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●1兆円に貢献した事業は?
ソフトバンクグループは、2017年3月期決算で、連結業績が営業利益、純利益ともに1兆円を突破した。純利益の1兆円超えは、事業会社においてトヨタ自動車に次ぐ2社目となる。

ソフトバンクグループの連結業績において、純利益は前期比約3倍の1兆4,263億円だった。保有するアリババ株の一部売却(3,597億円)、テンセント関係会社へのスーパーセルの全株式売却(5,265億円)により、利益がかさ上げされた形だが、営業利益も前期比13%増の1兆260億円と伸びており、本業も好調だ。

では、どの事業が営業利益に貢献したのか。セグメント別で見てみよう。基本的には、流通事業を除く、全事業が好調だったが、国内通信事業、スプリント事業、ヤフー事業の3つが全体を牽引している形だ。

国内通信事業は顧客をつなぎとめる効果が高い光回線の契約が大きく伸びた。ヤフー事業もストア数、ショッピング取扱高が順調に増加、日本のイーコマースで最も伸びている会社と評価する。全体から見ると小さいが、昨年買収を発表したARMも業績に貢献した。

こうした中でソフトバンクグループの孫正義代表が最も長く時間を割いたのは、米国のスプリント事業についてだった。

買収直後の米スプリントはネットワーク、顧客の質、財務において悲惨な状態だった。かつて孫氏は「買わなきゃ良かったとずいぶん後悔した」と回想したこともあるほど。売りたくとも買い手がつかず、自力再生するほかなかった会社だが、今回の決算説明会が温和なムードで進行したのはスプリント事業が軌道に乗り始めたからでもあろう。

孫氏はスプリント事業の説明にあたり、「1年ほど前から、そろそろ反転すると伝えてきた。いずれ成長エンジンになると予告してきた。その実態が現れている」という。

各種指標は孫氏の言葉どおりだ。携帯電話の契約純増数(ポストペイド)は前年度比2倍以上の93万増に、解約率もスプリント史上最良の1.48%となった。結果として、売上は前年度比4%増の333億ドルとなり、コスト削減も進め、営業利益は前年度比6倍増の18億ドルとなった。

●スプリントの動向にかかる
○連続1兆円突破に自信

スプリント事業においては、今後も手を緩めることはない。さらなる成長のために実施するのが、通信環境の改善だ。ひとつはHPUE(High Power User Equipment)と呼ばれる通信技術の活用。これにより、電波の直進性が高くビルなどの屋内には入り込みにくい、周波数2.5GHzの電波でも、1.9GHz並みの周波数を運用するのと同等のエリアをカバーできるようになるという。

また、5G時代の到来を見据えて、スモールセルを数百万局開設していくという。5Gはミリ波とも呼ばれる高周波数の利用が想定されており、エリアカバーの広いマクロセルと呼ばれる基地局では対応できない。基地局の場所取りにいち早く着手しようというわけだ。

さらに、決算当日に発表されたクアルコムと業務提携も見逃せない。5Gにおいて低周波数帯となる2.5GHzを活用しようという試みだ。クアルコムとの提携で対応チップを搭載した端末を2019年後半にリリースし、他社に先駆けてサービス提供しようというわけだ。

ソフトバンクグループはここ数年、連結業績予想を出していないが、「来年は確実に営業利益で1兆円を突破する。今年よりも増益になる」と孫氏は公言する。その根拠は国内通信の順調の伸びに加え、スプリント事業が成長エンジンになると見ているからだ。

国内通信事業において、激変が予測しづらい今、言葉通りに実現できるかどうかは、前提となるスプリント事業が大きく関わることになる。スプリント事業におけるネットワークへの取り組みをはじめ、ポストペイド契約者数の推移、解約率の動向が気になるところだ。これまでお荷物だったスプリント事業だが、今度は成長ドライバーになりきれるのかが注目されることになりそうだ。

(大澤昌弘)