繰り出す鋭い攻撃はもとより、相手の技に対する受け身までもがハードでスリリングだった」(50・男)
 ステロイド剤の副作用で早くにリタイアとなったのは残念だが、その闘い模様は今なおファンの脳裏に刻み込まれている。

 第30位は“暴走王”小川直也。
 「橋本をぶっ潰した1・4伝説のシュートマッチ。あれでプロレス観が一変しました。試合後のマイク『新日本プロレスファンのみなさん、目を覚ましてください!』は歴史的名言でしょう」(44・男)

 以上がベスト30のランキング。今回のアンケート回答者の中心はプロレス黄金期を知る熟年世代ということで、90年代以前のレスラーへの高評価が目立った。
 現役バリバリのトップどころでは新日のエースであるオカダ・カズチカが42位、この4月にWWEスーパースターへ昇格した中邑真輔でも39位と、相対的に評価が低い。これはプロレスを見る機会そのものが少なくなったことの影響であろう。

 最後に総括として『週刊プロレス』の湯沢直哉編集長に話を聞いてみた。
 「地上波テレビで放送された『プロレス総選挙』の順位には、多くのプロレス者たちから異論が出ていましたが、こちらの結果も恐ろしいまでに現在進行形でプロレス界を支えている選手の名前が少ないですね。でも、万人が納得いくランキングなどありません。いつ、どこで、誰に聞くかによって、順位やランクインする選手が大きく変わるのは仕方ない。そして、異論を言う人も何だかんだでプロレスを楽しんでいるはずです。プロレスにはプロレスファンの数だけ正解がある。だから面白いんです」