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デジタル世代の身の丈に合った腕時計選び



腕時計はなんとなく欲しいけど、何を買っていいのか分からないという読者のために。業界で”ハカセ”と呼ばれる、腕時計ジャーナリスト広田雅将の腕時計選び指南書『デジタル世代の身の丈に合った腕時計選び』。

数々のスマートウォッチにこそ参考にしてほしい理想形



今回お題として取り上げるのは、メイド・イン・ジャパンを謳った「Knot」である。1万円から5万円の価格帯には、魅力的な時計が少なくない。ちなみにかつてこのジャンルを席巻していたのは、タフな多機能ウォッチだった。

しかし最近は、シンプルで作りが良く、どのシチュエーションにも映える時計が増えつつある。わかりやすい例はダニエル・ウェリントンだろう。正直、あんなシンプルな時計が市民権を得るとは想像もしていなかったが、かなり売れている。しかしコストパフォーマンスを考えると、いっそう魅力的なのは「Knot」だろう。この時計については何度も書いたが、デジタルガジェットに興味のある本誌読者にこそ、改めてお勧めしたい。

最近、いろいろなメーカーがスマートウォッチを出しているが、これらが売れていない理由は簡単だ。時計を着けなれていない人たちを意識していないから、である。スマートウォッチに興味を持つ人のかなりが、今まで時計を持ったことのない、あるいは最近着けなくなった人たちだ。であれば、彼らにも着けてもらえるよう薄くて軽く作るべきだが、そういった時計はほとんどない。1980年代から’90年代にかけてリリースされた多機能クォーツに同じく、ケースは厚く、時計は重く、着けていると疲れてしまう。スマートウォッチメーカーだけでなく、老舗の時計メーカーでさえそうなのだから、スマートウォッチの未来に対して、懐疑的にならざるを得ないだろう。

正直言うと、時計の重さと大きさは、ある程度慣れによるところが大きい。大きくて重い時計でも、よほど装着感が悪くなければ、一週間で慣れるだろう。しかしその1週間を耐えるのが実に難しいのだ。ということで筆者は、時計を着けたことのない人、または最近着けなくなった人に対しては、軽くて薄い時計しか勧めない。第一回目のルミノックス、前回のラドー、そして今回の「Knot」がそうだ。とりわけ「Knot」は、ケース厚が6.5mmと取り回しは実に良い。加えてバックルも薄いので、デスクワークの邪魔にならないのである。よほどの時計嫌いでない限り、このサイズ感は受け入れてもらえるだろう。ちなみにシンプルなデザインに薄いケース、そして容易に交換できるストラップといった「Knot」の構成は、ダニエル・ウェリントンに倣っている。ただ比較した限りで言うと、「Knot」のほうがもう一段出来映えが良く、コストパフォーマンスも高い。後発だから当たり前だが、細かい点まで神経が行き届いているのである。



Knot

SMALLSECOND CS-36YGSV

価格:1万6200円

直径36mmのベーシックな3針モデル。バーインデックスにスモールセコンドという構成は、1940〜50年代の時計に同じ。しかしデザインはモダンに仕立て直され、3気圧の防水性能が与えられた。また薄いため、細身のシャツであっても、袖に引っかからない。内容を考えれば価格は大変に魅力的だ。なおストラップは別売(5000円〜)。個人的なお勧めは、栃木レザー製のヌメ革ストラップだ。

メイド・イン・ジャパン。細部まで高い完成度を誇る



注目すべきはふたつだ。まずはストラップ。ダニエル・ウェリントンが始めた簡単に交換できるストラップは、今や多くのメーカーが採用するに至った。

「Knot」も同様だが、比べるとより交換しやすく、ストラップの質自体も高い。とりわけ、バネ棒の突起を押すだけでストラップが外せる仕組みを取り入れたメーカーは、1万円から5万円台に限っていうと、「Knot」のほかは数えるほどしかない。それとストラップ自体の質も良い。ダニエル・ウェリントンのストラップは正直なところ価格相応の出来だが、「Knot」のストラップは、高級時計に着けられる質を持っている。褒めすぎかもしれないが、数千円で買えるベルトとしては白眉の出来映えだ。理由をたずねたところ、「バッグ屋の閑散期に注文しているから、価格が抑えられる」とのこと。ベルト屋に頼むと、おそらく倍額になるかもしれない。

そしてもうひとつが、サファイアクリスタル製風防の採用だ。人工サファイア製の風防は、割れにくく、傷つきにくいといいことづくめだ。しかし価格が高いため、1万円から5万円の価格帯ではまず見かけない。コスパの高いセイコーの時計でさえ、この価格帯の時計は、多くが強化ガラスを採用している。しかし「Knot」の時計は、風防にこのサファイアクリスタルを奢っている。コストは高く付くが、時計を落としても風防が割れる心配はなさそうだ。


▲Knotの魅力が、サファイアクリスタル製の風防。この価格帯での採用例は極めて希だ。コストは高くなるが、傷が付きにくく割れにくい。個人的には、この点だけでも、「Knot」を選ぶべきだと思う。

メイド・イン・ジャパンらしく、高い完成度を誇る「Knot」の時計。通販でも買えるが、できれば店に出かけて、実際腕において、感触を確かめて欲しい。というのも、時計は腕に置かないと絶対に分からないからである。ただし問題がある。日本各地にある直営店はどこも混雑しており、お目当ての時計を十分に見られないかもしれない。ただそれさえ我慢できれば、「Knot」は見るべきだし、腕に乗せるべき時計だろう。エントリーモデルの大傑作だ。


▲「Knot」が搭載するのは、すべて日本製のムーブメント。本作も例外ではなく、ミヨタ製のクォーツを載せている。業界標準のありふれた機械だが、実はこの価格のクォーツとしては例外的に分解掃除が可能である。

文/広田雅将

広田雅将/1974年生まれ。時計ライター/ジャーナリストとして活動する傍ら、2016年から高級腕時計専門誌『クロノス日本版』の編集長を兼務。国内外の時計賞の審査員を務めるほか、講演も多数。時計に限らない博識さから、業界では”ハカセ”と呼ばれる。

※『デジモノステーション』2017年6月号より抜粋

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