チームメイトとコミュニケーションをとる山口。正GK争いは混戦模様だ。写真:安藤隆人

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 U-20W杯の日本の守護神の座を巡る争いが混沌としてきた。
 
 1次予選、最終予選と正GKの座を掴んでいた小島亨介が、5月11日から始まったU-20W杯直前合宿を負傷明けの状態で加わったために、コンディション調整の最中ということもあり、波多野豪と山口瑠伊にもチャンスが巡ってくる状態となった。
 
 そして、5月12日の磐田とのトレーニングマッチ(30分×2本)の1本目で、ゴールマウスを守ったのは山口だった。
 
 フランス人の父と日本人の母を持つ彼は、現在は父親の母国であるフランス・リーグアンに所属するロリアンのU-19チームでプレーをしている。高1途中までFC東京U-18でプレーしてから、単身フランスへ渡った彼は、一昨年のアジア1次予選ではメンバーに名を連ねたが、最終予選は直前のアメリカ遠征で調子を落とし、メンバー入りは叶わなかった。
 
 しかし、「日本を代表して戦いたい気持ちが強かった。絶対にあの場所に戻ってやると思っていました」と、国内で活躍する他のメンバーに刺激を受けながら、フランスで黙々と自己研鑽に励んだ。そして、昨年12月のアルゼンチン遠征、今年3月のドイツ遠征で安定したパフォーマンスを見せると、U-20ワールドカップ出場メンバーの座を勝ち取った。
 
 そして迎えた磐田戦。彼は的確なコーチングでディフェンスラインとコミュニケーションを取り、組織的な守備の構築に一役を買った。25分に相手FWがミドルシュートを打った際には、一瞬味方DFのブラインドになったが、「予測とシュートコースを見て、キャッチできるボールだと思ったので、キャッチに行った」と、冷静に球筋を見極め、見事なダイビングキャッチを見せた。
 
 それ以降はピンチらしいピンチもなく、1-0で1本目が終了。彼はこれでお役御免となった。
 
「日本のGKコーチはこだわりが凄くて、細部まで細かい。フランスのGKコーチは『最後には必ずゴールを守れ』と、メンタル的な部分を強調してくれます。両方を経験して、GKとしての技術だけじゃなく、サッカーというスポーツの全体を学びました。そこが自分の武器でもあると思うので、日本のためにそれを発揮したいです」。
 彼は日本とフランスの国籍を持ち、将来的にはどちらかを選ぶのだが、「もしフランス代表の可能性があっても、日本が良いです。東京五輪も日本代表として出たい。僕は日本で育ったので、日本(代表)で出たいです」と、日本代表に対して並々ならぬ想いと、日の丸を背負う覚悟はできている。
 
 その覚悟は時差対策にも現れている。先週の月曜日に帰国し、合宿がスタートするまでの間、「一刻も早く時差ボケを取るために、コンディションを整えた」という。
 
「今、GKは誰が出るのか分からない状態なので、チャンスが来たときにモノにできるようにしたい。でも、一番重要なのは、チームを勝たせること。だから豪も亨介もライバルだけど、同じチームの仲間。誰が出ても3人で盛り上げて行きたいです」
 
 すべては日本の勝利のために。日本とフランスで育んだ技術と強烈な『大和魂』を持った山口瑠伊は、心身共に万全の状態で世界の舞台で戦うべく、その準備に一切の余念はない。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)