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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

参考:秘めた欲望に火が付く 『パーソナル・ショッパー』禁断の扉ひらくスリリングな予告編

■『パーソナル・ショッパー』

 長い連休が終わってから初めての週末、映画ファンにとっては「観るべき作品が多すぎる!」とうれしい悲鳴が聞こえてきそうなほど、今週末公開の作品は粒ぞろい。マーベル・シネマティック・ユニバース作品の中でも絶大な人気を誇る『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』、全米で3週連続1位に輝くという大ヒットを記録したM・ナイト・シャマランの新作スリラー『スプリット』、第89回アカデミー賞でケイシー・アフレックが主演男優賞を受賞した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などなど、オススメするべき作品が多数あるが、リアルサウンド映画部のロン毛担当・宮川が最もオススメしたいのはオリヴィエ・アサイヤス監督最新作『パーソナル・ショッパー』。

 前作『アクトレス 〜女たちの舞台〜』は、ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・グレース・モレッツら豪華女優陣から見事な演技を引き出し、圧倒的なクオリティの脚本で“時間の経過”や“老いること”を描き切り、アサイヤス史上最高傑作の呼び声も高かった。しかし、第69回カンヌ国際映画祭監督賞に輝いた本作では一転し、賛否両論を呼びそうな“怪作”に仕上がっている。

 『アクトレス 〜女たちの舞台〜』に続いてのアサイヤス監督とのタッグになる、スチュワートが演じる本作の主人公モウリーンは、忙しいセレブに代わって洋服やアクセサリーを買い付ける“パーソナル・ショッパー”として、パリで順調に仕事をこなす一方、亡くなった双子の兄の悲しみから立ち直れずにいた。そんな中、携帯電話に奇妙なメッセージが届き始めたことにより、不可解な出来事が起こり始めていく……。

 “パーソナル・ショッパー”という題材や、スチュワートがアンバサダーを務めているシャネルが衣装協力をしていることから、一見“オシャレ映画”に見える本作だが、実態はまったくの別物。内容に関しての言及はできるだけ避けるが、“オシャレ映画”を期待して観に行くと、とんでもない目に合うということだけ断言しておく。ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ネオン・デーモン』の感覚に近いかもしれない。

 もちろん、シャネルやカルティエなど劇中に登場するファッションや、それらを身に纏うスチュワートの美しさだけでも一見の価値ありだが、黒沢清監督作品にも通じるホラー映画的方法論によるカットの数々は強烈なまでに印象に残り、心理的・思想的なメッセージに思いを巡らせることになるはずだ。

 なお、リアルサウンド映画部では、アサイヤス監督のインタビューを近日掲載予定。

■『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』

 上京して6年目、リアルサウンド映画部の大和田がオススメするのは、石井裕也監督最新作『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』。

 「都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ」。冒頭で、東京の街の描写と共に主人公・美香が読み上げていく詩が、冷たい音を持って耳に届く。本作は、最果タヒの同名詩集を原作とした作品。登場人物たちが発する言葉のひとつひとつに、確かな重みを感じました。その言葉にどんな感情が込められていたのか、観終わったあともまだ深く考え込んでしまう、それほどまでに密度の濃い映画です。

 石井監督が2013年に監督した『舟を編む』も“言葉”を題材にした作品でした。自分の思いを言葉で伝えるのが下手だった主人公・馬締光也は、相手の気持ちが分からないことに悩んでいました。『舟を編む』と『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』、どちらの主人公も、自分の純粋な気持ちと、それを表す言葉をとても大切にしています。だからこそ少し、不器用になってしまっている。そこに共通点を見出すとともに、共感を覚えました。

 今作には、最果タヒさんの「私は詩を書いていて、ずっと、不器用にしか、下手くそにしか、『今』を生きることができない人たちに、届く詩が書きたいと思っていた」との思いが込められています。たくさんの物事や人との接触で、いつの間にか、自分自身が徐々に擦り減っていくような、時として虚しさを感じる世界。そんな時代、街、環境で、今日をどう生きればいいのか。この作品を観れば、少しだけ答えがわかるかもしれません。(リアルサウンド編集部)