バンドじゃないもん!『METAMORISER』

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 アニメ『けものフレンズ』が大きな話題となり、どうぶつビスケッツ×PPPが歌うオープニング(OP)テーマ「ようこそジャパリパークへ」も、「ようこそ」と検索すればサジェスト最上位に表示されるほどに注目されたのが、昨期のアニメシーンだった。

 アニメOPがそのアニメに与える影響はもはや言うまでもなく、OP映像とリンクするカタルシスや最終話で流れてくれたときの喜びなどは筆舌に尽くしがたい感動がある。では、今期より始まった春アニメのOPテーマのうち、かのジャパリパークを思わせる「この曲はなんかヤバいぞ?」というタイトルを、いくつかピックアップし分析してみようと思う。

・METAMORISER / バンドじゃないもん!(作詞・作曲・編曲:Q-MHz)

 「METAMORISER」は、“アイドル界のミクストメディア”をキャッチフレーズに掲げるバンドじゃないもん!が歌う、 『つぐもも』のOPテーマ。3度目となるQ-MHzとのタッグは、随所に高いアレンジ力を感じさせる。入りの叙情ピアノからハイテンポへ移行するこの流れも、どこか懐かしいパターンだ。メロが始まってからは間隙を許さぬ声の応酬といった具合で、4拍目を埋める合いの手や多人数ならではのパート分けが楽しい。メロ中で唯一四分音符分ボーカルが抜けるメロ2週目1拍目には、そのアウフタクトから「タララン」というリードシンセを挟み込んでいる。この手抜かりないアレンジには、思わずニヤリとしてしまう。

 ラップから始まるBメロは、2ビートに乗せてブリブリと鳴るシンセベースも聞き所。しかしこのパートは全編ブルージーなノリで通すのではなく、後半からはメジャー的進行に戻る。戻ってからもすぐにサビへ到達することはなく、2拍で降りて行く<E / D / C#>でいったん歩幅を緩め、次の<F# / G#/ A / C>では16分音符の早口で一気にストライドを詰めるなど、非常にバリエーション豊かなパートとなっている。実質、このBメロは約20秒(!)もあり、サビ前のボリュームとしては異質にしてやりすぎなレベルだ。だが、それがいい。

 お膳立て極まったサビはスローテンポで聴いた冒頭のメロディーとほぼ同じ。しかしコード進行は変化しており、ピアノの時は<F# / B / C#sus4 / C#>と開放的に落ち着いた部分が<D#m7-5 / G#7 / C#m>とよりエモく切ないハーモニーになっている。<VII#m7-5→V7>は切なさの黄金進行だが、ベースの鳴らすD#は一気に胸をキュっとさせる。それを引き立てるのが、通奏音的に流れているストリングシンセだ。キラキラ成分を付与しつつ、忙しいメロディーと対比する流れるような副旋律が奏でられている。繰り返し後のドラムパターンの変化も、同じ切なさは繰り返さぬ前め感で突き進みつつ、サビラストの焦らしへバトンを渡していく。最後は<そっと拭いてあげるよ>で、<F# / B>の綺麗なツーファイブが決まっているのでそのままEに落ち着きたくなるところ。しかしそうは済まさないのがQ-MHz編曲。<D / D# / E>というメロディーでDを解禁し、ペンタトニック感を出したままアニソン的なシャウトでサビをエンド。このDの影響でイントロのロックスケール感との親和性を高めており、たった4小節でエモかったサビの空気をガラリと一変させている。

 早口の心地良さ、ロックなノリの良さ、切なさ感じるエモさ、そしてアイドルソングらしさも詰まった、非常に完成度の高い楽曲だと感じた。躍動感あふれる映像と共に味わってもらいたい。

・恋?で愛?で暴君です! / Wake Up,Girls!(作詞:畑 亜貴 作曲・編曲:田中秀和(MONACA))

 WUGが歌う、アニメ『恋愛暴君』のOPテーマ。この曲は15秒CMでサビが流れるが、筆者的にはイントロやメロを推したい。半音で下っていくメロディーに、耳コピを泣かせるジャジーで複雑な和音。オシャレで可愛らしい雰囲気かと思いきや、合間に挟まれるギターのハーモニクスやメロ前のディストーション全開なブリッジミュートなど、可愛い顔して実は怖い的な二面性を感じたりもする。G7が続くメロは、ハネるようなリズムとギターのカッティングがノリが良く、とてもキャッチーに仕上がっている。こうしたドミナントセブンスのもつ不安定さが利いたアニソンといえば、『狂乱家族日記』(2008年)のOP「良妻賢母宣言」(MOSAIC.WAV)を思い出す。あちらはメロがE♭でベースがFなため結果的にセブンスに聞こえるが、この不安定さと拍による終始さはクセになるものがある。

 Bメロはイントロと同じ半音下りのフレーズ。ここでサビ感を出しているのは<目元嬉しそうにしてほしいのに>の後半の2小節。ここのDメジャーが「ここから先はポップス進行ですよ」という合図的役割を担っており、今まで続いたハズし系和音に別れを告げている。それにしても、『恋愛暴君』というタイトルで<恋で愛で暴君です>というフレーズを生み出した畑亜貴のナチュラルパワーに改めて恐れおののいた。この単語のためのこの旋律なんじゃないかと思うほどにハマっている。

