海外でも注目のソフトバンク孫正義社長 報道での気になる評価は?

写真拡大

 ソフトバンクが2012年にアメリカの通信大手スプリントを買収すると発表した際、大きなニュースとなった。話題を呼んだこの出来事を鮮明に覚えている読者の方も多いだろう。あれからほぼ5年が経つが、買収に対する海外での評価はどうなったのだろうか。最近の報道から孫氏の人物像に対する視線とあわせて見ていきたい。

◆生い立ちと功績
 孫氏はソフトバンクグループの創業者として知られ、現在、同グループの代表取締役社長とソフトバンク社の代表取締役会長を兼任する。成功者としてのイメージが強い同氏だが、元々はそれほど裕福でない環境に生まれ、その後、先見の明で投資を繰り返すことで成功してきた。フィナンシャル・タイムズ紙は同氏についての記事の中で、貧しい家庭に生まれた背景を説明している。また、後にアメリカ留学時に「半導体との心踊る出会いを果たした」と書くなど、苦労人から劇的に成功へのステップを駆け上がった点を強調している。

 一方、フォーブス誌では4月5日、同媒体スタッフのKerry A. Dolan氏が直近の好材料を報じている。孫氏とトランプ氏との会談後にソフトバンク株が急騰したことを紹介し、結果として日本の長者番付で「昨年の2位から1位に浮上した」という内容だ。すでに成功を収めた勝者としての側面にフォーカスしているのが興味深い。これら2つの記事からは、同氏の時代の先端を見抜く眼力を称える視点が垣間見える。

◆崇高なビジョン
 先見の明に加えて、独自の大きなビジョンを持っていることも孫氏の魅力の一つだろう。現時点での関心はどうやら人工知能(AI)やIoT分野に向いているようだ。フィナンシャル・タイムズ紙は、インターネット黎明期に孫氏がヤフー株式会社株の取得で大成功を収めた功績に触れた上で、今後来るAIの波を同氏が狙っているとしている。

 氏のリスクを恐れない積極的な投資姿勢はエコノミスト紙も認めるところで、同メディアはその様子をアメリカで大物投資家として名を馳せるウォーレン・バフェット氏になぞらえている。互いに業態が違うにもかかわらず、日本企業の社長が世界を代表する著名投資家と比較されていることは興味深い。来たるべき時代のビジョンを描き、その分野への投資ならば厭わないという姿勢について、両者にはどこか共通するところがあるのだろう。

◆厳しい視線 - リスクの高さ
 このように海外での評価も高い孫正義氏だが、こと直近の投資に関しては、残念ながら厳しい批判にさらされていると言わざるを得ない。ソフトバンクはいくつか目立った大型の投資をしているが、それに見合った利益を生み出せていないのが現状だ。

 エコノミスト紙は3月30日に掲載した記事で「ソフトバンクの市場価値のおよそ95%はアリババ株によるもの」としている。さまざまな投資を行なっている同社だが、ごく限られた投資からしかリターンを得ていないことは意外だ。また、直近の大型投資は利益を生むばかりか、輪をかけて負債をもたらしている。携帯通信大手のスプリント、半導体メーカーのARM、そして衛星経由の通信網提供を目指すベンチャー企業であるインテルサットなどへの投資が典型例だ。ブルームバーグは4月6日の記事で、インテルサットに同社が出資していることに触れた上で、インテルサットが債務不履行回避のため出資者と交渉を繰り返していると報じている。

 一方でフィナンシャル・タイムズ紙は、昨年7月23日掲載の記事でARM買収に注目している。ソフトバンクが過去に同じ半導体メーカーであるキングストン・テクノロジーの買収に失敗したことを引き合いに出し、成功を疑問視する論調だ。

 個々の買収は必ずしも成功しているとは言えないが、ソフトバンクや同グループが国内外で注目を集める大企業であることもまた事実だ。今後も大規模な買収劇は続く可能性もあり、その動向から目が離せそうにない。