連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第6週「響け若人の歌」第34回 5月11日(木)放送より。 
脚本:岡田惠和 演出:田中正  


34話はこんな話


綿引正義(竜星涼)が、お父さん・実(沢村一樹)を見かけた人に会ったと聞いて、みね子(有村架純)は気が気でない。早く実家に報告をしたくて・・・

感情の層の微妙な違い


「お父さん、
お父さん、
お父ちゃん
近くにいるんですね」
33話の終わりのモノローグが、34話の冒頭にも使われた。
「お父さん」は、モノローグ用の少し他所行きの言い方。
それが、感情が高まって、ふだんの「お父ちゃん」に変化する。
人間が心の中ではわるいことを考えていて、外側ではいいことを言っているというような単純な分け方ではなく、感情の層の微妙な違いを描き分けているところが興味深い。

「なんだその喋り方は」(正義)


一瞬ひるんだものの、一緒に帰っていく正義と雄大。
「君は(正義のこと)」「認識を新たにしたよ」とかっこつけながら
「ラーメン・・・おごってくれないだろうか」
図々しいな高島雄大(井之脇海)。典型的なヒモタイプな気がする。ただ悪い人ではないのだろう。
そして、国家権力(警察)と共産主義者が並んでラーメンをすする(歩み寄る)とい素敵な場面ができあがった。
ひとつだけ気になったのは、ふたりの歩き方がものすごく遅かったこと。俳優がふたりとも大柄なのに比べて、セットが狭いんだろうなあ・・・それは仕方ないか。

君子、大活躍


お父さんらしき人を見た、という情報を早く正確に美代子(木村佳乃)に伝えるため、君子(羽田美智子)に電話をする。
君子はわいわい大騒ぎ、時子(佐久間由衣)は冷静なので、君子が、話をかいつまんで「みつかった!」とだけ報告して、ぬか喜びさせてしまうのでは・・・とひやひやしたが、君子は意外とちゃんとしていて、事実を伝えていた。しかも、最初に話すのは美代子にしたいと、夫と息子には話さず、夜の村を自転車で疾走する。
ああ、ほんとうに、こういう善良さにホッとする。

それにしても・・・


実が生きてるとしたら、なぜ、連絡してこないのか。
誰もが思うその疑問に関しては、ドラマはまだ答えを出さない。
雄大がまず疑問を発し、美代子も生きているのは嬉しいけど、なぜ・・・という流れ。
ハーモニカのメロディが哀愁を帯びていて胸がうずく。

「このまんまみつからないほうがいいなあって心のどっかで思ってて」とみね子は、乙女寮の仲間に告白する。
家族がいやになったのか・・・と気に病んでいるのだ。
朝ドラではよく、お父さんや夫の不在が描かれる。
そうしないと女が奮闘する話にならないからで、亡くなる以外は、たいてい、ダメ父、ダメ夫として処理されてきた。
「ごちそうさん」は、ヒロイン(杏)の夫(現在「あなそれ」で怪演中の東出昌大)が戦争からなかなか帰ってこないことを最終回まで引っ張って、劇的に盛り上げた成功例だ。
「ひよっこ」は、父の不在に関して、あんなに家族想いで働き者だった父がなぜ? という事件性を加味したところが新鮮。警官も出して、昨今のミステリードラマブームに少しだけ寄り添うかのような工夫も見どころのひとつとなっている。

「ちゃんと毎日をがんばって生きてないと、いいことはやってこない」(愛子)


「神様がいるのかどうか知らないし、
いたとしてもほんとうにみんなのことを平等に見てるのかなって思うけどね」
そのとおり。
でも「ちゃんと頑張って生きてないと神様は気づいてくれない」と愛子(和久井映見)は言う。

「だからわたしはこれから幸せしかやってこないのよ」に続けて、
「もうね大変なことになってしまうわよこれからの私は」
(勝手に、名台詞の収蔵庫に保管決定しました!) 
自分を持ち上げるようで、みね子を励ましている。優しいなあ、愛子さん。

どんだけ悲しくて辛かったのか。愛子は、ケロッと脳天気な言い方をしているにもかかわらず、彼女の気持ちが痛いほど伝わってきた。

神様がいるという前提にしないで、
「神様がいるのかどうか知らないし、
いたとしてもほんとうにみんなのことを平等に見てるのかなって思うけどね」と前置きしているところがいい。

それにしても、
お父さん、どうして、連絡してこないのか。
ほんとうに、見かけられたのはお父さんだったのか。
気になります。
(木俣冬)