「この私を敵に回すということは、警察組織全体を敵に回すということなんだよ!」

所轄VS警視庁、本格開戦! 日曜劇場/『小さな巨人』がヒートアップしてきた。内通者は小野田義信捜査一課長(香川照之)ではなく、三笠署長(春風亭昇太)だった! 

出演者たちの力演もあって、先週放送の第4話の視聴率は13.5%とV字回復。とりわけ北海道地区では最高視聴率17.1%、平均視聴率15.3%のハイスコアを記録した。プレスリリースには「TEAM NACSの安田人気」と書かれていたけど、実は北海道って警察の不正に敏感な土地柄なんじゃないかと思うんですよね……(映画『日本で一番悪い奴ら』など参照)。


岡田将生にこんなに怒り顔が似合うとは思わなかった


巨大IT企業ゴーンバンクにまつわる殺人事件の真相を追う香坂真一郎(長谷川博己)ら芝署の面々。しかし、警察の捜査情報が漏れており、肝心なところで容疑者に逃げられてきた。内通者は警視庁の小野田捜査一課長に違いない……! そう確信した香坂は、渡部(安田顕)ら所轄の刑事と前回からめでたくパートナーに昇進(?)した山田(岡田将生)とともに小野田の悪事の証拠を掴もうとする。

堺雅人の無双ぶりが目立った『半沢直樹』に比べると、『小さな巨人』はバディ感、あるいはチーム感が強い。滑舌は異様に良いが怒り顔にあまり迫力がない長谷川を、めいっぱい顔を歪めた岡田将生がよくサポートしている。彼がこんなに怒り顔が似合う俳優だとは思わなかった。“わんこ俳優”だなんて書いて申し訳ない。

料亭で小野田とゴーンバンク社長・中田和正(桂文枝)との密会を張り込む香坂たち。しかし、すんでのところで香坂のたくらみは小野田に察知されてしまう! ふすまを開けて、無表情で長谷川を見下ろす香川照之がコワい! そして目を見開き、ぐいっとにじり寄る。

「つまり、内通者がいる。それが私だというわけか」

香川照之のテンションがふつふつと沸騰していくのがわかる。

「本当に、この私だと思っているのか? ……言ってみろぉ!」

来たぞ来たぞ。そして(なぜか)肘置きをパーンと薙ぎ払って、座敷にどっかと腰を下ろして一言。

「この警視庁捜査第一課長! 小野田義信の目ぇを見て答えろ!」

おもだかや! カメラもまっすぐ正面から香川照之の大見得を捉えてみせる。大画面テレビで見たら、かなりの迫力だっただろう。ここ最近はEテレ『昆虫すごいぜ』のインパクトが話題の中心だった香川だが、本業でも大爆発だ。香坂と小野田のこの対決シーンは『小さな巨人』前半のクライマックスの一つと言っていいだろう。

結局、香坂は小野田の悪事の証拠を掴むことができず、捜査は振り出しに。警察内部での立場も悪くなる一方となる。香坂と結託する山田の立場も危うくなってきた。香坂チームの大ピンチだ。

ヤキが回った加藤晴彦と笑い顔のまま怒る春風亭昇太


起死回生を狙う香坂は、ゴーンバンク中田社長の息子でナカタエレクトロニクス社長、中田隆一(加藤晴彦)のアリバイを証言していた女・山本アリサ(佐々木希)を狙う。

『小さな巨人』では加藤晴彦が地味にナイスキャスティング。完全にヤキが回っている負のオーラが全身を覆っている。元は若きイケメン起業家だったはずななのに、チンピラ感というか小物感がすごい。加藤晴彦は今後、いろいろなドラマで悪役として活躍するんじゃないだろうか?

山本アリサを自首に導いた香坂たちだったが、実は一つの罠をかけていた。その罠にかかったのが……なんと、元捜査一課長であり、現在は芝署署長、そして香坂を育て上げた恩師である三笠署長だった! 冷静に問い詰める香坂に対し、温厚だった三笠署長が絵に描いたような逆ギレを見せる。

「この親不孝者! 謝れ。今だったら許してやる。恩義ある私を疑ったことの非礼を詫びろ。地べたに這いつくばって、誠心誠意謝罪しろ! 香坂ァ!」

自分の悪事を追及する部下に対して「親不孝者」となじるところが面白い。上司は親で、部下は子ども。日本的な組織は疑似家族ということか。そして上司(親)の言うことが理不尽でも部下(子)は逆らうことができないのだ。

それにしても、これまでずいぶん大人しくしていた春風亭昇太だったが、ここで怪演が爆発! 笑顔のまま怒っているように見えるからものすごく怖い。実は筆者の知人が経営している飲み屋に昇太師匠が現れることがあるのだが、今度出くわしたら絶対に今日の演技を思い出すだろう。

結局、ここでも香坂は三笠署長に決定的なダメージを与えることができなかった。香坂はいつも証拠を掴んでいない。「証拠を出せ」といつも敵に嘲笑われているが、逆に言えば香坂は自らの「勘」に従っているということ。ここで言うところの「勘」というのは、自分の心であり、信念だと言い換えることができるだろう。香坂は勘を貫き通すことができるのだろうか?

芝署編は本日放送の第5話で完結! はたして三笠署長の悪事の全貌とは? 「警察組織全体を敵に回す」という言葉の意味とは? 警察内部の悪事を本格的に描くことができれば、『小さな巨人』はなかなか骨のあるドラマだということになる。期待!

(大山くまお)