アニメ制作を目指す若者やファンを対象に、アニメを作る楽しさやその手法を紹介するアニメ制作技術に関する総合イベントが「あにつく」で、これがマチ★アソビ vol.18の会場で「あにつく 2017 関西」として開催されました。そのひとつ目のイベントとして、「緊急議題!すべてのアニメはCGになるのか IN あにつく関西 2017 春」が開催されたのですが、サンジゲン・サブリメイション・ラークスエンタテインメントといった3DCGを用いたアニメ制作に携わる会社のトップが集まり激論を繰り広げました。

あにつく2017 関西 マチ★アソビ版

http://www.machiasobi.com/events/anitsuku.html

会場にやってきたのは左から、サブリメイション取締役の須貝真也さん、ラークスエンタテインメントのCG部長・奈良岡智哉さん、サンジゲンの代表・松浦裕暁さん、サンジゲン所属で現在放送中のアニメ「ID-0」でCGスーパーバイザーを務める今義和さん。



まずは最初に登壇者の紹介と、各社がこれまで制作に関わってきたアニメ作品の紹介が行われました。「蒼き鋼のアルペジオ −アルス・ノヴァ−」「ブブキ・ブランキ」「ID-0」など、オリジナルの3DCGアニメを制作してきたサンジゲンですが、これまで制作に携わってきたアニメの中にはニッポンアニメ100でトップに輝いた「TIGER & BUNNY」もあります。同作品の主人公である鏑木・T・虎徹のヒーロースーツは今さんがモデルを作ったそうです。

他にもサブリメイションは「GOD EATER」「東京ESP」「ペルソナ5」「攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE」「ガッチャマン クラウズ インサイト」「ロジコマコート」「ジョーカー・ゲーム」「ラブライブ!サンシャイン!!」「神撃のバハムート GENESIS」のほか、EXILE「BOW & ARROWS」の制作にも携わっています。

ラークスエンタテインメントは「劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-」「モンストアニメ(1期)」「結城友奈は勇者である」「暗殺教室」「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ」「そにアニ」「乱歩奇譚 Game of Laplace」「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」などの制作に携わっています。ラークスエンタテインメントはアニメ制作会社・スタジオ雲雀のCG部門が独立したもので、業界内のスーパーサブ的な立場でさまざまな企業のCG制作を手伝っているとのこと。なお、ラークスエンタテインメントの奈良岡智哉さんは「TIGER & BUNNY」のルナティックのモデルを制作したそうです。



イベントに参加した各社のこれまでの作品を簡単におさらいしたところで、イベントのメインのお題である「緊急議題!すべてのアニメはCGになるのか」についてのトークがスタート。



3DCG制作を生業とする3社は、「CGこそアニメの未来を救う」と訴えます。



なぜCGがアニメの未来を救うのかというと、「アニメCGスタジオの2つのあると1つのない」が大きな違いになっているとのこと。



手描きのアニメとCGの大きな違いのひとつが「移動がない」という点。通常、制作進行は「1人1事故」と言われるほどに事故を起こすことが多いそうで、実際、自動車の使用をやめているアニメ制作会社も多いとのこと。しかし、CGによるアニメ制作の場合、作画を回収する必要がないのでそもそも「移動がない」というわけ。



もうひとつの違いは「アセットがある」ということ。アセットは「資産」という意味の単語で、過去に作成したCGモデルが徐々にたまっていき、これがアニメ制作における「資産」となるとのこと。



これについてはサンジゲンの過去作品を用いて説明。例えばサンジゲンは過去に「009 RE:CYBORG」でスズメのCGモデルを作成したので、それ以降、スズメが登場する作品を担当することになっても新しくモデルを作成する必要はないとのこと。

他にも、「ブブキ・ブランキ」に登場するキャラクターもアセットを用いて作成したそう。そのアセットというのは、ULTRA SUPER ANIME TIMEのナビゲーションキャラクターであるスピカとスマ子。



スピカとスマ子が実際に動いている様子は以下のムービーで確認できます。なぜウルトラスーパーシスターズのモデルを元にしたのかというと、ブブキ・ブランキとウルトラスーパーシスターズの両方でキャラクターデザインを担当したのがコザキユースケさんだったことも関係しているそうです。

私たち、ウルトラスーパーシスターズです! - YouTube

簡単に言えば、「アセットを活用すれば煩雑で大変なことも、一瞬で解決」するというわけ。



さらに、CGがアニメの未来を救う3つ目のポイントは、「技術革新がある」というもの。CGは技術革新により、それまで表現出来なかった映像を作成可能になります。



その例としてスクリーンに映し出されたのが、「神撃のバハムート GENESIS」のバハムート。このバハムートはCGで作成したものですが、炎などは作画で表現しているそうです。

