5月10日、京都迎賓館で2019年9月20日から日本で開催されるラグビーワールドカップ(W杯)の組み合わせ抽選会が行なわれた。ホスト国の日本代表(世界ランキング11位)は予選プールAに入り、世界ランキング4位につけるアイルランド代表、5位のスコットランド代表、ヨーロッパ地区1位チーム、そしてヨーロッパ・オセアニア大陸間プレーオフ勝者チームと対戦することが決まった。


対戦チームが決定し、ジェイミー・ジョセフHCは何を思う? ホスト国の日本代表は開幕戦で試合をする見込みのため、日程的にも余裕があって有利とされる。W杯優勝経験国と同じ組に入らず、ヨーロッパ勢3チームと対戦することになった点も考慮すると、他のプールと比べてやりやすいプールに入ったと言えよう。それでは日本代表が対戦する、そして対戦が予想されるチームの顔ぶれや特徴について見ていきたい。

 まず、プールAの5チームのなかでもっともランキング上位につけているのは、シャムロック(シロツメクサ)のエンブレムで知られる「緑の軍団」アイルランド代表だ。サッカーとは違い、ラグビーでは北アイルランドも含めたアイルランド島の代表チームとして構成されている。そのため、ラグビーでは「北アイルランド代表」というナショナルチームはない。

 気持ちのこもった「アイリッシュ魂」で知られるラグビーには定評があり、もちろん1987年の第1回大会から連続出場中である。しかしながら、W杯での成績はベスト8が6回と、なかなか準々決勝の壁を破ることができていない。ただ、2013年にニュージーランド出身のジョー・シュミット・ヘッドコーチ(HC)を招聘してからは上昇カーブを描いている。シュミットHCは2010年からレンスター(アイルランド)を率いて欧州クラブ王者に2度輝いた実績を持つ。

 シュミットHCが就任したアイルランド代表は、2014年と2015年に欧州王座決定戦「シックス・ネーションズ」で連覇を達成。2015年W杯の直前には過去最高となる世界ランキング2位まで上昇し、優勝候補の一角と目されていた。しかし、W杯本番ではプールDを首位で通過したものの、準々決勝でアルゼンチン代表に不覚を取り、周囲の期待を裏切る形で大会を終えている。

 それでも、2016年11月には18連勝中のW杯王者ニュージーランド代表をチーム史上初めて破り、2017年3月には勢いに乗るイングランド代表も18連勝で止めた。その実力は紛れもなく本物だ。セットプレーが強く、ボールを展開する力もあり、相手を抱え込むようなタックルを軸とした組織的ディフェンスは高く評価されている。

 個々の選手ではキャプテンのHO(フッカー)ローリー・ベストを筆頭に、世界最高峰のハーフ団にも数えられるSH(スクラムハーフ)コーナー・マレーとSO(スタンドオフ)ジョナサン・セクストン、第3列のFL(フランカー)CJ・スタンダーとNo.8(ナンバーエイト)ジェイミー・ヒースリップが注目選手。また、バックスにも決定力のあるランナーが多く、CTB(センター)ギャリー・リングローズ、WTB(ウィング)サイモン・ゼボ、FB(フルバック)ジャレッド・ペインの存在は日本にとって脅威となるだろう。

 今年6月にニュージーランドに遠征する「全英代表」ブリティッシュ&アイリッシュライオンズには、アイルランド代表チームから11人が選出された。同じく6月に来日して日本代表と2試合行なうアイルランド代表は、いわば”飛車角抜き”の「1.5軍」である。この試合はW杯前哨戦という位置づけになるだろうが、ホームで迎える日本代表にとっては負けるわけにはいかないだろう。

 日本と同組になったシュミットHCは、抽選会後にこう語っている。

「日本代表はレベルの高い選手が増えて、短い期間で本当に成長した。この2年でさらに伸びるだろう。(日本代表を率いる)ジェイミー・ジョセフHCをリスペクトしている。本当に怖い男で、チームにエネルギーをもたらすだろう」

 次は、世界ランキング5位のスコットランド代表を紹介したい。キク科の植物「アザミ」のエンブレムが特徴のスコットランド代表は、2015年W杯で日本代表が唯一負けた相手だ。2013年にはアウェーで、そして昨年6月も来日して2試合行なうなど、近年よく対戦している相手である(いずれも日本代表は敗れている)。

 アイルランド代表と同様にスコットランド代表もシックス・ネーションズを戦う一員であり、W杯も1987年の第1回から全大会出場中だ。過去最高成績は1991年W杯の4位だが、2011年W杯はプール戦で敗退し、決勝トーナメントに進出できず失意を味わっている。

