昨年11月の選挙でのトランプ勝利後、ドイツ市民権を再取得するユダヤ系アメリカ人が急増している。彼らは、ヒトラー政権下で不当にドイツ市民権を剥奪され、アメリカに渡ったユダヤ人の子孫だから、歴史の皮肉としかいいようがない。

反ユダヤ的事件と比例して申請が急増

ドイツ基本法116条2項では、1933年から45年のあいだに政治的、民族的、そして宗教的理由によって市民権を剥奪された元ドイツ国民に、市民権を再申請する権利を認めている。同法はその子孫にも適用される。

ワシントン・ポストなども報道しているが、ドイツ市民権再取得の動き自体は以前にもあった。実際に迫害を受けた世代にはドイツに戻ることなど到底考えられなかっただろうが、若い世代にはわだかまりも少なく、純粋に自分のルーツを知りたい、祖先の故郷を見たいという気持ちを表明することがタブーではなくなってきたからだ。

しかしながら、多くの申請者にとって「決め手」となったのは昨年11月の大統領選挙だという。トランプの一連の発言が、ナチス台頭を許した当時のドイツのそれを思い起こさせたからだ。ユダヤ人コミュニティの約75パーセントがヒラリー・クリントンに投票した(ドイチェ・ウェレ DW)。

実際にトランプの勝利後、アメリカ合衆国では反ユダヤ的事件が急増している。アメリカ最大のユダヤ人団体、名誉毀損防止同盟(ADL)によると、2017年第一四半期の反ユダヤ的事件はすでに前年の86%増えている。 

在ワシントンD.C.のドイツ大使館は「申請書提出への一般的な興味は昨年11月以降著しく上昇している」と米Newsweekに対するEメールで伝えている。イスラエルに次いで世界で2番目に大きいユダヤ人口を持つニューヨーク市の領事館も同様の現象を確認。2014年から15年にかけてドイツ市民権を申請したのは50人から70 人であったのが、2016年には11月だけで124 人に上昇、それ以後も増え続け、2017年3月には235件の申請があった(DW)。

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皮肉な巡り合わせ

ボストンの総領事館では2017年第一四半期に、昨年同時期の約4倍にあたる49件の申請があった。申請数の増加を受け、ただ書類を受け取るだけよりはと、ラルフ・ホーレマン総領事は定期的に小さな祝賀会を開くことを決めた。祖先の悲惨な経験にもかかわらず市民権再取得を決断したユダヤ系移民の子孫たちの勇気をたたえ、互いの懇親を促している。

モーゲンスタン陽子