新しいサプリを買う前には、じっくり下調べをしましょう。

アメリカでは「Prevagen」と呼ばれる記憶力増強サプリが販売されており、CMも散見します。日本でもオンラインで購入可能なこのサプリ、「クラゲのタンパク質からとれた成分」という謳い文句で注目を集めています。しかしサプリを販売しているQuincy Biosciencesは現在、連邦取引委員会(FTC)とニューヨーク州司法長官により「明らかな詐欺」だとして提訴されています。

FTCの消費者保護局の局長であるJessica Rich氏は、「Prevagenのマーケティングは、記憶力低下に悩む高齢の消費者の恐怖につけこみました。しかし、Quincy Biosciencesは本物の科学で実証することを忘れていたのです」と今年の1月にFTCが告訴した際に声明文を発表しました。

米Gizmodoは情報公開法(Freedom of Information Act)に基いて、FTCが受け取ったPrevagenに対する苦情の公開を求めました。苦情はFTC宛てのEメールとコールセンターの両方に届いており、誰もに共通しているのは「サプリがインチキなのではないか?」という疑念です。何よりも悲しいのは、「アルツハイマーを治してくれる」と信じていた人もいたことです。

以下が米Gizmodoによって収集された苦情のうちの9件です。Quincy Biosciencesは米Gizmodoに対しコメントしませんでした。

カリフォルニア州ストックトン - 2016年8月

私は最近退職した薬剤師です。Prevagenは実証されていない効果(記憶力や、その他中枢神経系の向上)をテレビCMで宣伝している市販薬です。確かに画面には細かい文字で注意書き(「これらの宣言は食品医薬品局(FDA)に査定されておりません」)が表示されますが、画面いっぱいにクラゲや脳の3Dイメージが流れているときに、観ているアメリカ人が気付くと思いますか? これらのテレビCMは欺瞞に満ちているうえに誤解を招きやすく、さらに実証(二重盲検、プラセボ対照、交差試験などで)された事実が欠けているため、放送を中止すべきだと考えます。どう思いますか?

テキサス州タイラー - 2015年8月

報告者はテレビでPrevagenという薬の広告を観たと証言。彼女によると、その薬はアルツハイマーを治療できると宣伝していました。また、彼女の姉妹がその薬を服用し、病状は悪化したといいます。彼女は姉妹がどれだけの量を購入したのかわかっていないようです。

ニューヨーク州ポートチェスター - 2014年12月

Prevagenの20mgは一粒あたり3ドルとかなり高価なサプリメントです。Tao of Herbs(訳注:ECサイト)はボトルを密かに開封する方法を発見し、中身の3分の1を抜き取っていました。アメリカ食品医薬品局(FDA)にはすでに通報してあり、薬品の効力と、そもそも本物のPrevagenかどうかを検査するつもりです。これだけ怪しい広告で誰も苦情を出さなかったのが不思議です。あるいは苦情が出ているのでしょうか? 備考: 彼らがこれ以上人を欺いて私腹を肥やさないためにも、業務停止命令を受けるべきです。ここはアメリカです。私たちは品質や商売の基準を守らなければいけません。こういうインチキを売り物にする人間がいたからFDAが設立されたんです。彼らからは絶対に金輪際何も買いません。とにかく今は返金してほしいです。

アリゾナ州フェニックス - 2013年8月

報告者は、PrevagenというサプリメントのCMをテレビで観たと証言。しかし、その薬またはサプリメントが何のためのものかは説明されていないようでした。全額返金保証の謳い文句に惹かれ、報告者の夫が地元の店で購入しました。1カ月服用したが、まったく効果が見られなかったために返金を会社に要求。しかし、返金保証はネット上で購入されたもののみと説明されました。報告者は、広告には一切その旨の説明がなく、ウェブサイトにも単純に全額返金保証としか書かれていないと訴えました。報告者は会社に送ったEメールをこちらに転送し、レシートも添付されています。

コネチカット州サウスポート - 2015年10月

Quincy Bioscience製品のPrevagenのCMを観て、サプリの効果に関しての大胆な主張に興味を持ちウェブサイトを見てみました。しかし、彼らが根拠とする「臨床試験」を見た結果、その主張に根拠がないことは明らかでした。私がそう結論づけた理由は、FTCによるサプリメントに関する広告のガイドラインを知っていたからです。試験は社内で行なわれていて、第三者による検証もありませんでした。また、試験を行なった人間はそれを行なえる資格を持っているわけではなく、得られた結果はその分野の専門家にとっては不十分なデータだったでしょう。さらに、現在Quincy Bioscienceはこれらのデタラメを理由に告訴されていることもわかりました。よって、Quincy Bioscienceがこの商品を宣伝または販売し続けるのは非倫理的なだけでなく、違法ですらあると考えます。

