企業が「ネット拡散」を目指すべきではない理由

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企業経営者はよく、「ネットでの拡散」が落ち込んだ売り上げを回復させる万能薬になると誤解している。キャンペーンがソーシャルメディアで話題となれば、自社の製品・サービスが一躍注目を浴び、流行を生むと思い込んでいる。

実際にそうなることもある。しかし、無秩序なソーシャルメディアの世界に入り込もうとする企業の大半にとって、「ネット拡散」は困難なだけでなく、時間と金の大変な無駄遣いにもなり得る。

マーケティング専門家のアン・ハンドリーは「拡散を求めるべきではない」と断言する。「ほとんどの場合、役に立たない。多くの会社がネットでの拡散はよいことだと思っているが、それが一体何のためになるというのか」

私は最近、反響を呼ぶマーケティングメッセージの考案方法についてハンドリーと話した。彼女によれば、キャンペーンを展開する際に企業が犯す最大の過ちは、それが人気コンテストだと勘違いすることだという。顧客に真の価値を提供しない限り、マーケティング施策は失敗に終わる。

「消費者の行動喚起につながらなければ、何の意味があるのか」とハンドリーは疑問を呈す。

「バイラル」とは何か?

英語ではネット上で拡散することを「ゴー・バイラル」と言う。バイラルという言葉は病原体の「ウイルス」が語源だが、ネット上での拡散は病気の流行よりもはるかに害が少なく、実行はずっと難しい。

ライターのエリーズ・モローはニュースサイト「ライフワイヤー」の記事で、こう書いている。「インターネット上では、コンテンツを見ることで人々が『感染』し、そのコンテンツがウイルスのように広がる場合がある。この感染は通常、見た人が感情を呼び起こされ、自分が感じていることを人々に共有し話し合うためにシェアしたい衝動に駆られることで起きる」

しかし、人々が何を面白いと感じ、有益だと思うかは実際、誰にも分からない。ある人がとっておきの「オチ」として披露したものが、別の人にとっては「スベった」と受け止められる場合もある。ある人が笑えると思ったものは、別の人にとっては間抜けに聞こえるかもしれない。

著作『Contagious: Why Things Catch On(感染力:物事が広まる理由)』がベストセラーになったペンシルベニア大学ウォートン校のジョナ・バーガー教授(マーケティング論)はこう指摘する。「ユーチューブでは笑える動画が拡散するが、怒りに満ちた政治的な主張も広まっている。ユーモアや畏怖、興奮であれ、怒りや心配であれ、人を燃え立たせる感情は、私たちをシェアへと駆り立てる」

突出するマーケティング

そのためマーケティング担当者は、単に目立つだけでなく、オーディエンスにとって関連があり、役に立ち、適切な内容にすることが大切だ。

「ネットでの拡散は、企業が望むべきものではなく、もし起きたとしたら嬉しい偶然の出来事だ。これを求めて努力する価値はなく、企業が積極的に目指すべきものでは決してない」とハンドリーは言う。

では、反響を呼びシェアされるマーケティングメッセージを作るにはどうしたらよいのか。

まず、「シェア能力」は作り出せるものではない。偽りがなく、覚えやすいキャンペーンにするためには、創造力と洞察力が必要だ。オーディエンス層を知り、そのニーズに応え、オーディエンスに何をしてもらいたいのかを明確にすることが、優れたマーケティングの秘訣(ひけつ)だ。

「マーケティングとは、アートと意図の組み合わせ」とハンドリーは言う。「創造力は一つの大きな要素だ。もう一つの要素は意図。つまり、自分は何を動かそうとし、相手に何をしてもらいたいのか。この2要素があれば、素晴らしいマーケティングと、素晴らしい瞬間を作り出せるはず」

感情移入がカギ

反響を呼ぶコンテンツ作りを目指すマーケティング担当者が見落としがちなもう一つの要素は、感情移入だ。顧客の苦しみ、心配、弱さ、憧れを理解すること。それが何か分からなければ、顧客に会ったり、調査を行ったり、定期的にフィードバックをもらったりして、顧客に直接質問をぶつけることをハンドリーは提案している。

「より深いところまで入り込む必要がある。ビジネス成功のためのマーケティングを実践している会社で、私が話したところはいずれも、自分の顧客のことが頭から離れないようだった」