米25セント硬貨と大きさを比較したペーパー・アシッド(LSD紙片、2017年4月12日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】嵐のように訪れる極端な気分の上下と強い抑うつをコントロールしようと、作家のアイェレット・ウォルドマン(Ayelet Waldman)さん(52)は処方薬をあれこれ試したがうまくいかなかった。だが、ついに青い薬ビンに入った希釈したLSDに救いを見出した。

 米サンフランシスコ(San Francisco)のベイエリア(Bay Area)に住む元連邦公選弁護人のウォルドマンさんは「失うものは何もない」という気分で、幻覚剤LSDの少量2滴を舌下にたらした。間もなく憂うつな気分が消えていくのを感じた。

「率直に言って、自殺願望が起き始めたのです。もう1つの選択肢が死ぬことだとしたら、あるいは少なくとも死にたいと感じるぐらい惨めならば、何か別の新しいものを試してみてもいいでしょう」とウォルドマンさんはAFPに語った。

 ウォルドマンさんは流行の「マイクロドージング」で気分が一新されたと話した。マイクロドージングとは、LSDやサイロシビン含有マッシュルームといった幻覚剤を、ほぼ感知できないほど微量だけ摂取することだが、違法かつ潜在的な危険がある。

■仕事の能率向上や抑うつ対処で人気に

 マイクロドージングの目的は幻覚を起こすことではなく、仕事の能率と創造性を高めること、あるいはウォルドマンさんのように気分障害を含めたさまざまな病気に対処することだ。「1日目から気分は良くなりました」とウォルドマンさん。「うつが消えていって…驚きです」

 彼女は希釈しなかった場合の約10分の1の量、1日当たりおよそ10マイクログラムのLSD摂取で人間関係が改善し、仕事の能力も向上したと言う。

 マイクロドージングの使用は近年、薬物愛好家らではない人々、特にキャリア向上を目指すカリフォルニアのシリコンバレー(Silicon Valley)の若き専門職たちの間で勢いを増している。

 人気の火付け役となったのは、影響力のあるいくつかの米国のポッドキャストだ。またより最近では、ウォルドマンさんの近著「A Really Good Day: How Microdosing Made a Mega Difference in My Mood, My Marriage, and My Life(真に良き一日:私の気分、結婚、人生を大きく変えたマイクロドージング)」も一役買った。同書にはそううつの激しい振幅から抜け出すために幻覚剤がいかに役立ったかが詳述されている。

■未研究の効能と薬物犯罪の狭間で

 LSD、すなわちリセルグ酸ジエチルアミドは、1960年代の反体制文化で悪名をはせた効力の強い合成ドラッグだ。大量摂取すると幻覚を引き起こし、長時間にわたり知覚と認知機能を大幅に変化させる。

 マイクロドージングは、事例としては薬効や能率向上が示されているが、長期摂取による毒性といった潜在的リスクは不明だと、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)で薬物乱用と依存症を研究しているマシュー・ジョンソン(Matthew Johnson)氏は指摘する。同氏はAFPの取材に対し、マイクロドージングは財政面と法律面の二つの理由で「まったく研究されていない」と語った。

 米国でLSDが最初に非合法化されたのは1966年で、70年にはサイロシビンと一緒に、ヘロインやメスカリンなどと並ぶ法的規制が最も厳しい薬物のカテゴリーに分類された。

 だが、マイクロドージングの対照研究は「認知促進と抗うつ効果の可能性には効果があり得るという点で、絶対的に興味深く説得力がある」とジョンソン氏は言う。同氏自身が行った研究ではサイロシビンの使用によって、がん患者の不安やうつへの対処が改善したり、喫煙者の禁煙を支援するなどのプラスの結果が出ている。

 ウォルドマンさんは最終的には法的なリスクが理由で、マイクロドージングの継続をあきらめざるを得なくなった。最初の30日は友人の友人からLSDを受け取っていた。だが、それ以上を調達することには自分がストレスを感じた。

 薬物をめぐる処罰は州により異なるが、大体は連邦法と同様で、LSD所持の初犯は最高1年の禁錮刑または罰金1000ドル(約11万円)だ。元弁護士として薬物犯罪の被告人を弁護した経験もあるウォルドマンさんは、自分がその危険を冒すことは正当化できないと語った。

 すぐではないだろうがLSDが合法化されるまで、二度とマイクロドージングはしないだろうとウォルドマンさんは述べたが「また自殺したい気分が始まらない限りね。死ぬか、犯罪を犯すかの選択だったら、犯罪を犯す」ことを選ぶと言う。
【翻訳編集】AFPBB News