場所不明 - 2016年6月

消費者から、Quincy Bioscience LLC.の記憶力増強サプリメント、Prevagenに関する報告。報告により以下の指摘を受ける: 2012年、FDAはQuincyに対し、(a)Prevagenに関するいくつかの主張は違法である。(b)FDAの承認を得ていないので、同社が出資した臨床試験は違法である。(c)同社はサプリメントの副作用に関する報告を怠った。(d)同社は適正製造基準へのコンプライアンスを怠った。

フロリダ州デイビー - 2016年7月

Prevagenの主張が詐欺であるというのが、私の科学的見解です。さらに、この詐欺を助長するためにQuincy BioscienceはInnovision Publishingと共謀し、Prevagenが記憶力を改善できると証明されていないという批判をかわすために「査読された」研究論文と結果をでっちあげました。私が編集者に送った文章は以下です: 2016年冬のAdvances in Mind-Body Medicine第30号の4ページから11ページまで、「アポエクリオンを含んだサプリメントのコミュニティ内の老人の言語学習への効果」という論文がありました。著者はDL Moran、MY Underwood、TA Gabourie、そしてKC Lernerです。この論文を読んだあと、私はいくつかの点を元に彼らの主張の確実性を疑いはじめました。

一番主な理由としては、アポエクリオン並のサイズのタンパク質がカプセルとして飲み込まれても消化器官で吸収されるという証拠がないためです。タンパク質が消化器官で代謝されてアミノ酸になるという証拠はいくらでもありますが、似たような例でいうと、インスリンは必ず経口投与ではなく注射を使わなければなりません。さらに、アポエクリオンを注入されたとしても血液脳関門を通れないので脳まで届かず、謳われている効果を発揮することはできません。1つ興味深い点は、論文によるとアポエクリオンが海馬ニューロンを脳卒中のダメージから守るという仮説があります。それを証明するために、頭蓋内に注入していたということです。この物質を脳に届ける唯一の方法だからです。

さらに論文の中で記述されているアポエクリオンの効能は、脳卒中と関連した細胞内カルシウム濃度の上昇と、それに伴う酸素、ブドウ糖欠乏状態に関するものでした。しかし酸素、ブドウ糖共に正常な状態でのものではありませんでした。論文には、経口投与されたアポエクリオンがいかにニューロンに作用して認知機能を助けるのか、という説明が一切ありません。

この論文が学術的に無効であるもう一つの理由は、アポエクリオンで治療されたグループと偽薬グループの統計的な比較がなかったことです。そもそも偽薬グループは、被験薬グループが偽薬グループよりも大幅に改善しているかどうかを調べるためにあるのです。その肝心な情報が抜けている以上、著者がいかにこのサプリメントの効果を宣伝しても無意味なのです。

オレゴン州ダマスカス - 2016年10月

PrevagenのサイトやテレビCMは、科学的に証明された研究で脳を活性化させると謳っています。サイトに行って研究を読んでみたが、私にはれっきとした研究には見えませんでした。サイトによると「これらの表現はFDAによって査定されていません。この商品は疾患を診断、治療、回復、予防するものではありません」だそうだが、これは彼らのCMと矛盾しており、実に腹立たしいです。効かないものを効くなんて宣伝できるのはおかしいではないでしょうか。

最後の苦情は、Prevagenがターゲットにしている人たちがいかに騙されやすく、物事の理解に困難する場面があるかということを如実に表わしています。FTCのコールセンターに電話したこの消費者は、知らされていなかった「国際手数料」を取られたと苦情を残します。取られた金額は…なんと76セント(約84円)です。

ネブラスカ州カーニー - 2016年6月

報告者がPrevagenの試供品を申し込んだところ、報告者に事前に知らせずに国際手数料を取られたと証言。76セントを請求された。

お年寄りにとって、物覚えが悪くなっていくのは悩みでもあり、恐怖でもあります。そういった心に付け入ろうとしていたのなら、いち早い対処が必要ですね。


・蚊を撃退すると謳う虫除け剤、すべてに効果があるわけではないみたい

image: Andrei_R/ Shutterstock.com
source: YouTube, Gizmodo US

Matt Novak - Gizmodo US[原文]
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