登壇した古市憲寿

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 テレビ番組「ワイドナショー」などでの歯に衣(きぬ)着せぬコメントが話題の社会学者・古市憲寿が13日、飯田橋の神楽座で行われた映画『ちょっと今から仕事やめてくる』トークショー付き試写会に原作者の北川恵海、成島出監督とともに来場、若い世代にエールを送った。

 「長時間労働」「パワハラ」「自殺」といった今の時代に即したテーマを扱いながらも、軽妙な語り口で爽やかな感動を呼び起こす本作。何も考えずに入社した会社がブラック企業で、自殺を考えるほどに追い詰められる青山に工藤阿須加、そして底抜けの笑顔で青山に生きる希望を与える謎の男・ヤマモトに福士蒼汰がふんする。

 福士と工藤は撮影に入る5か月前から、スケジュールが合う限り集まってリハーサルを重ねたという。「どうしても今のテレビや映画というのは時間がないものなので、セリフをかまなければオッケーが出てしまいがち。二人ともそういう現場が多かったので、本格的な演技をやってほしかった。彼らは忙しい人たちなんですが、それでもその役になりきってほしかったんです」とその思いを語る成島監督。

 そして「工藤君の死んだ目がめっちゃうまいですね。死んだ目の用例として教科書で紹介したいくらい」と切り出した古市は、「それから福士君がハマっているんですよね。福士君って正直、演技がうまくないことが多いじゃないですか。でもいつも感じる違和感が、今回はピッタリハマっていて。今回の役は現実からちょっと浮いていて、べらぼうに明るい役。それにピッタリハマっていて良かったなと思います」と身も蓋もないコメントを交えて褒めたたえつつも、「物語で何が大事かというと希望なんですよ。世界で一番売れている聖書だって希望を与えてくれる物語ですし、『ハリー・ポッター』『ドラえもん』『ONE PIECE ワンピース』にもみんな希望がある。この作品も、ブラック企業しか自分の世界がないと思う人に、違う世界だってあるんだよということを提示してくれる。それがこの映画のパワーだなと思いました」と付け加えた。

 「今の子は優しくていい子が多い。別に会社なんて、いつだって辞められるものなのに辞められないのは、その世界がすべてになるから。自己中になりきれなくて、相手のことばかりを考えてしまうところがリアルだなと思いました」という古市の指摘を受けて、若い世代に対してアドバイスを求められた成島監督は、「昔、山本五十六の映画を撮った時に出てきた言葉なんですが、心で広い世界を見てもらいたいなと思います」とコメント。

 本作で青山は、ヤマモトとの出会いによって生きる希望を取り戻していくことになるが、成島監督は「現実ではヤマモトのようなヒーローはいないかもしれない」と続け、「でも10人友達がいたら、ある部分はAくんが助けてくれる。ある部分はB子さんが守ってくれる。何人かで分担したら、ヤマモト的な形で守られるんじゃないでしょうか。こんな時代でも、日本はまだまだ捨てたもんじゃないと思いますよ」とアドバイス。

 それを受けた古市も「ネット上でもいいから、助けてと誰かに救いを求めれば、SOSはまわりに届くと思うんです。弱音を吐くのは大事かなと思いましたね。自分に期待しすぎない方が楽ですよ。僕なんか自分に甘く生きていますから」と語り、若い世代にエールを送った。(取材・文:壬生智裕)

映画『ちょっと今から仕事やめてくる』は5月27日より全国公開