「こんな軌道、見たことがない! おそらく、世界でも彼だけじゃないかな。少なくとも日本では大谷くんだけだと思う。彼の日本人最速を記録した165kmのストレートは、重力を消してしまった……」

 理化学研究所の“魔球博士”こと、姫野龍太郎先生に、大谷投手の分析をお願いすると、驚きと笑顔が入りまじり、興奮気味にこう語った。姫野先生が驚愕した「重力を消した」ことを証明するのが掲載した図だ。

「一般的に、速いストレートでもボールは重力で落ちる。大谷くんの161kmのストレートでも、ボール1個分(65mm)、落ちるんです。でも、165kmだと、直線。まっすぐにボールが飛んでくる。誰も見たことのない軌道です。僕は、ボールをまっすぐ投げるのは不可能だと勝手に思ってましたからね。常識を覆しました。

 ボールの回転が速いほど、浮揚する力が生まれますが、大谷くんは、165kmだと40.5回転/秒。クルーンが157kmで43.5回転/秒なので、大谷くんは意識して回転数を上げているわけではないようです。

 もし、彼が回転数を上げる努力をしたら、ボールは本当にホップします」

 大谷投手は、151kmのフォークボールも投げる。高速フォークと呼ばれる“スプリット”ではない。フォークは、スプリットよりもボールに風の抵抗力を与えるように投げ、重力で落ちる。165kmのストレートに対して、どれくらい落ちるのか?

「推定ですが、74cm落ちています。ボールにサイドスピンがかかり、シュート回転で10回転/秒。バッターがワンバウンドするボールを振ってしまうのは仕方がないですね。151kmのボールはストレートに見えるし、振りにいったら74cm落ちるわけですから、バットに当たりません。彼は間違いなくメジャーで通用しますよ」

 大谷投手を攻略する方法は?

「明確です。ストレートを狙うしかない。1球めから160kmのストレートがくると思って打ちにいくしかない。このスピードの変化球は打てません」
 

 160kmのストレートを神スイングで打つ。大谷投手を打てるのは、打者・大谷しかいないのではなかろうか……。

(増刊FLASHダイアモンド 2017年4月28日号)