今年8月から老齢年金を受け取るために必要な資格期間が25年から10年に大幅短縮、これにより今まで無年金状態だった人も年金を受け取れる可能性が大幅に上がるようになったことは、すでに皆さんご存知の通り。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、受取額が増加する対象の人は誰か、10年に短縮されても貰えないと思っていた人が「カラ期間」を利用すれば年金を受け取れる可能性など、お得な年金情報を解説しています。

10年に短縮で年金額が増える事例は? 10年に短縮でも貰えない場合は「カラ期間」が使える?

今年8月から老齢の年金を貰うのに必要な受給資格期間が25年から10年に短縮されますが、この短縮措置により本来の年金支給開始年齢が訪れているにもかかわらず貰えていない約64万人の人が無年金状態から新たに年金の受給資格を得る事になります。

既に10年以上の年金受給資格期間がある人には今現在、生年月日に応じて順次年金請求書が送付されているところであります。

● 10年年金年金請求書送付スケジュール等(厚生労働省)

また、障害年金や遺族年金は貰えているものの今回の短縮措置により老齢の年金が発生して年金が増額する人が約9万5000人ほどいます。たまに、65歳以上になっても遺族年金や障害年金が支給されているが為に、既に老齢の年金を貰ってると思い込んで請求されない可能性があるので注意が必要です。

合計で73.5万人。

なお、今回の10年短縮しても貰えない場合は「カラ期間」を合わせれば老齢の年金を貰うことができる人がこの73.5万人以外にも相当数います。

今回は障害年金や遺族年金等の年金を貰ってる人が老齢の年金を貰えるようになった場合の年金額増額と、カラ期間を使って10年以上を満たしてなんとか年金が貰える場合を考えてみましょう。

というわけで事例。

1.昭和24年5月12日生まれの女性(今月68歳)

今は障害基礎年金2級の年金年額77万9300円(定額)のみ受給中。

この女性自体は平成6年4月から平成12年7月までの76ヶ月間厚生年金に加入(この間の平均給与は22万円とする)。平成18年2月から平成23年8月までの67ヶ月間国民年金保険料納付済み。全体の年金期間は143ヶ月しかないが、今年8月からの10年短縮で老齢の年金が貰えるようになる。

まず老齢厚生年金→22万0円÷1000×7.125×76ヶ月=11万9130円

老齢基礎年金→77万9300円÷480ヶ月×143ヶ月=23万2166円

よって、今年8月(実際の年金は9月分から発生で、支払いはまず10月から)からは、障害基礎年金だけでなく老齢厚生年金と老齢基礎年金が発生する事になります。ただし、この老齢厚生年金と老齢基礎年金が障害基礎年金と一緒に貰えるわけではありません。

この女性の場合は、

障害基礎年金2級77万9300円+老齢厚生年金11万9130円=89万8430円(月額7万4869円)

※参考

もともと障害年金と老齢年金の同時受給は不可でしたが、平成18年4月以降で65歳以上であれば障害基礎年金と老齢厚生年金の併給が可能になった。この改正を知らずに障害基礎年金受給者の人が何年も老齢厚生年金を貰えていなかった人も時々いました(^^;; 急いで老齢厚生年金請求してもらって今まで貰えていなかった時効にかかる過去5年以内の老齢厚生年金を受給していただきました。

で、もう一つの組み合わせは

老齢基礎年金23万2166円+老齢厚生年金11万9130円=35万1296円(月額2万9274円)

この2パターンのどちらかを選択して受給になります。

まあ、明らかに障害基礎年金2級+老齢厚生年金の組み合わせが高いのでこちらを受給する事になり、障害基礎年金2級を受けている間は老齢基礎年金は停止という事になります。

で、もう一つの事例は10年に短縮してもなお期間が足りない人。こういう人は「カラ期間」を探します。

2.昭和22年2月17日生まれの男性(今70歳)

年金記録は平成14年5月から平成23年1月までの105ヶ月国民年金保険料を納付したのみ。会社員や公務員期間無し。さあどうするか。

というわけでカラ期間を探す。

老齢の年金は、保険料納付済期間(厚生年金期間や公務員期間ももちろん納付済期間)+保険料免除期間+カラ期間≧10年以上あれば貰えるようになります。

カラ期間はいろんなものがあるんですが、今回は学生期間のを使ってみましょう。

この男性が20歳になる昭和42年2月から昭和44年3月までの26ヶ月はまだ大学生でした。平成3年3月までの20歳以上の昼間学生は国民年金には加入してもしなくても構わないという任意の加入を認められていました。夜間、通信、定時制、専門学校生は国民年金には強制加入でカラ期間にはならない。

※参考

平成3年3月以前の学生期間のカラ期間を証明する場合は在学証明書を年金請求時に添付します。

もし、任意で加入しなければこの期間がカラ期間としてカウントされます。ちなみに専門学校生は昭和61年4月から平成3年3月まではカラ期間になる。

よって、学生時代のカラ期間26ヶ月+国民年金保険料を納めた期間105ヶ月≧10年(120ヶ月)となり、今年8月に年金の受給資格を獲得する事になります。

なお、カラ期間というのは年金額には反映せずに単に年金の受給資格に必要な期間を満たす為にのみの役割。よって今年8月(年金は9月分から)からは、老齢基礎年金77万9300円÷480ヶ月×105ヶ月=17万472円(月額1万4206円)の年金が発生する。

ちなみに、生活保護等を受けてる人は、年金の請求しても金額が生活保護費より下回るから請求しないという事は出来ません。年金という収入がある分は生活保護費から減額しなければならないので、市役所に必ず届け出をしなければなりません。

まあ、今回の10年年金の件で福祉課の職員の人も既に周知の件ではあると思いますが…(^^;;

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出典元:まぐまぐニュース!