メッシ(左)との比較論がある久保(右)。しかし、特徴は異なる。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)、Alberto LINGRIA

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 編集部から、依頼があった。
 
「バルセロナでメッシをデビュー戦から取材していた視点で、久保と比較した原稿を書いてくれませんか?」
 
 最初にはっきりと言うが、久保建英(15歳/FC東京)はリオネル・メッシとまるで違う。「バルセロナの下部組織出身で左利きのアタッカー」。共通点はそんな程度で、あとは身長(ともに170センチ)くらいのものだろうか。
 
 もっとも、それは久保本人が重々承知していることのはず。今さら指摘されても、うんざりしているに違いない。単純な比較には意味がないだろう。
 
 しかし一方、世間ではメッシと久保を比較する論調が絶えない。一般の人々にとっては、そうした視点が分かりやすい、伝わりやすい、という厳然たる事実もある。実際、マシア(バルサの下部組織)が「メッシ系のアタッカー」として久保を見なしていた部分も否定できない。
 
 では、二人の決定的違いはどこにあるのか? 
 
 メッシは2004年10月にリーガ・エスパニョーラ1部に17歳でデビューした。プレーの本質は現在とほとんど変わっていない。まず、ボールの置き所に優れる。ディフェンダーを懐に入らせない。相手の動きの裏を必ず取れるし、コントロールするボールスキルも卓抜。周りが見えているし、プレーの閃きも舌を巻く。
 
 そしてアルゼンチン人選手特有だが、腰が強く、肩でなぎ倒すような強さがあり、少々のチャージでは倒れない。同じ足でボールを(足を地面につけず)二度タッチし、そこからスピードを上げられるし、強く正確なシュートを打ち込める。度肝を抜く加速と、それを支えるボディーバランス。それがディフェンダーに悪夢を与えるのだ。
 
 しかし久保には、メッシのような「加速装置」が備わっていない。ボールの置き所は良いし、敵の動きの裏も取れ、スキルもビジョンある。
 
 とはいえ、獣を思わせるようなスピードやパワーはない。世界トップレベルの試合で密集地帯を割って入り、1人で試合を決める――。メッシの十八番であるそんなシーンを連発できる可能性は低い。
 では、久保のストロングポイントとはなにか? 端的に言えば、左足の決定力だ。適性ポジションは、セカンドストライカーかサイドアタッカーだろう。左足のキック精度が突出して高く、相手のマークを一瞬外す技量に長け、シュートに向かったときに強気で冷静だ。
 
 4月15日のJ3(C大阪U-23戦)では、左サイドから自ら切り込んで角度のないところから豪快にプロ初ゴールを叩き込んでいる。そして、トップチーム・デビュー戦となったルヴァンカップの北海道コンサドーレ札幌戦(5月3日)では直接FKを自ら狙ったように、ゴールへの野心が強い。
 
 久保はパスやドリブルの能力も高く、才能の片鱗を見せる。しかし、世界で差をつけるのは、抜きん出たシュートセンスになるのではないか。メッシよりもハメス・ロドリゲス(レアル・マドリー/コロンビア代表)に近い。
 
 ともあれ、久保はプロデビューを果たしたばかりの15歳だ。
 
 5月7日には、J3のFC琉球戦に出場。FKを左足で狙い、スルーパスを通し、ディフェンダーを振り切りながら敵陣に突っ込んでいる。試合ごとに技のキレは増しつつある。もっとも、チームは0-3の完敗だった。
 
 将来、クボタケフサはどのようなプレーヤーになるのか? 今はまだその成長を楽しむべき段階なのかもしれない。
 
文:小宮良之
 
【著者プロフィール】
1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、2017年3月にはヘスス・スアレス氏との共著『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』(東邦出版)を上梓した。