9日に行われた韓国の大統領選挙では、文在寅(ムン・ジェイン)候補が全体の41.08%の票を得て勝利を収めた。

韓国の各メディアは、投票を奨励するために様々な人の投票の様子を紹介する。一番に紹介されるのは各候補、次に国会議長と大法院(最高裁判所)の院長、つまり三権の長だ。そして、有名政治家、自治体の長などの投票の様子が紹介される。

その次に登場するのは、様々な社会的弱者やマイノリティーだ。山奥や離島に住む人、障がい者、100歳以上のお年寄り、新たに国籍を得た人などだ。地方選挙の場合は、約5万人いる外国人有権者(永住権を取って3年以上経った外国人には、地方参政権が与えられる)の投票の様子も紹介される。

もちろん、韓国に住む脱北者も「常連」である。

北朝鮮には、独裁体制を肯定するための、あらかじめ当選者が決められた偽物の選挙しかない。そこで、韓国で生まれて初めてまともな選挙で投票を行う人々の、喜びの言葉が伝えられるのだ。

韓国の公共放送KBSは、昨年10月に韓国にやって来た脱北者、カンさんの声を伝えた。「初めてのことだからドキドキする」と語るカンさんは「国民のために奉仕し、身を粉にして働くという候補の姿を見て、自由意志で候補を選択する投票を実際に経験して、民主主義がいかに大切かがわかった」と述べた。

また、東亜日報系のテレビ局、チャンネルAの脱北者バラエティ「いま会いに行きます」に出演しているチェ・ジュヨンさんは「意中の候補に投票して大統領を自分で選ぶ民主主義社会で、真の市民になりとても光栄に思うが、何だか不思議な感じもする」と述べた。

一方、地方紙の光州日報は、脱北者のキム・ヨンナムさんが当選者に望む言葉を伝えている。

「脱北者として韓国で暮らしていると、偏見と差別の壁にぶち当たることが時々あるが、それらの解消を望む。脱北者を包容する温かい社会になってほしい。生まれ育った環境が異なるため、韓国に溶け込むのは楽ではない。一方的な支援ではなく、自立する力を育ててくれるシステムが必要だ」

投票を何度も経験した脱北者は、候補者を見る目も厳しくなっている。

2009年から忠清南道に住むチャン・ユビンさんは、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)に、候補者が当選後に公約を疎かにしていると指摘し、聞こえのいい公約に騙されず、慎重に判断したと語った。 また、2006年から仁川に住むイ・ユミさんは、北朝鮮の核問題を解決しようという意思があるかを基準にして投票する候補を決めたと述べた。

脱北者の中には、選挙制度に慣れておらず、知らずに選挙違反をしてしまう人が少なくないため、関連団体では公職選挙法に関する教育を行っている。

南北ハナ財団は、ウェブサイト上に「公職選挙法関連注意事項」という文書を掲載。公職選挙法では選挙に関連した寄付行為が厳しく制限されており、寄付を行った人、受け取った人の双方が処罰され、受け取った金額の10倍から50倍(最高で3000万ウォン、約300万円)の罰金が課せられることを告知した。

ウェブサイトでは、立候補予定者のイベントに「サクラ」として参加し、交通費名目で日当を受け取ったケース、候補者が提供した車で投票所に向かい、投票の見返りにコメ10キロを受け取ったケースなど、実際に脱北者が処罰された実例も紹介している。