柏戦で同点弾を演出した永戸。いまやチームに欠かせない戦力だ。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[ルヴァン杯グループステージ5節]仙台 1-1 柏/5月10日/ユアスタ

 YBCルヴァンカップもグループステージの後半戦に差し掛かった。現在Aグループ首位を走る仙台は10日に柏と対戦。13分柏のディエゴ・オリヴェイラに左サイドを突破され、最後はゴール前に詰めていたドゥドゥに右足でシュートを決められ先制を許すと、その後なかなかゴールを奪い返せない苦しい展開を強いられた。敗戦ムードも漂ったが、これまでルヴァンカップではMF佐々木匠、MF椎橋慧也、FW西村拓真と、20歳前後の若手が活躍してきた仙台。チームを救ったのはまたも若手だった。
 
 アディショナルタイムに入り、試合終了間際の90+4分、左ウイングバックで途中出場し、法政大から今季新加入の大卒ルーキーDF、永戸勝也が放ったクロスボールは西村の下へ。その西村のシュートのこぼれ球を拾ったFWクリスランが豪快に左足を振り抜き、ゴールネットを揺らした。
 
 結局、土壇場で仙台が追いつき、1-1で試合終了。貴重な勝点1を得て、Aグループ首位を守った。この試合に勝たなければグループステージ突破が難しくなる柏としては痛い引き分けで、柏の下平隆宏監督は「負けに等しい引き分け」と肩を落とした。
 
 J1リーグでも開幕戦から先発出場を果たした永戸はすでにA契約も締結し、左ウイングバックのレギュラーの座を掴んでいる。7日に行なわれたリーグ10節のFC東京戦は敗れたものの、左サイドから再三良いクロスを上げていた。
 
「永戸やキン(菅井直樹)が前進できましたが、クロスへの入り方が整理できていませんでした」と渡邉晋監督はハーフタイムにクロスへの入り方を整理すると、永戸のクロスから決定機が生まれ、試合終了間際には永戸のクロスからFW石原直樹のヘディングシュートであわやという場面もあった。
 
「4バックのチーム相手だと自分の所が空くのはチームとしても確認できているので、ボランチやシャドーの選手も自分を見てくれています」と永戸が語る通り、チームとしても4バックの相手には永戸のクロスを活用しようという狙いが共通理解として浸透している。
 
 永戸はこの柏戦でも67分、DF小島雅也に代わってピッチに入ると、クロスから決定機を生み出そうと試みた。注目すべきは様々なシチュエーションでクロスを蹴り分けていることだ。ハイボールにグラウンダー、GKの背後を狙ったりマイナスに入れたり、と多彩なクロスが相手の脅威となっている。
 
「少しずつクロスが中の選手と合い始めていて、(永戸)勝也自身もいろいろ工夫しながらクロスの高低だったり、相手のゴール前に落とすのかマイナスに入れるのか変化を加えたりしていて、非常に効果的になっています」と渡邉監督も永戸のクロスの質を評価した。
 
 永戸自身は「まず目の前に敵がいるので、相手に当てないことを心掛けています。得点につながったクロスは相手の股を通っていますので、そこは狙っています。その前にGKにキャッチされたボールも、もう少し低ければ直さん(石原直樹)やクリスに通っていたと思います。状況によって蹴り分けるのは自分の中で意識していて、プレーごとに良いボールが蹴れるようにいろいろ準備、練習もしているのでそれを出すだけです」と語り、クロスの質には相当なこだわりを持っている。
 
「抜き切れなくてもクロスボールを入れられればチャンスになります。自分なりに蹴り分けできるのが特長、強みだと思いますので、(リーグ戦の)FC東京戦でもいろいろやりましたが、結果につなげられるよう続けてやっていくだけですね」
 開幕から試合に出続け、経験と自信を積み重ねたことで、クロスの蹴り分けという自分の良さを存分に出せるようになった。
 
 この日ゴールを挙げたクリスランも「勝也はいつも良いクロスを上げてくれます。(自分は)背が高いので、ハイボールに合わせるのを狙っていますが、勝也は今日のように低いクロスも武器なので、それに対しても合わせられるよう準備したいですね」とクロスを合わせる側も永戸のバリエーション豊かなクロスに合わせようと意識を傾けている。
 
 仙台は開幕前に負傷したMF中野嘉大の復帰が間近で、今後は中野とのポジション争いが予想される永戸だが、レギュラーの座を守るためには武器であるクロスの質をさらに磨きたい。渡邉監督は「これからどんどん研究されてくるので、それをどうやって乗り越えるのか。(研究されても)そこを上回ってほしい」と期待をかける。もはや大卒ルーキーとは思えない存在感を見せ始めた永戸。左足からどんなクロスが繰り出されるのか、今後がますます楽しみだ。
 
取材・文:小林健志(フリーライター)