スペースXのファルコン9ロケット Image Credit: SpaceX

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 地球を多数の人工衛星で覆い、全世界のどこからでも高速インターネットがつながるようにする――。

 そんな壮大な構想を掲げる「ワンウェブ」という企業が米国にあり、そして孫正義氏が率いるソフトバンクが、そのワンウェブに10億ドルを出資することを決めたことについて取り上げたのは、昨年12月のことだった
(参照:『ソフトバンクが10億ドル出資する宇宙企業「OneWeb」ってなんだ!?』)。

 この記事の中でも触れたように、近年何かと注目を集めているイーロン・マスク氏率いる宇宙企業スペースXも、同じような衛星インターネット構想をもっている。それは1万機を超える数の人工衛星を使うという、ワンウェブ以上に壮大なものである。

◆多数の低軌道衛星を使った高速インターネット

 まず、ワンウェブやスペースXが目指している、衛星インターネットの仕組みについて、簡単に触れておきたい。

 衛星インターネットは、衛星放送などと原理は同じ衛星通信のひとつであり、現在でもすでに実用化されている。たとえば最近、飛行中の旅客機の中でもインターネットが使えるようになったが、あれも人工衛星を使ったサービスである。

 ただ、その多くは赤道上空の高度3万6000km、静止軌道と呼ばれる場所に置かれた衛星を利用している。静止軌道に置かれた人工衛星は、地球の自転と同期して回っているため、地球から見ると衛星が上空のある一点で静止しているように見える。そのため、アンテナを向ける角度を固定できるので楽ではあるものの、3万6000kmもの距離があるため通信に遅延が生じ、また静止軌道は赤道上にしかないため緯度が高い地域では使いにくい、などといった欠点がある。

 一方、1990年代には、より低い高度の軌道に乗せた衛星を使う通信サービスも登場した。高度が低いということは地表との距離が近くなるため、通信の遅延が小さくなり、また電波を出すエネルギーやアンテナのサイズを小さくすることもできる。その反面、静止衛星のように上空で静止するようにはできないため、複数の衛星を打ち上げて、常にどれかの衛星がユーザーの上空にあるようにしなければならない。

 こうした低い軌道の衛星を使った通信(電話やインターネット)は、いくつかの企業が事業化したものの、先進国では地上のケーブル網が猛烈な勢いで発達したことなどから採算が取れず、全社が破産を経験。現在は電話もインターネットも通っていない開発途上国や、山や砂漠、海の真ん中からの通信など、ニッチな用途で使われることで辛うじて生き残っている。

 そんな中、2012年に事業家のグレッグ・ワイラー氏が立ち上げたのがワールドヴュー、のちに「ワンウェブ」と呼ばれることになるサービスである。ワンウェブは、従来の低軌道衛星通信で使われていた衛星よりも小型の衛星を、約700機も打ち上げ、全世界にブロードバンド・インターネットを提供しようとしている。

 このような壮大な計画が可能になった背景には、電子部品の小型化、高性能化によって、小さくても高い性能をもった衛星が造れるようになり、小さいということは製造コストも安く、さらにロケットの打ち上げ費用も抑えられるようになったことがある。

 ワンウェブは早ければ今年から、欧州のロケットを使って最初の1群の打ち上げを始め、2019年にもサービスを開始するという。

◆1万機以上の衛星で地球を覆いブロードバンド・インターネットを

 スペースXも、ワンウェブと似た衛星インターネット構想をもっていることは、2015年には明らかになっていた。しかし、具体的にどのような衛星や軌道を使うのか、いつごろのサービス開始を目指すのかといった詳細は、噂や、電波使用の申請書などから漏れ伝わってくるだけで、公式にはなかなか明らかにされなかった。