超低金利下、方向定まらぬ生保の資産運用ぶり

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 日銀による「マイナス金利」導入で低金利状況が一段と深刻化し、「(悪)影響」をもたらしている。長期債投資による利配収入を資産運用の主軸とする生命保険(生保)にとっては、文字通りの死活問題。

 4月下旬、大手生保5社の「今年度上半期の運用計画」が出た。「国内債券」「外国債券」「国内株式」の主要3分野については前期末の比率に比べ次の様な具合。

*日本生命:横這い・増加・横這い。*第一生命:減少・金利/為替水準次第・株価水準次第。*明治安田生命:減少・増加・横這い。*住友生命:横這い・増加・横這い。*かんぽ生命:減少・増加・増加。

 国内の長期債投資では、運用難という認識で一致。外国債については第一生命の示した方針が現実を如実に示している。目下円安傾向にある(前期末比約2%)。つまり為替差損を避けられる状況なら金利水準の高い外国債投資への比重を増やそうという構えである。かんぽ生命が国内株式を増やすのは「ポートフォリオ」が未完成という特異事情によるもの。

 発表された詳細を分析すると興味深いのは日本生命の、「2020年度末までに成長分野に1.5兆円を投融資する。今年度から海外のインフラ案件への投融資に本格的に乗り出す」とする宣言。他社も微妙な差異はあるが同様の方向を示唆している。

 インフラ案件への投融資は、上場株や債券といった伝統的な資産以外を対象とする「オルタナティブ投資」にカウントできる。大手生保の動きを見透かしたように、主に外資系運用会社が「変わり種オルタナティブ投資」の提案に注力している。

 例えばカナダ系の「マニュライフ・アセット・マネジメント」。「10億円程度の投資から可能。10%前後の利回り確保」を謳い文句に、日本でのファンド立ち上げに踏み切った。投資対象は、北米や豪州の森林や農地。生産される木材やナッツ、トウモロコシを販売し収益を投資家に分配するという枠組み。既に1985年から北米で投資資金の募集が始まっており、現在の運用資産残高は300億ドルを超えている。

 また「JPモルガン・アセット・マネシメント」では、生保や企業年金基金から100億円余りの資金を集めファンドを組成した。タンンカーや大型船舶に投資して、それを海運会社に貸し出し(リースし)収益を投資家に分配するというファンドである。

 生保各社に「この種のオルタナティブ投資に、運用の道を拡げているか」を質してみた。答えは「運用資産の具体的な内容については答えられない」で共通していた。皆無とは言い切れないが、持ち込まれても「腰が引く」のが実情ではないか。というのは生保の運用は「ローリターン・ローリスク」が歴史的な大原則。そうした定石を無視し、手痛い「大火傷」に苦しみ続けた苦い体験があるからである。

 1980年代終盤の日本経済に膨らんだバブル期。生保もバブル酒に酔いしれた。株価大暴騰を受け長期国債の人気は低落の一途(利回りは急上昇)。そうした中で生保各社は考えられない様な施策に走った。保険契約者に約定する「予定利率(実質、保険料の割引率)」をまさに前代未聞の4-5%水準に設定したのである。

 周知の通り日経平均でみると89年12月29日の過去最高値3万8957円でピークアウトしたバブル経済は以降、「失われた20年」という長期に亘る不景気の坂道を転がり落ちていった。国債利回り(金利)は下がり続けた。生保はつい最近まで「予定利率>実際の運用利率=逆ザヤの苦」を背負う羽目となった。「10%前後の利回り」に耳を傾けるとは思えない。

 逆に言えば、そうした「運用話」が突きつけられるほど生保は超低金利下の運用難に晒されているということである。