CGモデルはなんとたった1枚の設定画から作成したそう。作成にあたって注意したのは、「アニメで使用するCGモデルなので、アニメならではのウソがつけるようなモデル」と「リアルになり過ぎずアニメテイストに落とし込むこと」という点だったそうです。



そんなバハムートを作成するのにどんなソフトを使用したのかというと、粘土をこねるように3DCGを作成するスカルプト用ソフトの「ZBrush」でモデルを作成し、リトポロジー用ソフトの「MODO」を使ってデータを軽くしたとのこと。



バハムートのCGモデルを作成したサブリメイションではテクスチャーの作業には「LightWave」を使用。



そしてリギング・セットアップ(微調整・設定)をして……



最後のレンダリング。カラー・ライン・マスク・ハイライト・グラデーションといった具合に複数レンダリングすることで、アニメの中の超絶クオリティのバハムートが完成している模様。



そんな3DCGにも欠点はあり、例えば神作画なら1、2週間でバハムートを描くことができるそうですが、CGの場合は1か月はかかるとのこと。しかし、3DCGを用いたアニメ制作は手描きと反対の追い上げ型で、制作が進むにつれて徐々にクオリティがアップしていくという利点があるそうです。

先ほどの話でもあったように、あらゆるもののモデルを3DCGで制作しておくことで、CGアニメの制作スピードはアップしていきます。例えば、馬や群衆などを3DCGで表現しているアニメは多く見ますが、美術用のCGモデルなどでもCGモデルが大活躍するそうです。



なお、「神撃のバハムート GENESIS」では1話あたりの予算が通常よりも多かったため、多くのCGモデルを制作可能となり、ハイクオリティなアニメが完成したとのことです。



手描きアニメの場合、クオリティは1話が最も良く、そこからドンドン落ちていくのがほとんどだそうです。しかし、3DCGの場合は制作を進めていくにつれアニメーターにノウハウが蓄積されていき、クオリティも回を追うごとに良くなっていくという手描きとは反対の現象が起きるそうです。また、サンジゲンの例で言えば、「蒼き鋼のアルペジオ −アルス・ノヴァ−」「ブブキ・ブランキ」「ID-0」という順番でフルCGのオリジナルアニメ作品を制作しているため、「蒼き鋼のアルペジオ −アルス・ノヴァ−」の制作スタート時は多くのスタッフが初心者状態からスタートだったそうですが、「ID-0」の頃にはできあがったアニメのクオリティがかなりアップしていたとサンジゲンの松浦代表も感じるほどだったそうです。

さらに、手描きのアニメの場合は1作品ごとに人材を集め、制作が終われば解散して、「またいつかどこかの作品で」といったことになるそうです。しかし、3DCGの場合はPCを用意しないといけないこともあり、会社の中に存在するチームを使って制作が行われます。このおかげで、3DCGの会社にはアセットの他に、スタッフのノウハウもたまっていくというメリットがあるそうです。

というわけでまとめとしては、「3DCGは1作品ごとに人材をパージする業界の慣習を変え過去の仕事を資産として活用してアニメを次の表現に導きます」とのこと。

実際、現在のアニメでは3DCGを使用していないものはほとんど存在しておらず、アニメ・暗殺教室でも始めは奥の方でしか使われていなかった3DCGが少しずつ前の方でも使われていくようになっていったそうです。



トークイベントの終了後には少し時間があまったのでQ&Aコーナーが開催されました。その中で「3DCGではリテイクがかからないとバカみたいに安くできると聞いたのですが」という質問が飛び出しました。この質問に対して、「もちろんリテイクがないほうが安くなる」そうですが、演出の方法は人によって大きく異なるためどうしてもリテイクは出てしまうそうです。例えば「ボールが転がる様子」だけでも人によって表現方法は違うそうで、同じ監督や演出と何度も仕事していくことで、リテイクの数が減っていき、その結果コストは安くなっていくとのこと。しかし、これはマンネリ化の可能性も秘めているので善し悪しかも知れないと説明していました。



なお、マチ★アソビ vol.18の期間中はボードウォークにある星海社ブースでサンジゲンの松浦代表の著書である「アニメを3D(サンジゲン)に!」が販売されているそうなので、3DCGに興味がある人は星海社ブースに立ち寄ってみるのも良いかもしれません。