出井 康博(いでい・やすひろ)ジャーナリスト。1965年、岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ニッケイ・ウィークリー記者、黒人問題専門の米シンクタンク客員研究員を経てフリー。著書に『松下政経塾とは何か』『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』ほか。

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5年前に国連が「外国人技能実習制度は奴隷制度も同然」と批判。今年6月に米国務省が、中国人やベトナム人の技能実習生が日本で不当に雇用されている実態を報告した。が、実習生の受け入れ企業による悪質な労基法違反は年々増えている。

本書は、「留学生30万人計画」が推進される中、日本に就学したはずの外国人留学生が、実は出稼ぎ労働者として悲惨な日常を強いられている実態を抉ったルポである。

「外国人労働者の国籍も随分変わりました。制度の対象外である新聞配達等にベトナム人留学生らが急増しています」

過酷な就労実態は現行法で是正・摘発できる。にもかかわらず、政府は今国会で「外国人技能実習制度改正案」を再び提出した。最長3年の技能実習生受け入れ期間を5年に延長。成長戦略を支える低賃金労働者の確保が狙いだ。

「『貧しい国の若者たちにチャンスを与えている』とか言いながら、実際は搾取している奴なんか、許せないですね」

著者の批判は制度の不備や偽善、欺瞞などに止まらない。

「留学生の犯罪が増えています。ある意味で彼らの叛乱であり、復讐にも見えます」

マイノリティが追い詰められる現実はマジョリティが抱える問題でもある。夢と希望を抱いて日本に来た若者が、嘘やまやかしにまみれて「憎しみの連鎖」にはまれば、少なくともその責任の半分以上は日本社会にある。

「無関心でいても、無関係ではない」と言う著者が、偽善への批判と併せて警鐘を鳴らすのは、留学生を犯罪者に変貌させる日本社会の「無関心」なのである。冷淡な無関心は、共存が必須である在日外国人と日本社会との間に、危険な関係を呼び込みかねない。

(ジャーナリスト 藤野 光太郎 的野弘路=撮影)