自由民主党ホームページより

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 安倍首相による「2020年の新憲法施行」宣言が波紋を広げている。行政の長が具体的な改憲日程を口にしたことが憲法違反であることはもちろん、「9条1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む」とぶち上げた件が実は護憲派の分断を狙った「詐術」であることは先日の記事で指摘した。

 だが、今回の宣言でもうひとつ許しがたいのが、憲法改正のダシに「高等教育の無償化」をもち出したことだ。

 安倍首相は「熟読しろ」と言い放った読売新聞のインタビューのなかで「憲法において国の未来像を議論する上で、教育は極めて重要なテーマだ」とし、維新の会が改憲草案で盛り込んだ教育無償化を「維新の積極的な提案を歓迎する」と述べて賛同を示した。また、日本会議系の改憲イベントで公表されたビデオメッセージのなかでも、安倍首相は「高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います」と言及している。

 つまり、「憲法改正をすれば高等教育も無償化されますよ」と、いよいよ本格的に国民に刷り込みをはじめたのだ。

 だが、すでに大きなツッコミが数多く起こっているように、この安倍首相の発言は「とんでもない大ウソ」だ。記憶に新しいが、民主党政権時、政府は高校授業料の無償化を実施している。無論、憲法なんて改正していない。改憲なんてせずとも、教育無償化は実行できるのだ。

 しかも、この高校無償化に猛反発していたのは、いわずもがな自民党である。事実、12日午後の時点でも自民党のHPにはいまでも「高校授業料無償化の問題点!」「理念なき選挙目当てのバラマキ政策には反対です」と記載されている。

 そして、この「バラマキ」批判の急先鋒こそ、安倍首相その人だった。高校授業料無償化に対しては「金持ちへのバラ撒き」(「週刊ポスト」2014年10月31日号/小学館)と決め付け、無償化と同様に民主党がはじめた子ども手当については、こんなトンデモ理論で猛批判していた。

「民主党が目指しているのは財政を破綻させることだけではなく、子育てを家族から奪い取り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化です。これは、実際にポル・ポトやスターリンが行おうとしたことです」(「WiLL」2010年7月号/ワック)

 実際、安倍首相は総理に復帰すると、子ども手当と高校授業料無償制度を廃止。その一方で、赤字必至のリニア新幹線に公的資金3兆円を投入するほか、外遊先でも「バラマキ」を繰り返している。

 そもそも、日本は先進国のなかでも圧倒的な「教育支援後進国」だ。経済協力開発機構(OECD)加盟国において、約半分の国では大学授業料は無償化されているが、他方、日本はGDPに占める教育の公的支出の割合が最低の水準という最悪の状況だ。

 ようするに、安倍首相はこれまでもいまも教育無償化を推し進めることができたにもかかわらず、放置するどころか、高校授業料無償化の廃止が象徴的なように"積極的に"切り捨ててきた。それを憲法改正の「アメ」として利用しようと動き出したのだ。

 もちろん、これは安倍首相をアシストする維新の会も同様だ。だいたい維新は、2013年に与党が出した「高校無償化廃止法案」に賛成していた。それを改憲のために教育無償化をもち出すとは、維新も安倍首相もまったくデタラメだらけ、国民を馬鹿にしすぎだろう。

 しかも、「憲法改正で教育無償化」というデタラメかつでっち上げ話には、恐ろしい問題が潜んでいる。それは、無償化の一方で憲法に書き込もうとしている「中身」にある。

 憲法26条は「教育を受ける権利」を保障する1項と「子どもに教育を受けさせる義務」を定める2項の条文から成るが、自民党の憲法改正草案ではさらに3項が追加されている。その文言は、こんなものだ。

《3.国は、教育が国の未来を切り拓く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。》

 教育を受ける権利を保障するものだったはずが、こうして自民党は教育内容にまで憲法で介入しているのだ。これは、子どもに一方的な価値観を強制する危険だけでなく、《国の未来を切り拓く》ものとして愛国心や国防意識を高める教育は推奨され、逆にそれに反する教育は「憲法違反」として槍玉にあげられるようになる危険も孕んでいる。

 現に、自民党はすでに「子供たちを戦場に送るな」と言う教員を取り締まる"密告フォーム"を設置するなど、これを先取りする動きを見せている。平和・人権教育をパージするためのシステムを憲法改正によってつくり上げる──これが自民党の狙いなのだろうが、それは国が教育に介入し、権力によって児童・生徒・学生たちが統制されるという戦前への回帰を意味しているのだ。

 いますぐにでも法律によって実行可能な教育無償化を「憲法改正しないと無理」などとホラを吹き、挙げ句、どさくさに紛れて国による教育内容への介入を目論む。安倍首相はもはや「天下一のゲス野郎」「ベストオブ外道」と呼ばれるべきだろう。
(編集部)