新天地でアンカーに挑戦中の兵働。中盤の底から繰り出す正確なミドルパスは一見の価値ありだ。(C)SOCCER DIGEST

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[J1リーグ11節]横浜 1-0 甲府/5月14日/ニッパツ
 
 担当クラブの選手でないだけに、なかなか話を聞く機会がなかったが、ようやくそのチャンスに恵まれた。
 
 横浜対甲府の一戦、試合後に担当である横浜の選手を取材しつつ、甲府の背番号15の姿を探していた。
 
 兵働昭弘。今季から甲府の一員となり、数日前に35歳になったばかりのMFだ。
 
 筑波大を卒業後、2005年に清水に加入。当時、長谷川健太(現G大阪監督)が率いるチームで主力として活躍した後、11年に柏に移籍し、J1優勝を経験。しかし翌年には千葉に新天地を求め、以後、大分、水戸とJ2でプレーしていた。
 
 J1で戦うのは、実に6年ぶりだ。キャリア的にも、年齢的にも、移籍を経てトップリーグに返り咲き、しかもレギュラーとしてフル稼働するのは、稀なケースではないだろうか。
 
「オファーをくれて、こうしてJ1のチームでまたやれている。練習から刺激があるし、試合では代表クラスの選手や強力な外国人助っ人と戦えて、そこでも刺激があるなか、新しい監督の下、新しいポジションでいろんなことにトライしている。勉強の日々ですよ」
 
 ベテランと呼ばれる年齢に達している兵働だが、甲府ではアンカーに挑戦中だ。
 
「新境地? ホント、そんな感じですよ。今まではもうひとつ前で、ラストパスを狙ったり、シュートの場面に顔を出したりとかだったけど、今は後ろからゲームを組み立てることに重きを置いていますね。
 
 守備では、相手のパスコースを限定したり、3バックが前に出ていけば自分がそのカバーに回る。攻撃では、スルーパスよりもそのひとつ前のパス、フリーの味方に良いボールをつないで、そこからチャンスを作れれば、という風にやっています」
 
 新たなチャレンジを、「面白い」「充実している」と語る。そんな兵働に、「今、どこを目指しているのか」と聞けば、相変わらずの人懐っこい笑顔を見せつつも、真剣な口調で答えてくれた。
 
「一番は、このアンカーというポジションを極めること。年齢も重ねてきて、スプリントの回数も減ってきているけど、これまでの経験を生かして、真ん中にしっかりポジションを取って、チーム全体の状況を把握しながら、攻撃も守備も中心になってやれればいい」

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 実際のプレーを見ても、今季の甲府は“アンカー兵働”の手綱捌きが肝になっているように思う。その自覚は、本人にもあるようだ。
 
「セットプレーも蹴らせてもらっているし、自分がどれだけボールに触れるかで、チームがイニシアチブを取れるか取れないかが決めってくるぐらいだと思っている。責任を感じているけど、やりがいはあります」
 
 35歳にして、J1の舞台でさらなる進化を遂げようとしている――その印象を伝えると、「進化してます?」と頬を緩める兵働は、高いモチベーションでピッチに立っている。
 
「もっとやらないといけないし、もっとやれると思う。監督の要求はたぶん、もっと高いはずだから」
 
 本人も「今までとは違う1年」と言う今季、どんな活躍を見せてくれるか楽しみでならない。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)