アシッドアタックは、英国ギャングの間では法に抵触せず安易に手に入る凶器として、流行になりつつあるという。写真は2014年1月、知名度の高いギャングの一味で窃盗常習犯ローニー・ビグスの葬儀が行われた(LEON NEAL / AFP / Getty Images)

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 最近、英ロンドン東部のクラブのなかで、強酸が無差別に振りかけられ、22人が負傷する事件が起きた。地元警察は25歳の男を逮捕した。強酸を使って攻撃する行為は「アシッドアタック(酸攻撃)」と呼ばれ、硝酸や硫酸、塩酸、バッテリー液などが使われる。

 中東や東南アジアなどではしばしば発生している。セクハラや婚姻の拒否など、男性が女性に憎悪したり嫉妬したりすることで、外見を著しく失わせる目的で、顔面に強酸をかける事件が多い。

 しかし最近、英国ではギャングのような犯罪集団の間で、流行的な犯罪手法になっている。過去2年間、酸攻撃が2倍に急増している。警察の統計では、国内の酸攻撃は2015年の261件から2016年の454件になった。

中東やアジア圏と異なる 英国のアシッドアタック

ロンドン東部にあるナイトクラブ「Wringer and Mangle」で4月、25歳の男によるアシッドアタックで、22人が負傷した。(Flickr)

 英国のアシッドアタックは、中東や東南アジアで見られる事件とは少し異なる。最近、現地の犯罪組織は、より安価で入手しやすく、敵勢力へ威嚇しやすい凶器として、銃や刃物ではなく強酸を選んでいるという。

 アシッドアタック被害者支援団体ASTIのロンドン代表ジャフ・シャー氏は、凶器になりうるほとんどの強酸は身分証明書や免許証なしで購入することが可能だと語る。

 アシッドアタックの攻撃では、皮膚が溶け、酸度が強ければ骨にもダメージを与える。外見的な損傷が残るために、職を失い家族が離散するケースは多く、被害者が自殺に追い込まれることも少なくない。「身体にも心にも、酸攻撃の後遺症は永久的なもの。失明は典型的な例だ」と、シャー氏は語る。

 また、シャー氏は、銃や刃物が一時の興奮などで偶発的に傷害事件に発展するのと異なり、酸攻撃は常に計画的犯行である傾向が強いという。

 ミドルセックス大学犯罪学講師サイモン・ハーディング氏によると、被害者は外見が著しく失われることから、警察への通報がためらわれ、実際の事件件数は起訴された件の4倍と推計される。

 ハーディング氏はまた、「ロンドン東部ではギャングらが『名声』を得るためにアシッドアタックを使い、流行となっている」と指摘した。

日本でも、アシッドアタックは発生

 警察庁に、全国のアシッドアタックの件数はどれほどかを問い合わせたところ、強酸を含め薬物を使用して他者にケガを負わせる行為は傷害罪に含まれ、特別にアシッドアタックの統計は取っていないという。

 しかし、実際のアシッドアタックの事例は報道されている。時事通信によると、2015年4月、群馬県高崎市では、女性が相次ぎ硫酸をかけられてケガを負った事件が起きた。県警は同月、30歳の無職の男を傷害などの容疑で逮捕した。

 2007年8月、福岡県福岡市の路上で44歳の男性が硫酸をかけられ重傷をおった事件が起きた。犯人は2人の男女で、インターネットの「復讐サイト」で知り合い、共謀して犯行に及んだという。毎日新聞によれば、事件前後、女性が報酬として住所不定無職の男性に数十万円を振り込んでいた。

(文・サイモン=ベアジー/翻訳編集・佐渡 道世)