研究の概要。(図:東京医科歯科大学発表資料より)

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 東京医科歯科大学などの研究グループは、脳梗塞によって血流が止まった脳の領域に、血管を誘引する機能を持ったスポンジ形状の人工細胞足場を開発した。

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 ふた昔ほど前のことになるが、脳の細胞というものは、「それ以上分裂も再生もしない、死んでいくだけの細胞」であると言われていた。このような考え方は今日の神経科学の知見によって否定されるに至っており、少なくとも部分的には、脳細胞にも再生の機能が備わっていることが明らかになっているのだが、そうは言っても、脳梗塞などの疾患によって一度「死んだ」脳細胞が、人体の自然治癒力によって回復するわけではないことに変わりはない。

 脳梗塞の治療は、急性期の対応と慢性期の対応に大きく分けることができるが、急性期の対応はともかく、慢性化した(つまり、細胞が死んだ状態になった)脳梗塞においては、主にリハビリテーション的な施療が中心を占めており、死んだ細胞を劇的に蘇らせるような治療法、つまり、再生医療の手段は、今日においてなお確立されていない。

 さて、脳梗塞における再生医療の可能性に、途を拓こうとするのが今回の研究である。

 今回開発された人工細胞足場は、化学と生物学の融合領域にある分子合成技術を用いて作られた。血管を誘引する機能を持つタンパク質を結合させ、スポンジ形状を与えることで、VEGF結合ラミニンスポンジなるものを開発。これを脳梗塞のマウスの脳梗塞領域に移植したところ、このスポンジが血管を新たに作り出す能力を持っていることが確認されたという。

 もちろん、今回開発された技術は「血管を誘引する」というその機能に限られたもので、死んだ脳細胞をそのまま蘇らせる技術、というわけではない。しかし、損傷した組織の修復や再生において、血管形成が必要不可欠のプロセスであることもまた確かである。

 今後の研究展望としては、開頭手術を必要としない人工足場の脳への導入や、損傷能を修復する技術への展開を目指すという。