堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生が回答する本連載。今回の相談主は、金子早苗さん(仮名・39歳・IT関連会社勤務)。

「今、出産のリミットが近づいているからか、どうしても子供が欲しくて、今の彼に“妊娠しにくい安全日”とウソをついて妊娠しようと計画中です。彼は大学の先輩で、SNSで再会してから飲みに行くようになった45歳の既婚者。奥さんとの間に小学生の子供がいます。私と恋愛関係になったのは、去年から彼の奥さんが中学受験に夢中になり、彼が全く相手にされなくなったからです。

38℃の熱を出しても、ほっておかれて私の家にくる始末。食事もコンビニ飯ばかりで、私の手料理をおいしそうに食べてくれるところも好きです。でも私は、両親が激しく憎み合う仲の悪い家庭で育ったので、結婚願望はありません。

彼も私もハイレベルな私立大学を卒業していて、頭はいいと思います。私は自分よりバカな男と付き合いたくないので、彼の子供しか欲しくありません。彼の子供を妊娠し、シングルマザーとして育てることを想定しているのですが、今しておくべきことはありますか?できれば養育費も月3万円程度でいいので、もらえればいいな、とも思っています。彼はよく“ウチの子、一人っ子でワガママなんだよね”と言っているから、きっともう一人欲しいはず。

彼が私の子供を認知すると奥さんにはバレてしまうのですか?それに、男性に“安全日”とだまして妊娠することは犯罪なのでしょうか……」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは次のページへ

まず、認知についてですが、これは「法律上の親子(父子)関係を作ること」です。ですから、男性の戸籍にも子供の戸籍にも載り、転籍しても消えないで移記されます。相手の配偶者の女性が、戸籍を見れば親子関係は一目瞭然。当然、バレます。

次に、安全日とだまして性行為を行ない、その結果妊娠することは、犯罪にはならないと思います。ただ、犯罪かどうかという次元よりも、自分と子供の人生をかけた選択であることに気づいて欲しいと感じます。

あなたは「子供が欲しくてシングルマザーとして育てることを想定している」と言いますが、あなた自身に経済力、監護力を含む、もろもろの生活力が現実にあるのかどうかをまずは確認するべきです。

その男性は別に家族があるので、勝手に子供をつくることを計画した上に、その男性に認知してもらおうとか、養育費を出してもらおうというのは、自分勝手な望みであることを自覚するべきなのではないでしょうか。

これを無理に実現しようとすれば、男性の家庭生活を壊す可能性もあります。そこまであなたに責任をとれるのかということも考えておくべきことです。(その男性は、あなたが妊娠と出産することに同意しているなら、道義的にも男性の責任でもあります。しかし、嘘をついてまでこっそり妊娠しようと思えば、少なくとも自分は、相手の男性には一切迷惑をかけない覚悟が必要でしょう)

最後に、そのように生まれた子供は、父親がいないことになります。幼少期、児童期にきっと「友達にはお父さんがいるのに私(僕)には何でいないの?」と疑問を持つ子供に、あなたはどう向き合うつもりでしょうか。

さらに父親の存在を隠し、たった一人だけで子供を成長させ、独り立ちできる成人に育てることまで覚悟はあるのでしょうか。

 「出産のリミットが近づいている」「赤ちゃん欲しい」「ママになりたい」という“目先の気持ち”では済まないのだということを、まずは自覚してほしいですね。そういうことを全てふまえて、もう一度考えてみてください。さて、同じことを望みますか?

子育ては幸せなことばかりではなく、肉体的、経済的に負担が重い。そして、仕事も制約される。シングルマザーになることは、それをほぼ一人で引き受けることに等しい。



■賢人のまとめ
子供を産むことは、自分と子供の一生をかけた選択になります。犯罪かどうかではなく、多くの人の人生を左右する問題であることをよく考えて。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/