<国民戦線のマリーヌ・ルペン候補が大統領選に敗れた2日後、もう1人のルペンが政治活動休止を公表した>

フランスの極右政党・国民戦線は今週、2つの大きな痛手を負った。

まず5月7日、大統領選の決選投票でマリーヌ・ルペン候補(48)がエマニュエル・マクロン前経済相に敗れた。2日後の9日、同党の国民議会(下院)議員であるマリオン・マレシャルルペン(27)が政治活動休止を公表した。

ル・パリジャン紙によれば、マレシャルルペンは「生活を変える」ために「個人的な選択」をしたのだとか。シングルマザーであり、幼い娘と過ごす時間を増やしたいし、民間企業での経験も積んでみたい――。

マレシャルルペンは2012年、22歳で当選し、最年少の下院議員となった。まだ1期目だが、6月の下院選には出馬しないことになる。そんな一年生議員の"引退"が、なぜ2つ目の大きな痛手なのか。

マリオン・マレシャルルペンは、国民戦線の創設者であるジャンマリ・ルペン(88)の孫であり、マリーヌ・ルペンの姪。党内では将来を担う逸材、マリーヌに代わる次の大統領候補と期待されていたからだ。

報道によれば、ジャンマリ自身も大統領選前、孫のマリオンが候補者ならよかったと発言しており、娘マリーヌの敗北について「恥ずべき失敗」とまで述べている。

とはいえ、マリーヌは今回、約1064万もの票を得ており、2002年にジャンマリが大統領選で得た約552万票から倍増させている(いずれも決選投票の得票数)。敗れたとはいえ、極右政党としては歴史的な躍進だ。

それもこれも、マリーヌが父親を党から追放し、人種差別的な言動を控えるなど「穏健化」路線を進めてきたことが奏功したとされる。

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その路線に反発してきたのがマリオンだ。不法移民の子供に学校給食を提供させない、ハラールフード(イスラム教の戒律にのっとって処理された食品)は違法にする、合法移民の数を年間1万人まで減らす......など、反移民の過激な主張を繰り返してきた。2人とも不仲は否定しているが、党内抗争はあったとみられている。

ある意味で、3代目のルペンであるマリアンこそが、ジャンマリの真の後継者だ。実際、地盤であるフランス南部を中心に、旧来の国民戦線支持者の間では非常に人気が高い。

そんな人材を失って、支持者たちはさぞ落胆していることだろう。

だが、むしろ最適なタイミングでの賢明な行動だとの見方を、フランスの英語ニュース放送フランス24は伝えている。フランス国際関係戦略研究所(IRIS)のジャンイブ・カミュの見立てによれば、マリアンは党の実権を握るにはいったん下野する必要があることを理解しており、政界を引退するとは言っていない。また、もし下院選で国民戦線が大敗しても、マリアンは責任を免れ、無傷のままでいられるというわけだ。

党首マリーヌが大統領選での敗北からどれだけ党勢を取り戻せるかはわからない。ただ、ジャンマリはル・パリジャン紙の取材に、人気の高いマリアン不在が痛手となり、下院選では期待ほど議席を積み上げられないだろうと答えている。

果たして、国民戦線は失速するのか。そして、マリオン・マレシャルルペンはいずれ政界復帰するのか。下院選は6月の11日と18日に行われる。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部