 従来のスコットランド代表の戦い方は、しっかりと守り、ペナルティゴールを決めて得点を重ねていくスタイルだった。しかし2014年、クレルモン(フランス)を欧州クラブ王者決定戦・決勝まで導いたニュージーランド出身のヴァーン・コッターが指揮官に就任すると、ボールを積極的に展開するチームへと変貌。2015年W杯ではベスト8に進出し、準々決勝ではオーストラリア代表を1点差まで追い詰めた。

 その後もスコットランドの代表は好調をキープしている。2017年のシックス・ネーションズではアイルランド代表を破って3位となった。その結果、世界ランキングを過去最高の5位まで押し上げている。

 注目選手はキャプテンのSHグレイグ・レイドロー、身長207cmのLO(ロック)リッチー・グレイ、そしてセンスあふれる司令塔SOフィン・ラッセル。さらに、サッカーのジョージ・ベストの遠縁でもあり、シックス・ネーションズにおいて2年連続MVP(2016年、2017年)に輝いた世界最高峰FBのひとり、スチュアート・ホッグが要注意プレーヤーだ。

 ただ、コッターHCは今年のシックス・ネーションズをもって退任し、来シーズンからモンペリエ(フランス)の指揮官になることが決まっている。6月からはグラスゴー・ウォリアーズ(スコットランド)を指揮していたグレガー・タウンゼンドが就任する。タウンゼンドHCは現役時代、スコットランド代表でSOやCTBとして活躍した人物。おそらく就任後は、コッターHCの標榜したボールを動かすラグビーを継承するとみられている。

 指揮官の代わりに抽選会に出席した強化担当者のスコット・ジョンソンは「2015年と昨年に対戦しているので、日本代表が危険なチームであることはわかっている。W杯ホスト国との対戦はチャレンジだが、同時に好ましい。満員の観客のなかでの試合が保証されており、選手のモチベーションが上がる」と日本代表との対戦を歓迎している。

 残る対戦相手は、ヨーロッパ地区1位チームと、ヨーロッパ・オセアニア大陸間プレーオフ勝者チーム。まずヨーロッパ地区1位には、今年6月に日本代表が熊本でテストマッチを行なうルーマニア代表(世界ランキング16位)が入ってくると予想される。

 ヨーロッパ地区1位はシックス・ネーションズに次ぐ大会である「ラグビーヨーロッパ・チャンピオンシップ」の2017年と2018年の成績で決まる。ルーマニア代表は2017年の同大会、開幕戦でドイツ代表に敗れたものの、すでにW杯出場権を得ているジョージア代表を破るなど4連勝で優勝を果たした。来年の成績次第ではあるが、手堅く戦えばヨーロッパ地区1位となってW杯出場権を得るはずだ。

 日本代表はエディー・ジャパン時代、アウェーで2度対戦してともに勝利している。ルーマニア代表は伝統的にスクラムやモールなどフォワードに強みを持つが、バックスの展開力やディフェンスのレベルはさほど高くない。日本代表が順調に強化をしていけば、問題なく勝てる相手だろう。個人的な願望としては、W杯開幕戦で対戦して勢いに乗りたいところだ。

 一方、気になるのはヨーロッパ・オセアニア大陸間プレーオフのウィナーである。2017年から2018年にかけてフィジー代表(世界ランキング10位)、サモア代表(同14位)、トンガ代表(同13位)の3ヵ国は「パシフィック・ネーションズカップ」を戦っており、ここでの2年間の成績でW杯出場権を得るオセアニア地区1位、オセアニア地区2位、そしてヨーロッパ地区2位と大陸間プレーオフを戦うオセアニア地区3位が決まる。

 昨年の大会ではフィジー代表が2連勝してアドバンテージがあるため、7月の大会で1勝すればオセアニア地区1位となり、オーストラリア代表やウェールズ代表らと同組のプールDに入ることになるだろう。よって順当にいけば、オセアニア地区3位は、サモア代表かトンガ代表となる。大陸間プレーオフで対戦するヨーロッパ地区2位はスペイン代表、ロシア代表、ドイツ代表のいずれかになりそうだが、世界ランキングや実績からすれば、サモア代表かトンガ代表がプールAに入ってくると予想される。

 いずれにせよ、オセアニアの2チームはともにフィジカルを前面に押し出したラグビーを展開してくるはずだ。欧州各国リーグやスーパーラグビーでプレーする選手も多く、一発勝負の試合には爆発的な力を発揮する。日本代表としては2015年W杯でサモア代表に快勝したように、セットプレーとタックルで相手にプレッシャーを与えていけば勝機も十分にあるだろう。

「ベスト8進出」を掲げる日本代表のジェイミー・ジョセフHCは組み合わせ抽選会を終えて、「どんなプールになっても我々にとって大きなチャレンジになると思っていた。そして組み合わせが明らかになり、2019年のW杯に向けて具体的なプランニングが始まるのでワクワクしている」と話していた。

 W杯本番まであと2年あまり、対戦相手がほぼ明確となり、いよいよ2019年に向けて本格的な戦いがスタートする――。

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