<難民危機で人気が急落し、一時は首相4選が危ぶまれたメルケルが世論調査で見事にカムバック。だがこれで人道主義が救われたと思うのは間違いだ>

フランスは親EU派のエマニュエル・マクロンを大統領に選び、極右の対立候補マリーヌ・ルペンを退けた。9月に連邦議会(下院)選を控えるドイツでも、一時は絶望視されたアンゲラ・メルケル首相の4選が視野に入ってきた。

反移民と反イスラムを掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は急に人気を落とし、3党連立政権の一角でメルケルのライバルになるマルティン・シュルツの社会民主党(SPD)も、今年に入って一時支持率が急上昇したものの、徐々に後退。最近の世論調査の結果を見ると、メルケルの勝利が確実な情勢だ(ドイツでは、首相の任期に上限がない)。

昨日公表された独シュテルン誌とテレビ局RTLの世論調査では、メルケル率いる中道右派の与党、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の支持率が36%で、SPDの29%を上回った。

リベラルで自由貿易を支持する自由民主党(FDP)と緑の党の支持率はともに7%で、CDUと合わせれば50%。連邦議会で過半数の議席を獲得できる計算だ。連立からSPDを締め出すことも現実味を帯びてきた。

CDUは最近の州議会選挙でも健闘した。3月のザールラント州議会選での勝利に続き、7日のシュレスビヒホルシュタイン州議会選でもCDUがSPDから第1党の座を5年ぶりに奪い返した。シュルツには手痛い敗北だ。

【参考記事】地方選挙から見るドイツ政治:ザールラント州議会選挙の結果

メルケル人気が徐々に復活

メルケルの支持率は、2015年後半から2016年前半にかけて低下した。2015年9月の演説でドイツは移民や難民を積極的に受け入れると表明したのが原因だ。

演説以前からヨーロッパには大量の移民や難民が押し寄せていたが、反対勢力は難民危機を招いたのはメルケルだと批判。なかでも反移民と反イスラムを掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は地方選で快進撃を続けた。

【参考記事】メルケルの寛容にテロがとどめ?

だがメルケルは苦境から這い上がった。リベラリズムと保守主義の中間を歩むことで、ドイツ政治の右から中道までで優位を固めた。AfDは失速し、支持率は7%まで低下した。

【参考記事】ドイツ世論は極右になびかない?

メルケルは保守派の有権者に配慮して、イスラム教徒の女性にブルカの着用を禁止すべきだとか、当局が難民申請を却下した難民に対する強制送還の手続きを迅速化すべきといった考えを示し、従来のリベラル路線から軌道修正した。

それでも EU最大の経済規模を誇るドイツのメルケルが、節度と安定感で築いた名声は無傷のままだ。

そもそもメルケルこそが自由世界の守護者だという認識は、昨年6月にイギリスがEU離脱を決め、11月にアメリカの大統領選でドナルド・トランプが勝つという衝撃的な2つの事件の後にメディアが広げたもの。メルケルは、あくまで老獪な政治家であって天使ではない。メルケル自身もそうしたレッテルは拒んできた。

(翻訳:河原里香)

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