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過酷なバトル、いざスタート

どれがベストなオフローダーなのか。結果を予想しづらいのは、オフロード走行はほかの試乗と違って、複雑な要素が無数に絡むからだ。

まずはタイヤの話から始めよう。いつもならそんなことはない。興味を惹かれないからだが、今回は最善のオフローダー探しをする上で避けては通れない。

というのも、それを気にせずに試乗したら、結局は性能の高いタイヤを履いたクルマがベスト・チョイスになってしまいかねないので、最初に触れざるを得ないのだ。

ただし、厄介なファクターはタイヤだけではない。オフロードは、路面状況がめまぐるしく変わる。クルマを乗り換えたとき、そこに同じ路面はないのだから頭が痛い。

これがサーキットなら、そんなことに悩まされずに済む。シルバーストンの路面が、1周しただけで緩むようなことは起こらないからだ。オフロードは、数分の試乗の間にコース・コンディションが変わってしまう。

ほかにも、正確な評価を妨げる要素は少なくない。「ベスト」とは、なにをもってのベストなのか。登坂性能か、スタックしないことか、それとも岩場を乗り越える能力か。ひとつには優れていても、ほかのひとつはからっきし、もうひとつは及第点、なんてこともあり得る。

ともかく、その辺はなんとか折り合いをつけよう。

今回のコースは、現代の英国で出合いうる悪路の要素を想定したものだ。対して、試乗車にトリッキーなことはない。まずは新型のランドローバー・ディスカバリーに乗ろう。

ディスカバリーを基準に ランクルも参加

ランドローバーによれば、これまで生産された中でも最も有能なオフローダーで、ディフェンダーすら凌ぐという。十分にあり得る話だ。開発チームが全力を尽くした最新モデルな。それゆえ、今回のテストの基準車たり得るともいえる。

もっとも、それは本格的なオフロードでの話でなければナンセンスだ。たとえばボルボXC90やアウディQ7のような、直接的な競合車をもってきて、高速道路と未舗装の田舎道を走り、どれが優れているかなどと比較したところで、それが何になるというのか。

それゆえ、このラトランドの採石場跡に、高性能版V6ディーゼルを積むディスカバリーと、5台の比較対象を持ち込んだ。

その中で、ディスカバリーの典型的なライバルになりうるのは、トヨタ・ランドクルーザーだろう。

英国におけるランクルは、日本ではプラドに当たるクルマであり、大柄で豪華な7シーターSUVという点がディスカバリーとカブる。快適だが、業務用としても耐えうるのも同様だ。

ディーゼル・エンジンはディスコ5の3.0ℓV6に対し2.8ℓ直4だが、いずれも四輪駆動で、車高調整可能なエアサスと、車内で切り替えできる副変速機を持ちあわせている。

次に近いクルマは、メルセデス・ベンツGクラスだ。

ハズせないゲレンデ 揺さぶるいすゞ/ジープ

ゲレンデヴァーゲンの最新モデルは、その車格と£90,000(1,314万円)近い価格にもかかわらず、ディーゼルは3.0ℓV6のみの設定。

内装はレザーがふんだんに使われ豪華だが、最新世代のSUVに比べて広さには欠ける。その分、比較的ナローな車幅は、オフロードではアドバンテージとなりうる。

加えて、オーバーハングが短く、最低地上高は大きく取られている。もちろん、低速レシオの副変速機は装備される。ただし、サスペンションはコイルスプリングなので、車高は一定のままだ。オフロード走行のモード変更はできないが、前後とセンターのデフは各個独立してロックできる。

