シェアード米S&Pグローバル・チーフ・エコノミストが、「米国と世界の行方―ウォール街からみるトランプ政権評価」と題して講演。規制緩和や減税、インフラ投資などは米経済界から支持れているとした一方で、移民排斥や保護主義などは「リスクが高い」と指摘した。

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2017年5月10日、米国金融界に詳しいポール・シェアード米S&Pグローバル・チーフ・エコノミストが、「米国と世界の行方―ウォール街からみるトランプ政権評価」と題して日本記者クラブで講演した。「規制緩和や減税、インフラ投資などは米経済界から支持されている」と評価した一方、移民排斥や保護主義など復古的な政策は「リスクが高い」との認識を示した。また米政権は北朝鮮対策で中国に圧力をかけてもらう見返りに、対中経済要求を抑制、今後も続くと述べた。

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規制緩和、減税・税制改革、インフラ投資などは経済界から支持されている。アベノミクスと同様の政策といえる。ところが「国境に壁をつくり移民を制限する」との保護主義的な主張は経済界から支持されない。また「貿易赤字対策」では、1980〜90年代に交わされた非関税障壁などの古い議論が再登場している。

トランプ氏が当初公約に掲げた「北米自由貿易協定(NAFTA)見直し」についても、より近代的な形のものに調整される方向だ。その場合環太平洋連携協定(TPP)が近代化の手本になる。数年後に(米国の離脱で止まっている)TPPが違う形で復活するかもしれない。

米経済界はトランプ大統領の登場が「貿易戦争」の前兆になると見ていた。地政学的なリスクでは、中東よりも北朝鮮問題の方が甚大なリスクになり、解決はかなりの難題になると言われていたが、まさにその通りとなった。当初トランプ氏は中国に対して貿易為替問題で圧力をかけるとしていたが、北朝鮮の核問題を解決するために、中国に中心的な役割を担うよう要請。中国のリーダーシップが必要として対中経済要求が手控えられ、継続される。

トランプ政権の経済政策は全体を見れば整合性が取れていない。大幅経常赤字の理由は投資に比して貯蓄が足りないからだ。経常赤字を減らすためには貯蓄をもっと増やす必要がある。

3%の経済成長を持続的に目指すことを掲げているが、2010年度に景気回復が始まってから年平均2.1%にとどまっている。1〜2%が適正で、3%は野心的だ。投資増と生産性向上で引き上げるしかない。生産性の伸びは0.5%であり、これを引き上げるのは並大抵ではできない。労働力増には移民の拡大が必要だが、トランプ氏が理解しているか疑問だ。

トランプ政策へのNYウォール街の期待は大きいが、保護主義、貿易戦争など負の部分が交錯。マーケットの動きも要注意だ。(八牧浩行)