女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたのに、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、現在、アルバイトで通訳をしている川本梨花さん(仮名・34歳)。手取りの月収は12万円で、杉並区内の祖母の家に転がり込んで1年になります。

梨花さんはアーモンドアイが印象的で、今時珍しい細眉メイクです。グラマラスな体型で、ボーダーTシャツのバストがはち切れそう。スキニーパンツのヒップから太ももにかけてのバーンと張ったシルエットが目に残ります。バニラ系の甘い香水をつけていて、かなり強烈。バッグはデニム地に細かなスタッズが光っているボストンバッグで、相当使い込まれています。

「今日は外資系の企業で、現地スタッフと日本人スタッフの会議の同時通訳でした。時給は1200円で3時間。そういう仕事ばっかりです。フリーで切り捨てられて、仕事そのものが少ないのに、単価が下がり続けている。もう何のために頑張って、血のにじむような努力をして、英語を身につけたのかわからなくなります」

梨花さんは電気機器のメーカーに勤めていた両親がドイツに赴任しており、小学校1年生から6年生まで現地の日本人学校で教育を受けたと言います。

「といっても、親はエリートコースでもなんでもなくて、現地の工場の製造主任だったんですよ。だから学校でもバカにされましたよ。海外の日本人学校なんて、父親の勤務先のヒエラルキーで成立しています。狭い社会ですからね。PTAも同じような感じで、とにかく序列が激しかった。上位から父親の勤務先を羅列すると、省庁、五大商社、新聞社、有名メーカー、金融関連、その他……という感じ。家からして全然違います。ウチは団地みたいな集合住宅ですけれど、外交官は広い庭が付いた豪邸だし。いつも悔しいと思っていました」

父親の社会的立場がイマイチなことに、母親は文句を言い続けたと言います。

「ウチのお母さん、ちょっとおかしくて、見栄を張って自分のことを盛っているうちに、ホントだと思い込んでしまうんですよね。子どもの頃にビックリしたのも、“主人は早稲田大学の理工学部ですから”と言っていたのですが、ウチの父は専門学校卒です。自分も高卒なのに、聖心を出ていると思い込んでいたり。そういうこともあって、実家に住みたくないんですよ。私のことは海外の大学に留学させて、外資系企業で颯爽と働いているキャリアウーマンってことになっていますから」

そういう母親に梨花さんは反発するも、期待に応えられない自分を責め続けている

学費がかかった割には、元を取れていないことがコンプレックスになっているとか。

「一人っ子であることをいいことに、高校時代から海外留学して、アメリカの大学を2年で中退して日本に帰ってきているわけじゃないですか。日本社会において、大学中退って一番使えない人材なんですよね。高卒なら安い給料で使い倒せるし、本人たちにも人間扱いされないことにプライドがないじゃないですか。でも大学中退って、実質は高卒扱いだけど、“私は大学に入った”というプライドがあるから、単純作業とかひたすらエクセルに入力とかができない」

誰かと違うこと、自分だけしかできない仕事に対しての憧れがあるし、日本人男性は帰国子女を結婚相手として敬遠すると考えています。

「自分の意見をハッキリ言うと、どうしても恋愛はうまくいきませんよね。日本人男性は“言いなりになるかわいい子”と付き合って結婚して、その子が結婚した瞬間ずうずうしい妻になっても全然気が付かない。バカなんですよ。それにフリフリの甘い服を着られないから婚活もムリだし。私も20代のうちは若さで仕事も恋も乗り切れたのですが、ここ5年間は転落の一途。年収もダダ下がりを続けていて、去年なんて180万円だったんですよ。だからといってバイトする気にもなれないし、派遣もムリだし。30代になると、社会の仕組みがいろいろ見えてきて、過剰に搾取される仕事はどうしてもできません」

それまでの仕事について伺いました。

「私はロサンゼルスに留学していたので、20歳から28歳まで現地の友だちがやっている洋服の輸入販売会社のお手伝いをしていました。日本の荷受けや契約書の作成などですね。5年くらい前まで、LAのセレクトショップのアイテムって日本でも人気があったけれど、ブームが去ればパッタリ売れなくなります。当時は週3くらいしか働いていなかったけど、年収は500万円くらいはあったかも」

梨花さんの仕事内容は、会議の同時通訳と日常の文章の翻訳など。オフィスに通訳席があり1日3時間ほど通勤する。

楽な仕事しかできない体質になり、外国人のイケメン彼に貢いでしまう……〜その2〜に続きます。