今年の上海モーターショーで特に目を引いたもの、それはEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)など、いわゆるNEV(ニュー・エネルギー・ヴィークル)だ。中国メーカーだけでなく海外勢も含め、どのメーカーも今回はNEVのオンパレード。このまま行けば、中国は世界一の環境車大国になりそう。そんな予感すら感じるほどの勢いだった。

 

補助金は廃止予定も中国版ZEV法の施行がほぼ確実に

中国が抱える最大級の社会問題と言えば「PM2.5」による大気汚染だ。その中国ではクルマも大気汚染のやり玉に挙がっており、その対策の一環として政府が進めているのが“中国版ZEV法”こと「新エネルギー車クレジット管理規則(通称:NEV規制法)」。これはすでに米国カリフォルニア州で実施されているZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制法)を参考に、2018年にも中国国内で施行される予定とされている法律だ。

 

こうした状況下でNEVはどのぐらい中国で売れているのだろうか。中国汽車工業協会の資料によれば、2016年のNEV生産台数は約5割増の51.7万台で、EVは41.7万台、PHEVは9.9万台に急増したという。驚くことにこれは世界最多の実績。言い換えれば、中国は世界最大の自動車大国と同時にいつの間にか“環境車大国”ともなっていたのだ。

 

ただ、これには裏がある。バッテリーを中国資本メーカーのものを使うことの条件はあったものの、該当車を買うと中国政府と地方政府から多額の補助金を手にすることができたのだ。驚くのはその金額。たとえばBYD社のSUV「E6」を北京で買ったとしよう。この場合、20万元(約330万円)の車両価格に対して中央政府と北京政府から5.5万元ずつ計11万元(約180万円)が支給されたのだ。つまり、車両価格の半額以下で買えることとなる。しかも自動車税の免除や、本来なら抽選となるナンバープレートも与えられる大盤振る舞いっぷり。

 

しかし、その大盤振る舞いは今年に入って縮小し、2020年には廃止される方向が決まった。その理由ははっきりとしないが、売れてもいないクルマを登録して補助金だけ受け取ったり、本来なら受給できない車両を認定車両として登録したり……と不正が相次いで発覚。高額の罰金を科すなどして対応したものの、結局この大盤振る舞いは廃止することになってしまった。

 

とはいえ、中国国内で自動車メーカーがNEVへと向かうのはまず間違いない。冒頭にも述べたように「NEV規制法」が2018年にも施行されるのは確実な情勢にあるからだ。外資メーカーもこの準備は着々と進めており、ボルボはすでに中国国内で2019年にもEVの生産を決定したほど。当然ながら競争は一気に激化し、これは中国企業といえども補助金に頼らず勝ち抜ける高い技術水準とコスト力が欠かせなくなったことを示しているとも言える。

 

中国メーカーも斬新なデザインで攻勢をかける

そこで年間10万台以上も販売し、NEV分野で米テスラ車を抑えて世界一となっていたBYD社は、今年の上海モーターショーで新たなるチャレンジに打って出た。それが、BYD社が新たに開発した7人乗りMPV(多目的車)の新型車「宋7座版」と、7人乗りSUVの「王朝概念車」である。両車ともPHEVを採用しており、そのデザインは従来の中国車とは思えない斬新さ。デザイン面でもパフォーマンス面でも今回のZEV中No.1と評価してもいいと思えるほどだ。

↑BYD社が発表した7人乗りSUVのPHEVコンセプトカー「王朝概念車」

 

また、中国ナンバーワンのシェアを持つ上海汽車集団も思い切った攻勢をかけてきた。2017年のNEV販売台数を8万台にすると発表し、そのイメージリーダー的存在としてMGブランドの電気自動車スポーツカー「MG E-モーションコンセプト」を登場させたのだ。

↑上海汽車集団のMGブランド「E-モーションコンセプト」

 

BYDもMGもそのデザインは実に垢抜けていて、とにかくカッコイイ! これには外国人デザイナーが大きく関わっているとされ、たとえば、BYDの2車はアウディやアルファロメオでチーフデザイナーを務めてきたドイツ人デザイナー、ウォルフガング・エッガーの手によるもの。

 

BYD社によれば「良くも悪くも政府が決めたことには従わなければならず、そのなかで我々が進める道を考えるだけ。すでにこうした状況は織り込み済みで、今後はブランド力の向上を目指し、生産販売台数も増えていくとみている」とのこと。補助金に頼らずとも外資との競争に勝てるだけの製品作りが中国車でもいよいよ本格化したというわけだ。

 

中国は今や世界最大の自動車大国。その中国が“2018年”に向けて環境車の普及へ大きく舵を切ったことで、世界へ与える影響は極めて大きい。今後、中国車が環境をテコに世界へ進出することも現実味を帯びてきたと見ていいだろう。

 

【上海モータショー NEVギャラリー】

もちろん、日本のメーカーもNEV関連モデルを披露。

↑ホンダはCR-Vのハイブリッドモデルを発表。残念ながらNEV規制法には当てはまらない

 

↑トヨタは2018年までに『カローラ双撃』と『レビン双撃』のプラグイン化を実施すると発表

 

↑三菱が発表したアウトランダーの後継モデルとされる次世代のPHEV「MITSUBISHI GT-PHEV Concept」

 

そのほかのブランドの出展モデルは下のギャラリーからご覧ください。