株主優待策の裏技疑念 真の安定株主とは

写真拡大

 株式投資家の狙いは「値上がり益」「好配当享受」が基本だが、その様相に変化が見られている。「株主優待策」人気が要因だ。株主優待策自体は昨日今日に始まったわけではない。当該企業が扱う商品の「詰め合わせ」や、購入に際しての「割引券」の供与といった類が主だった。しかし、いまは異なる傾向が強まっている。

 野村IRの調べによると今年1月末時点で株主優待策を導入している企業は1354社。2000年の同じ時期に比べ約2・2倍。優待策の内容も変わってきている。例えば三菱UFJフィナンシャルグループ。同社株の最低取引単位(単元株)は100株。5単元以上の株主に対しては金利優遇・手数料割引「クーポン」が贈られる。会社法上の関連資料の印刷大手の宝印刷では、単元株株主に1500円相当の商品カタログギフトを配布。そして最近とみに多くなっているのが「クオカードやギフト券といった実質上の金券」(野村IR)。

 「金券優待策」の増加に伴い注目されているのが、「優待クロス取引」。配当取り同様に優待策を手にするためには、権利が確定する4営業日前までに当該企業の「株主」になっておかなくてはならない。株式投資は「買い・売り」「売り・買い」の差額を狙う。優待クロス取引は権利取得最終日までに現物株市場で当該企業の株を買い、一方同じ株価で信用売りを行い「損得勘定ゼロ」の状態にしておくことを指す。株主優待を実質上ただで手に入れる「裏技」だ。

 株主優待策を実施する企業の思惑は「安定した個人株主を一人でも多く増やしたい。安定株主を増やすことで外からの力(例えばM&A)に対応しうるような状態を整備しておきたい」が主。

 優待クロス取引は違法ではないが、その増加は実施企業の「思惑外れ」になるし、健全な株取引を歪めかねない。

 信用取引で売りを行う場合は、証券会社や証券金融会社から売り株を借りるのが常。優待策を得るために信用売りが集中する権利確定日には「借株」が増える。裏技増⇒貸株の品薄状態⇒貸株コストの上昇が懸念される。信用取引の実行に不具合が発生しかねない。某外国ファンドの運用担当者は「権利確定日はその期の決算が発表される約2カ月前。決算内容の大筋が見え、次期の見通しが予想されるタイミング。次の期が軟弱な展開と読めば時価水準より低いところに信用売りを這わせる。がその売値を算定する上で、借株コストの上昇は微妙に影響してくる」とする。

 また生命保険会社など機関投資家は、株主優待策に反対論を唱えている。「”物言う株主”かもしれないが、企業のコンプライアンスに目を光らせながら真の安定株主になっているのは我々だ。保有株が100株でも100万株でも優待内容は同じというケースが殆ど。いかがなものかと思うし、そもそも優待策原資は配当に振り向けられるのが筋と考える」とする。頷ける。

 海外企業で優待策を執るのは極々少数派。株主優待人気は一方で「真の安定株主とは」という問題も提起している。