コラムニスト・犬山紙子さんへの妊娠、出産をめぐるインタビュー。第3回は「復帰後、仕事量はどうなった?」という率直な疑問をぶつけつつ、出産後の心境の変化について語っていただきました。

第1回:「妊活自粛宣言」を経て。仕事と妊娠のタイミング
第2回:20代の介護、30代の出産。ふたつの経験から気づいた大切なこと

「復帰しました!」アピールは大事

--妊娠中、仕事が減ってしまうんじゃないかという不安があったそうですが、産んでみて、実際のところはどうでしたか?

犬山紙子さん(以下、犬山):今、仕事復帰して1ヶ月くらいなんですけど「やや減り」くらいです。減った原因は、忘れられているのか、自分が空けた席に座ったライバルが私よりできる人だったからなのか、生みたてだから遠慮されているのか。優れたライバルが出現するのは自分の実力不足だとしても、忘れられている、遠慮されているは避けたいところ。

--復帰しましたアピールはしていますか?

犬山:してます! 勝手に遠慮されてしまうことには、アピールが大事。ただ、意外と楽観視できている部分もあって。なくなった仕事もあるけど、新しい仕事も増えているから。今までは恋愛系のコラムを書くことが多かったけれど、女性の生き方とか、子育てとか、テーマが増えました。子どもを産んだことで、仕事の幅が増えたんですね。新しい自分が増えた分、これから先も楽しみです。

--プライベートでの変化は?

犬山:今のところ産む前に想像していた「大変」よりは大変じゃなかったです。以前、甥の世話をしたときに、かわいいけど、一ミリも目が離せないしで「子どもの世話をつきっきりでするなんて、私には無理!」と思いまして。

自分の時間が何もなくなって、大好きな友人と会う時間やゲームや睡眠時間も、なくなってしまうんだと諦めていたんです。「ゲームって」と笑われるかもしれないけど、人が健康に、仕事も楽しく過ごすためには趣味は必要不可欠だと思っているので。

それで産む前からいろんな人に頼る環境を整えたんです。家事も区のサービスにお金を払って。そうしたら子育て、仕事を放置せずに、案外趣味や友達との時間も作れました。友達とは自宅で遊ぶようにしています。

--時間がなくなるのは確かに産む前に不安になるかもしれません。

犬山:もちろん遊ぶ時間自体は減りました。けどその分、趣味をさらに楽しめるようになりました。マンネリ化していた趣味も新鮮に感じるし、濃度が濃くなった。お酒も授乳中だから飲めないけど、出張先とかでたまーに飲むんです。そうすると、めちゃめちゃ美味しいんですよ! 人って、環境に順応していくんだなって思いました。

友人も増えたり、減ったりする

--独身時代のお友達との付き合いや会話も、変わりませんでした?

犬山:妊娠中はお酒の席には行けませんでしたが、関係性は変わらないですね。子どもができたからといって、ママ関係の話ばっかりになることもありませんでした。冒頭は近況報告がてら子どもの話になるけど、子どものことしか話題がないわけでもない。仕事や趣味やネットやこれまでの興味に加えて、子どもの話題が増える感じですね。私は友人に対して、この人にはゲームの話、この人には仕事の話、この人にはファッションの話など、人それぞれ話したいトピックスが違うからかもしれません。

「子育ての話がしたい!」となったときは、やはりママ友が心強いです。世の中、ママ友ってネガティブな話が多いじゃないですか。でも、ママ友も女友達も一緒。普通の人間関係と同じで、合う人もいれば合わない人もいる。

友人と会う時間もたくさんは取れないけど、LINEで十分だったりもしますし。しかし、そのLINEをする時間含め、時間があまりないので付き合う程度でそんなに会いたくもない人と会う、みたいなのはなくなりましたね。

子どもだけしかなくなったら、今までの自分が消えてしまう

--独身のうちから、人生を通してのテーマや交友関係をつくっておくことが大事ですね。

犬山:子どもだけしかなくなったら、今までの自分が消えてしまうと思うんです。私は、XXちゃんママじゃない。XXちゃんママの瞬間もあるけど、やっぱり犬山紙子なんです。自分には自分の人生があるし、子どもには子どもの人生がある。子どものことしか話すことがないっていうのは、私にはつらいです。いつか子離れしますもの。

--世知辛い世の中ですが、実際には既婚女性サイドから「結婚しなよ」「子どもはどうするの?」と、圧をかけられるという独身女性の声もあります。

犬山:そのタイプは「自分の選んだ道が最善だと思いたい」あまり、独身の女友達に対して、「女の幸せ=結婚・子ども」という主語の大きな考えを押し付けようとする人なんですよね。既婚者だからじゃなくて、そういう人は独身時代からも主語の大きい人を苦しめるトークをしていたはず。

独身、既婚は分けて語られがちなのですが、ステージが変わって変化が目につきやすい分、それまでもあった相手の嫌なところが目につきやすくなっているだけなのかなと。結婚したから嫌な奴になった、ではなくて、もともと嫌な奴だったのが可視化されただけという。でも、嫌な奴がさらに増長するって側面はあると思います。世間の「結婚してる方が偉い」みたいなクソ風潮のせいで。

もちろんただのクソバイスなので、そんな人の話は無視していいですね!(笑)。考えを押し付ける人は、「自分がした苦労を、お前らもしろ!」というのもあると思います。無痛分娩も「私もしたんだからお前らも痛い思いをしろ」っていう無意識の考えから反対する人もいるんじゃないかな。

小沢あや