 解放と明瞭のGから始まるサビの進行はわりと黄金進行系。メロディーもかなりゆったりとしたリズムになっていて、青空のような澄んだイメージを想起できる。途中<ハートが君と>の部分はFになっているが、よくある進行だとここをCmにして次のBmに繋げたりするところを、E♭のような濁った音が入っていないため明瞭さを湛えたままわずかにズレた感じがして、オシャレさを感じる部分だ。繰り返し後は<G / B7 / C / AonC#>とI-III7進行解禁で、さらに半音上げながらEに繋ぎクライマックス感を出していく。高まるハーモニーのダイナミクスに比例するように<ずっと恋で ずっと愛で>という、歌詞の韻の心地良さも忘れてはいけない。こうした同じ単語が続く部分はウルっときてしまうことがある。

 オシャレ&キュートな曲調にグっと来た人も多いであろう本楽曲。実際に口ずさんでみれば、その言葉のハマり具合にさらに馴染めるはずだ。

・あ・え・い・う・え・お・あお!! / 劇団ひととせ(作詞・作曲:松浦勇気 編曲:睦月周平)

 曖昧3センチ(『らき☆すた』OP「もってけ!セーラーふく」/2007年)の系譜というかGJ部(『GJ部』OP「もうそう☆こうかんにっき」/2013年)の遺伝子というか(でもダンスは2011年『日常』っぽい?)、久しぶりにやってきたバッチバチでガッチガチなアニソン。最近ではあまり聞くこともなくなった“電波ソング”というワードをここで使わずしていつ使うというのか。今やアニソンとひとまとめにしてしまっても、その中でもロックだったりポップスだったりシンフォニックだったりするものだが、拡大し続けるアニソン大陸において、こうした原始アニソンとでも言うべき楽曲が2017年になっても生まれてくることに感謝したい。

 この曲はオフィシャル的にも変拍子と早口をアピールしており、開幕10秒でその威力を思い知ることになる。ズレる部分を全て四分音符単位でカウントするべきか、アクセントを意識して<楽しんでください>を5/8でとって、次を3/8、次を6/4で取るべきか悩ましいところだ。続く早口言葉の部分では5/4が出てきたりもするが、こうした変拍子が好きな人はしっかりカウントをとってタイミングを覚えるのがひとつ楽しみだったりもするだろう。音ゲーになった時が楽しみな楽曲といえる。

 イントロで変拍子フェスの洗礼を受けたならば、メロの5拍子くらいならそれほど違和感なく聞けてしまうのが慣れの恐ろしいところだ。この後Bメロでは3/4がやってくるが、それすらも自然な流れに聞こえてくる。ボーカルは電波ソング恒例のわちゃわちゃトークパートで、「もってけ!セーラーふく」を思い出す10年来のアニメファンも少なくないだろう。しかしこのBメロ、後半はややミュージカル仕立てになっていて新鮮さを感じられるところでもある。キャラソンでこうした歌い方をしているのはいくつかあれど、OPとしてやってしまっているというのはこれもまたアニソンの懐の深さを感じるところだ。キャラクターの性格をOPの段階で伺い知ることができる。

 紆余曲折(?)あってのサビへ。ここはイントロと同じメロディーになっていて、いわゆるちゃんと聞けるパートとして作られている。全体のテンポこそ大人しいが、16分が混ざっていたりとややリズムキープを要求されるメロディーになのが歌ってみるとわかると思う。また、サビ自体のダイナミクスが抑え目なおかげで曲の印象のほとんどを変拍子成分にもってくことができると捉えることもできる。サビがサビ以外を引き立てるという、コペルニクス的楽曲とでも言うべきか。ちなみにサビラストの単語連打部分は全て4/4で取ることができる。 これぞアニソン、これぞ電波。個人的に、今期のファンタジスタ・アニソンだ。

 ピックアップはしなかったが、優しくないアニメの雰囲気を存分に感じさせる『正解するカド』のOPテーマ「旅詩」(徭 沙羅花 starring M・A・O)や、(K)NoW_NAMEの細やかなアレンジが光る『サクラクエスト』のOPテーマ「Morning Glory」など、聞き応えのある楽曲は他にもあった。特に『正解するカド』は岩代太郎が劇伴だけでなくOP曲も手がけているというのが特徴で、叙情的で壮大な雰囲気に『ロードス島戦記-英雄騎士伝-』(1998年)の「奇跡の海」(坂本真綾)を思い出した次第だ。

 とはいえ、OPテーマを楽しむ最も良いスタイルは、そのアニメのOPとして視聴することだろう。作品としての面白さと、楽曲としての感動。それらを同時に味わえるのなら、これに越したことはない。今期はどの作品で最終話にエモーショナルなOPテーマを聴くことができるのか、特に『つぐもも』あたりには期待したいところだ。(ヤマダユウス型)