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■どんなクルマ?

流麗なデザイン A4にさほど遜色ない実用性

アウディA5を端的に表現すれば、パワートレインを縦置きしたFWD=全輪駆動および4WDという、アウディお得意の手法を採用したA4のプラットフォームを使うスペシャルティ・モデルで、ボディには4ドア+テールゲートのスポーツバック、それに2ドアのクーペとカブリオレ、の合計3種類がある。

そのA5およびその高性能版であるS5が、クーペは9年ぶり、スポーツバックは7年ぶりにフル・モデルチェンジして第2世代に生まれ変わり、モデルによっては4月下旬から日本でも発売開始された。

モデル・レンジは、スポーツバックにFWDの2.0 TFSIおよび同スポーツ、4WDの2.0 TFSIクワトロスポーツ、それにS5スポーツバックの4車種。さらにクーペとカブリオレに2.0 TFSIクワトロスポーツおよびS5があって、合計8モデルがラインナップされる。

FWDの2.0 TFSIには190psと32.6kg-mの2ℓ4気筒TFSIエンジンが、同クワトロには同じ2.0 TFSIながら252psと37.7kg-mを発生する高性能版が搭載される他、S5には354psと51.0kg-mを生み出す3ℓV6ターボの3.0 TSFIエンジンが収められる。

御殿場をベースにした試乗会には、スポーツバックとクーペの2.0 TFSIクワトロスポーツが用意されていたが、当方が乗ったのは前者だった。実際、先代A5の場合も、日本で売れた台数の80%ほどが、ボディはスポーツバックだったという。

このA5スポーツバック、全長4750×全幅1845×全高1390mm、ホイールベース2825mmというやや大柄なサイズで、流れるようなデザインのウインドウ・グラフィックが目につく、5ドアながらスポーツライクな印象を与えるエクステリアが特徴だといえる。

つまり、同カテゴリーのセダンもしくはワゴンであるA4にさほど遜色ない実用性を備えながら、よりスポーティな印象を与えるクルマに乗りたいという層に向けて生み出されたのがA5というわけで、そのスタイリングがそういう志向を端的に表現しているわけだ。

■どんな感じ?

走り出した途端、「おっ、いいじゃないか!」

ドライバーズ・シートに収まると、そこはエクステリア同様、適度にスポーティな雰囲気が演出された空間に仕上がっている。と同時にそこには、アウディらしい上質感も漂っている。

ルーフは低めだが、シート・ハイトは充分な調整代を持っているので、ヘッドルームにきつさを感じることなく、自然なドライビング・ポジションが得られる。

試みにリア・シートに移って、身長170cmの自分のドライビング・ポジションの後ろに座ってみる。リア・シートのクッションは比較的高めの設定だから、ヘッド・ルームの余裕は多くはないが、頭が天井に触れるということはない。レッグ・ルームも、さほど余裕は大きくないが、特に不足もないというところだ。

で、箱根方面に向けて走り出した途端、「おっ、いいじゃないか!」という感激が、僕のなかで芽生えた。何がいいのか、というと、それは乗り心地で、適度な硬さのスプリングと上質なダンパーに支えられたかのような、滑らかにして深みのあるライドが、実に心地好い。この試乗車は、オプションの19インチ・タイヤを履いていたにもかかわらず、である。

記憶にあるA4の乗り心地とはワンランク違うかのような印象をうけたが、アウディ・ジャパンのスタッフによれば、A4とグレードの異なるダンパーを採用しているという事実はないという。であるとしたら、A5独特のダンピングの設定が絶妙なのだろう。

やがてA5スポーツバックは、長尾峠から箱根スカイラインに至るワインディング・ロードに入るが、当方の試乗当日、箱根は生憎の雨だった。だがそれにもかかわらず、A5スポーツバックは長尾峠のタイトなヘアピンの連続も、危なげなく走り抜けていく。

タイト・コーナーに持ちこんでみよう

ハンドリングはタイトコーナーでもほぼオンザレールといった印象で、かつて4WDを特徴づけていた頑固なアンダーステアなど微塵も感じさせず、いいペースをキープして駆け上がっていく。操舵力は適度に軽いものの、路面フィールを充分に伝えてくるステアリングもいい感じである。

さらに、パワートレインもいい仕事をしている。今や2.0ℓ直4ターボ・エンジンというのは、他のヨーロッパのメーカーの多くも採用していて、いずれも想像以上の実力を発揮するが、252psと37.7kg-mを発生するアウディA5の2.0 TFSIも、その例に漏れない。

A5スポーツバック2.0 TFSIクワトロスポーツの車重は、1610kgと決して軽くないが、7速Sトロニックを介しての加速にはある種の鋭さも感じられて、なかなかスポーティな印象を与えてくれる。と同時にこの4気筒、トップ・エンドまで引っ張っても、回転のスムーズさが失われないのも好ましい。

というわけで、空いたワインディング・ロードに入った際などは、それなりにエンジンを回しつつコーナリングをエンジョイするといった、走り屋系ドライバーの要求にもストレートに応えてくれるクルマに思えた。ブレーキングがスムーズに決まるのも、そういうドライビングを心強くサポートしてくれる。

その一方で、そういったちょっと熱めのドライビングを愉しんでの帰路は、前記のような上質なライドに包まれて、平和なクルージングを味わうことができる。A5クワトロスポーツとは、そういう二面性を高い次元で実現したクルマではないか、と思った。

■「買い」か?

どんなひとが、このクルマを買う?

このA5スポーツバック2.0 TFSIクワトロスポーツ、走り出すと同時に感激した滑らかな乗り心地や、適度に俊敏で意のままになるハンドリング、それに意外と活発なパフォーマンスなど、確実に想像を上回る美点を持ったクルマだったといっていい。

車両本体価格686万円、広報車の例に漏れず多彩なオプションを装着した試乗車で800万円オーバーというプライスは決して安くないが、クワトロシステムによる全天候性を備えるなど、アウディらしい付加価値を考慮すれば納得できる数字かもしれない。

その一方で、A5ではなくA4を選べば、同様の走りがより安価に手に入るはずだか、すでに何度か書いている乗り心地の感触の微妙ながらけっこう大きな違いなど、A5ならではの美点が感じられたことも無視できない。

したがって、A4やそのワゴン・バージョンたるアバントほどの居住空間やラゲッジスペースは要らないから、代わりにルックスにもドライビング感覚にもA4よりスポーティな何かが欲しい、というリクエストを持つ層には、A5スポーツバックは好適な選択といえるのではないだろうか。

いずれにせよ、モデルによって7〜9年ぶりにフル・モデルチェンジした2代目A5、なかなか好ましいクルマに仕上がっているように思えた、というのが、今回の試乗で得た正直な感触だった。
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アウディA5スポーツバック2.0 TFSI クワトロ・スポーツ

■価格 6,860,000円 
■全長×全幅×全高 4750×1845×1390mm 
■ホイールベース 2825mm 
■乾燥重量 1610kg 
■エンジン 直列4気筒1984ccターボ 
■最高出力 252ps/5000〜6000rpm 
■最大トルク 37.7kg-m/1600〜4500rpm 
■ギアボックス 7速デュアル・クラッチ 
■サスペンション ウィッシュボーン / ウィッシュボーン 
■ブレーキ ディスク / ディスク 
■ホイール+タイヤ 245/40R18 
■燃費(JC08モード) 16.5km/ℓ