ディスコ、ランクル、ゲレンデにつづく4台目は、欧州試乗でこのところ幅を利かせ始めたダブルキャブ・ピックアップのいすゞD-マックス。

試乗車は、太いバルーン・タイヤやモータースポーツ・ダンパーといった、アークティック・トラックス社製のアクセサリーを装備した仕様だ。

ハイ/ロー切替式4WDはオプション設定されるが、デフロックやオフロード用のモード切り替え機構は用意されていない。

次に控えしは、真打ちといってもいいかも知れない。リアル・オフローダーのジープ・ラングラーである。

昨年登場の75年記念車で、軍用車を思わせるグリーンのボディにブロンズ色の専用バッジが輝くが、メカニズムに特別な変更点はない。

今回はロング・ホイールベース版に登場願った。ショートモデルより走行性能ではわずかに劣るかもしれないが、ラインナップ上は重要なモデルだ。LSDや低速ギアボックスを備え、3.6ℓV6ガソリン・ユニットを積む。

最後の1台は、ほかの5台とはランクの異なるクルマだ。

ダチアから刺客登場

ダチア・ダスターは小型軽量なSUVで、ワイルドカードとでもいったところか。副変速機も、デフロックも車高調整機能も備えていない。前後トルク配分が50:50の4WDだけは用意されているので、もちろんその仕様を借り受けた。

残念なのは、ここにスズキ・ジムニーがいないこと。八方手を尽くしたが、試乗車を用意できなかった。ジムニーが加われば、もっと面白いことになっただろう。

どのメーカーもスパイク・タイヤを装備するような、ふざけた性能調整をしてこなかったのは幸いだった。さすがにジープには、BFグッドリッチの本格オフロード・タイヤであるマッドテレインが装着されていたが、いずれも標準装備品だ。

そこで、タイヤの差が評価を左右しないよう、泥濘路での過酷なテストは避けた。ぬかるんだ道では、路面とのクリアランスが十分なら、車重と並んでタイヤ性能がものをいうからだ。

また、故障を招くような状況となれば、テストは中断することにした。この先進むには、どこかにダメージを負わざるを得ないのであれば、それ以上は進まない。ロード・サービスを呼んだり、メーカーに怒られるようなことになるのはゴメンだ。

最初の項目は、ゼロスタートからのヒルクライム。テストコースでは、短く、下草に覆われた右へ左へ曲がりくねる第1の坂を越えると、次に急勾配で立ち塞がる第2の坂に挑む。

脱落者、でるか?

そこには「非情の掟」を設けた。もしも1台がスタックしたら、次のクルマに乗り換えてテストを続行するのだ。置き去りにされたクルマが、別のステージの勝者になるかもしれないが、テスト日程に余裕はないのでやむを得まい。

置き去りになりそうな候補は、ダスターが筆頭だ。地上高が低く、小排気量エンジンとMTの組み合わせでは、その可能性は低くない。

と思ったのだが、予想に反して全てのクルマが急勾配を乗り越えた。もちろん、楽なクルマとそうでないクルマの差はあったけれど。

いすゞD-マックスはリア・アクスルがリジッドで、しかもピックアップが苦手とする空荷での走行だ。土を掻き回し、ドタバタ跳ねた。

心配されたダチア・ダスターは、最初の坂の頂上へたどり着いた際にガンガンと激しい音を響かせたが、なんとか乗り切った。第2の坂では、素早くクラッチを繋ぐと、車体の軽さを利してヒラリと登り切った。

ディスカバリーとランクルは、第2の坂でさすがに重さを感じたが、下りでは、そのプラドと同じくらい。途中でやめたくなったのはGクラスだった。

Gクラスのスローなリサーキュレーティング・ボール式ステアリングが、坂道を越える際には落ち着かず、手を焼いたのである。

ジープ? それはもう、買い物にでも行くようにスイスイ走ったものだ。

この区間のトップは文句無しにジープで、以下、Gクラス、ディスカバリー、プラド、D-マックスと続く。ダスターがやはり末席だが、これは地上高の問題が大きく、登坂性能だけならもっと上でもいいくらいだ。

ともあれ、全車が次の岩場コースへと進めることになった。

後半はあす公開予定。
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