日本の防衛政策について高い見識をもつ国会議員3人がワシントンで開かれた討論会に出席し、日本への脅威や日米同盟の課題などついてトランプ政権に説明した。

 現在、北朝鮮のミサイルや核開発が日本にとっても切迫した危機のように見える。しかし3人とも、北朝鮮よりも中国の脅威に重点をおいて米国側に訴えていたことが印象的だった。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

3人が揃って中国の脅威に言及

 5月1日、ワシントンの大手研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」が「トランプ政権への日本の戦略」と題するパネル討論会を開いた。パネリストとして招かれたのは日本の中谷元前防衛大臣、小野寺五典元防衛大臣、長島昭久元防衛政務官の3人である。いずれも現職の国会議員であり、防衛問題に関して日本でも有数の権威とされる政治家たちだ。

 討論の進行役は、CSIS副所長で日米の安全保障の専門家、マイケル・グリーン氏が務めた。この討論会の目的は、「日本がトランプ政権と防衛や外交の諸問題に取り組むうえでの国家安全保障戦略や外交について思考を深め、論じる」ことである。会場には米国側の200人以上の関係者が集まり、盛況となった。

 司会役のグリーン氏は中谷、小野寺、長島の3議員を防衛問題に関する「日本のベスト・アンド・ブライテスト」(最良で最も聡明な人たち)と紹介した。

左よりグリーン氏、中谷氏、小野寺氏、長島氏。(の動画より)


 討論会では、まず中谷氏が次のようにスピーチした。

「北朝鮮の金正恩委員長は、政権の存続を賭けて核兵器と長距離弾道ミサイルの開発を急いでおり、日本にとっても切迫した深刻な脅威となっています。トランプ政権はその脅威を阻止するために、軍事的な対応を含めてのすべての手段のオプション(選択肢)を検討しているようですが、日本はその米国の努力を全面的に支持します」

 中谷氏は10分ほどのスピーチの最後に、日本が平和安保法制関連法を成立させ、新しい防衛ガイドラインを採択したことに触れ、日本の安全保障の最大の対象は中国であることを強調した。

 小野寺氏も、まず北朝鮮の脅威について語った。

「北朝鮮の弾道ミサイルは、地上配備のミサイルに固形燃料が使われて発射準備の時間が短くなったことや、潜水艦発射のミサイルの開発の進展で、脅威がさらに増大しました。日本側にも、北朝鮮からのミサイル攻撃に対する防衛策はいろいろありますが、決して十分ではありません。日本は北朝鮮からミサイルを撃ち込まれたら即座に反撃して、さらなるミサイル発射を防ぐ攻撃能力を保持する必要があります」

 小野寺氏は、このように日本の防衛強化について、これまでの路線を越える大胆な提案を行った。しかし、やはりスピーチの後半では中国に触れ、中長期的には北朝鮮よりも中国の軍事的脅威が重大な意味を持つと強調した。

 長島氏は、自分が4月に民進党を離党したことを述べ、民進党の防衛政策に不満があったことも離党の理由の1つだったと説明した。そのうえで北朝鮮の脅威について次のように語った。

「トランプ政権が『力による平和』の原則に沿ってアジア・太平洋地域で軍事抑止力を保つことは、北朝鮮の脅威への対応として歓迎します。トランプ政権が掲げる、北朝鮮を完全に非核化するという目標も支持します。北朝鮮の核は全廃させることが必要であり、核開発の“凍結”を目標とすることはできません」

 そして、長島氏もやはり中国の脅威について詳しく語った。

「日米同盟で最重要なのは、やはり中国の軍事的脅威の増大に対する共同の対処です。とくに中国側の『接近阻止・領域否定(A2/AD)』戦略への米軍の対応を日本も支援すべきです。中国軍は東シナ海での活動も強め、尖閣諸島に対する水陸両用作戦の実行能力も急速に高めています。尖閣をめぐる有事はいわゆるグレーゾーンの事態の発生も予測されるため、日本は米軍の協力を得て対応態勢を強化せざるをえません」

北朝鮮より中国のほうが重大な脅威

 3人の議員のスピーチや報告が終わった後、討論会は質疑応答の時間となった。その際、会場のある男性が「日本は、そもそも北朝鮮と中国のどちらをより大きな軍事的脅威とみなしているのか」と質問した。その男性は、米国の大手安全保障シンクタンク「ランド研究所」の研究員だという。

 注目すべきなのは、中谷氏氏、小野寺、長島氏の3人とも、中国のほうが日本にとってより重大な脅威であると答えたことである。

 3人はそれぞれ次のように答えた。

「日本にとっては、やはり中国の軍拡による膨張が最も恐れるべき対象です。海洋で領土を拡張する動きは日本の尖閣諸島にも向けられており、いま、尖閣をどう守るかが国家をあげての重要課題となっています」(中谷氏)

「中国の南シナ海での軍事拡張は、日本への海上輸送路への悪影響を考えても重大な脅威です。断じて許容できない行動です」(小野寺氏)

「日本の安全保障にとっては、やはり中国の動きに最大の懸念を感じます。中国の南シナ海での領土拡大に対しては、日本も米国に協力して今まで以上に積極的で大規模な抑止の行動をとるべきだと思います」(長島氏)

 以上のように3議員とも、中国の軍事的脅威に対する警告をトランプ政権に発信したのである。討論会は北朝鮮の脅威への対処に終始するだろうと予測していただけに、3人が口を揃えてこの場で中国の脅威を訴えたのは意外だった。

 日本は一体どの国を最大の脅威とみなして安全保障政策を立てていくべきか。その指針が3人の議員によって示されたと言えそうだ。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]

筆者:古森 義久