5月9日、AFCチャンピオンズリーグのグループリーグ最終節(全6節)が行なわれ、川崎フロンターレがイースタンSC(香港)を4-0で下した。

 この結果、勝ち点を10に伸ばした川崎のグループリーグ突破が決定。しかも、同じグループのもう1試合、広州恒大(中国)vs水原三星(韓国)の試合が引き分けに終わったことで、川崎は首位通過が決まった(川崎と広州が勝ち点でトップに並び、当該対戦成績のアウェーゴール数で上回った川崎が上位となった)。


香港のイースタンSC相手に4-0と圧勝した川崎フロンターレ MF中村憲剛も「(決勝トーナメントに)行けるとは思っていたが、まさか1位で行けるとは思っていなかった」と語っていたが、川崎は起こりうる最高の結果を手にすることとなった。

 ACLの本戦に初めて駒を進めたイースタンは、この試合を前に4敗1分けの勝ち点1。総得点1、総失点20という散々な成績でグループ最下位に沈んでおり、すでにグループリーグ敗退が決まっていた。川崎との力の差は明らかで、引いて守りを固めるのが精一杯。どうにか川崎の攻撃を食い止めることはできても、技術的にあまりに拙(つたな)く、得点を奪う可能性は極めて低かったと言わざるをえない。

 確かに、川崎にとっては「勝って当たり前と思われる試合は、すごく難しい。簡単ではない試合だった」(中村)のは事実だろう。勝てば自力で決勝トーナメント進出を決められるという有利さと同時に、「少なからずプレッシャーはあった」と、MF大島僚太も認める。

 だが、鬼木達監督が「点を取る時間が幸運だった」と話すとおり、前半なかば(28分)に先制すると、前半のうち(45分)に2点目を追加。さらには後半開始早々(49、53分)、立て続けに3、4点目を奪えたことで、川崎は落ち着いて試合を進めることができた。

 川崎は今季ACLで煮え切らない試合ばかりが続き、グループリーグ4試合を終えた時点で4引き分け。決勝トーナメント進出が危ぶまれる状況にあった。

 しかし、最後は2連勝での締めくくりに「多少力の差はあったが、プレッシャーがあるなかでしっかり結果を出してくれた」と鬼木監督。DF谷口彰悟は「勝てない、勝てないと言われるなかで、結果的に(引き分けても)負けなかったことがよかった」と振り返った。中村もまた、「4引き分けではあったが、(相次いで)ケガ人も出るなかで、負けなかったからこそ今日につながった」と笑顔を見せ、「チームが一丸となって、みんなでつかんだ突破」と、言葉に力を込めた。

 中村の声が自然と弾むのは、最高の結果を得たからだけではないだろう。内容においても、川崎は徐々に”らしさ”を取り戻し始めている。背番号14の言葉がそれを裏づける。

「本来の”自分たちがボールを持つ”というところに特化しないと、このチームはダメ。(ボールを)持つ、(マークを)外すというところがピンボケになっていたが、丹念にパスをつないで相手を走らせて(疲れさせる)ということが、(4月21日、J1第8節の)清水戦あたりからできてきた」

“らしさ”を取り戻しつつあるなかで、大島が「(きれいに崩すだけでなく)、ドリブルでえぐって得点したり、セットプレーで得点できたりしたことが大きかった」と話したように、得点パターンの増加も好材料となっている。

 1点目はDF車屋紳太郎の、3点目はFWハイネルのドリブル突破から生まれたゴール。そして、2、4点目はどちらもCKから谷口、DF奈良竜樹がヘディングで決めたゴールである。中村は「苦しいなかでも(攻撃の)引き出しは増えているのではないか」と手応えを口にする。

 中村が「苦しいなかでも」と前置きしたように、今季、新たな船出となった川崎にとって、ここまでの戦いは苦難続きだった。

 昨季までチームを率いた風間八宏前監督(→名古屋グランパス)が退任し、時を同じくしてエースストライカーのFW大久保嘉人(→FC東京)も移籍。加えて、今季開幕直後からケガ人が続出し、なかなかベストの戦力を整えることができなかった。

 その結果、圧倒的なボールポゼッションで相手を自陣にくぎ付けにするような迫力ある攻撃は鳴りを潜め、ACLばかりでなくJ1でも勝ち切れない試合が続いた。大島は「監督も選手も変わり、よさの出し方が去年とは違って当然。去年のことに引っ張られる必要はない」と強気に語るが、やはり傍から見ていて昨季以前のイメージを頭に思い浮かべると、物足りなさを感じずにはいられなかった。

 そんな悩める川崎が、ようやく逆襲の狼煙(のろし)を上げた。ACLというハイレベルな戦いでグループ首位通過を果たしたことは、そんな表現で称えてもいいのかもしれない。

 もちろん、依然として物足りなさは残っている。

 イースタン戦を見ていても、ボールを失ったあとの守備への切り替えが遅く、すぐにボールを奪い返せないシーンが目立った。ボールポゼッションが本当の意味で武器となるためには、表裏一体となる攻守の切り替えの速さを備えていなければならないが、川崎にはそれが欠けていた。

 特に後半に入ると、攻めっぱなしになって守備への切り替えに緩みが見え、力の劣るイースタンに攻撃機会を与える回数が増えた。実際、前半は0本に抑えた相手のシュートを、後半は3本も打たれている。今季の川崎が試合終盤に安い失点を重ね、勝ち点を取りこぼしている原因はこの試合でも垣間見えた。

 しかし、だからこそ、広州、水原という強敵に競り勝ち、グループリーグを首位通過できたことの意味は大きい。もちろん、課題は修正する必要があるが、こうして結果がついてきたことで、これからも迷うことなく自分たちが目指すサッカーを追求できるはずだ。鬼木監督は語る。

「勝たなければいけない(最後の)2試合にしっかり勝てた。この結果は今後につながる。選手も自信を持ってくれていると思う」

 大逆転で望外の首位通過。モヤモヤとした試合が続く川崎にとっては、このブレイクスルーを今後の試合に――結果だけでなく内容にも――つなげたいところである。

■Jリーグ 記事一覧>>