前回のアウェー戦で惨敗したソウルは、ホームで浦和を下した。写真:徳原隆元

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 ACLグループリーグの最終節で行なわれた“ミニ日韓戦”は、Kリーグ勢の2連勝となった。
 
 先に勝利したのは、G大阪を0-2で下した済州ユナイデットだった。済州はこの勝利で3勝1分2敗のグループ2位となり、クラブ初のACL・16強進出を果たしただけに、韓国メディアもそこに焦点を当てる記事が多かった。
 
「済州、ガンバを2-0で下してクラブ創団初のACL16強進出」(『スポーツ朝鮮』)
「済州、“後悔なき攻撃”…Kリーグの自尊心を守った」(『東亜日報』)
「済州がKリーグを生かした…ガンバ戦2-0の完勝でACL16強確定」(『スポーツ・ソウル』)
といった具合だ。
 
「ACLが始まった2002年以降、済州が出場したのは2011年だけだったが、当時はグループ3位に終わった。その時、済州に2敗を与えてグループ1位になったのがガンバだった。帰ってきたACLで、済州は6年前の恨(ハン)を2連勝できれいさっぱり返すことに成功した」としたのは、サッカー専門メディア『FOOTBALLST』だ。
 
 同メディアは「幻想ゴール、身体を捧げた守備…済州ACL初の16強」と報じた記事の中で、G大阪について綴っている。
 
「済州の勝利はガンバが数回の得点機会を逃してくれたおかげでもあった。 ガンバは後半に高いボール占有率を維持して、左右両サイドを切り崩した。特に後半30分のCKの場面で倉田が放ったシュートは、わざと外したのではないかと思えるくらいに奇怪な失敗だった」
 
 1-0でホームチームが勝利したFCソウル対浦和レッズの一戦に関しても、勝利の余韻に浸るような記事がいくつか見受けられた。

 例えば『SPOTV NEWS』の記事だ。「浦和を抑えたソウル版の前方圧迫(プレッシング)」とした記事の中で、ソウルの勝因をこう分析している。
 
「(前方からの圧迫を選んだ)ソウルの戦略は的中した。浦和の攻撃展開を鈍らせた。歯車が狂った浦和は、不確実なロングパスで試合を進めるしかなく、流れをつかめなかった。ソウルの守備陣たちは積極的に前進しながらロングパスを切った。ソウルの活動量が主導権をもたらした」

 前回のアウェー戦で浦和に2-5の惨敗を喫したソウルが、今回の試合ではユース出身の若手選手を多く起用したことに着目し、「ユースのチカラ、ソウル1・5軍で浦和に復讐した」(『InterFootball』)としたメディアもあった。
 
 ただ、すでにグループリーグ敗退が決まっていたソウルの勝利は、儚い勝利でもあった。
 
 多くの韓国メディアが「ソウル、最後に残ったプライドは守った」(『スポータルコリア』)、「ACL最終戦で浦和を破って有終の美」(『韓国スポーツ経済』)などと報じたが、Kリーグ勢で決勝トーナメント進出を果たしたのは済州ユナイテッドだけ。

 ソウルだけではなく、水原三星、蔚山現代など3クラブがグループリーグで姿を消すことになっただけに、最終節の2連勝は慰め程度にしかならないだろう。
 韓国メディアの中にもKリーグが突き付けられた現実を厳しく指摘するところは多い。
 
「韓・中・日の悲喜…済州だけ生存したKリーグ、ACL歴代最悪の成績」(『MKスポーツ』)
「済州だけ16強、中国・日本の前に崩れたKリーグのプライド」(『ノーカットニュース』)
などがそれで、昨年度ACL王者ながら審判買収問題のペナルティで今年は出場資格をはく奪された全北現代の不在を惜しむ記事も見受けられた。
 
「全北が抜けたACL…Kリーグの現在地は酷かった」(『SPOTV NEWS』)
「済州だけ生存のKリーグ、思ったよりも大きかった全北が抜けた穴」(『InterFootball』)
などであるが、全北が出場していたとしてもKリーグ勢の劣勢は変わらなかっただろう。
 
 実際、近年のKリーグ勢の苦戦は明らかだ。16強に進出したKリーグのチーム数は最近3年間で4→2→1と下降曲線を描いており、一方で中国と日本の16強進出チーム数は2→2→3と増えている。明らかに対照的なのだ。
 
「4→2→1、数字が語るKリーグの墜落」と報じた『スポーツ韓国』も記事の中でこう指摘している。
 
「Kリーグの墜落は消極的な投資が、結局はその実態を明らかにすることになったという分析が支配的だ。これまでKリーグは全北を除けば、選手補強に大きな心血を注いでこなかった。母体企業の投資萎縮の中、各チームの競争力まで落ちてしまった」と。
 
 韓国のサッカーファンたちにとっては、厳しい現実だけを突き付けられた感がある今季のACL。唯一の望みとなった済州にかかる期待は大きい。
 
文:慎 武宏(スポーツライター)
 
シン・ムグァン/1971年、東京都生まれ。韓国サッカー取材歴20年。近著に歴代コリアンJリーガーへのインタビュー集『イルボン(日本)はライバルか 韓国人Jリーガー28人の本音』(ピッチコミュニケーションズ)。