自分にイライラしてね - ジェームズ・マカヴォイ
 - 写真:日吉永遠

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 映画『シックス・センス』などで知られるM・ナイト・シャマラン監督の新作『スプリット』で23人格者役を務めたジェームズ・マカヴォイが来日し、自分の演技に満足できずにドアを殴り、手を骨折してしまった時のことを振り返った。

 本作は、3人の女子高校生を拉致・監禁した解離性同一性障害者の姿を描くスリラー。女子高校生たちは恐怖を感じながらも脱出を目指すが……。マカヴォイは神経質で潔癖症の青年から社交的で人懐っこいナイスガイ、9歳の無邪気な少年、さらには女性まで、さまざまな人格を鬼気迫る演技で体現しており、中でも4分ほどの短時間で8人の人格を次々と切り替えていくシーンが圧巻だ。

 しかし、マカヴォイは「最初はすごくまずいアプローチだったんだ」と一筋縄ではいかなかったと打ち明ける。「思うに、頭の中でいろいろ考えすぎていた。これは僕が今までやらなくてはいけなかったことの中で、一番難しいことだって自分で自分に思い込ませていたんだよね(笑)。だからそうなってしまった。神経がとても張り詰めていて、イライラしていた」。本来はイライラして怒っているようなシーンに身を置かないといけないとしても、そのリアクションを実際に使う前にはそうした感情と距離を取り、「アクション!」の声がかかってからシーンに身を任せた方がうまくいくのだという。

 「最初はそうできなかったから、うまくいかなかった。手の骨を折っちゃったよ。自分自身にすごくイラついていたから」とマカヴォイ。失敗の原因をはっきり認識したため、2か月後にあらためて同シーンの再撮影が行われることになった際には心配などせずに、撮影前にセリフを少し見直すだけにしたと明かす。「それだけ。それでただセットに居た。それで随分よくなったよ。だからアプローチ法としては、僕と一緒にキャラクターたちに息をさせたんだ。もちろん技術的なこともあった。2人の人格が入れ替わるというのではなく、それが8人ともなると、それぞれのキャラクターの違いが少し曖昧になって互いに溶け合うような感じになってしまうけど、そうならないことが重要だったから」。

 周囲に反応するため自由に、オープンであろうと心掛けながら、技術的な正確さにも対応しなくてはいけない難しいシーンだったが、「だけどこんなトリッキーな仕事は素晴らしい。楽しい挑戦、楽しい苦役……何かを成し遂げたと家に帰った時に満足できるようなね」とシャマラン監督との仕事は充実したものになったと語る。「僕にとってはひどい脚本こそ“苦役”。家に帰った時、最低な気持ちになるから」といたずらっぽく笑っていた。(編集部・市川遥)

映画『スプリット』は公開中