社会貢献事業も行う遊技業が増えている(写真はNEXUS株式会社)

写真拡大

 吉野家ホールディングスが、吉野家で働く大学生のアルバイトを対象に、奨学金制度を導入したニュースは飲食業界に大きなインパクトを与えた。

 大学卒業後に同社に入社すれば、4年間の勤務で全額免除、更に驚くのは、同業の飲食チェーンに入社しても半額を免除するというもの。2018年4月に大学入学予定の高校生アルバイトを対象に、最大10名を選考するとしている。様々な意見はあろうが、学生はお金の心配なく勉学に励めるし、吉野家は採用と離職率低下の面でメリットのある取り組み。

 このような取り組みが、実はパチンコ業界でも行われている。

 パチンコ業界の採用事情は、厳しいと言われる飲食業界のそれよりも苦しい。そもそも「パチンコ業界」というイメージが採用の現場においてはマイナスに働く側面が強く、また若者のパチンコ離れが顕著化するなか、「パチンコ好きが入社希望動機」という従来の「強み」も完全に消えている。量の確保が出来なければ、必然的に質も下がる。パチンコ関連企業が、勝ち組と負け組の二極化していくなか、勝ち組企業にとって、今後の店舗展開や事業拡大を支える人材の確保はいつにもまして重要な経営課題である。

◆パチンコ企業の新たな採用の取り組み

 そのような状況下で、奨学金を利用した新たな取り組みを始めた会社がある。

 群馬県を中心に「D’STATION」の屋号で関東地方40店舗を展開するNEXUS株式会社(群馬県高崎市)。同社は創業21年、売上高は2400億円(平成28年6月期)。2014年には「群馬県優良企業ランキング 第1位」、2016年には「北関東売上高ランキング 第7位」を獲得した、まぎれもない「勝ち組企業」である。

 そんな同社が、新たな人材の獲得のために、2017年3月1日より「奨学金返済支援制度」の導入を決定した。この制度は、学生時代に奨学金制度を利用し、現在返済中の社員に対し、入社後5年までは月々の返済額を給与に上乗せするというもの。支援額の上限は180万円までとなっている。

 これは既存の社員にも適用される。実質180万円までの奨学金は全額返済を肩代わりするという制度だ。

 奨学金制度を利用する学生は年々増加しており、JASSO(日本学生支援機構)によれば2014年度の奨学金利用者は全国で141万人、大学生2.6人に1人が利用していることになる。

 しかしその多くは「貸与型」で、学生には卒業後に返済義務が発生する。利用者の多くが就職後の返済に生活的負担を感じているほか、2014年度末における延滞3カ月以上の延滞債権額は2,491億円に上り、近年ではこの延滞者に対する悪質な回収方法が社会問題にもなっている。

 NEXUS株式会社は、このような状況を、社内調査も含め確認したうえで、「少しでも働く社員の負担を減らし、自分の将来設計に向けて十分に力を発揮できるよう、仕事に励んでもらいたい。そのための取組みの一つとして奨学金返済支援制度の導入を決定した」としている。

◆客の残した端玉を奨学金に

 またパチンコ業界では、奨学金に関わる別の取り組みも動き始めた。

 埼玉県などで「SAP」の屋号で18店舗を経営するサンキョー株式会社や、業界トップの売上を誇る株式会社マルハンなどの企業が、「pp奨学金」という取り組みをスタートさせた。

 これは、パチンコやパチスロで勝ったとき、出玉を景品に換えた際に出る余り玉(端玉)を学生のために寄付してもらうというもの。

 カウンターの脇に「端玉募金箱」を設置し、お客さんに玉やメダルを寄付してもらう。これを1玉4円、1コイン20円で換算し、社会福祉法人「さぽうと21」(東京都品川区)の協力のもと奨学金として学生に支給していくというもの。この奨学金に関しては、返済義務は定めないという。

 この「pp奨学金」の場合は、企業の採用活動と直接結びつけるのではなく、パチンコ業界の社会貢献事業の一環として行われる。名前の「pp」には、ほんの少し(ピアニッシモ)の善意を、という意味を込めた。協力店を増やし、200人に月5万円を支援することが当面の目標。2018年度の募集は9月から始まる。

<文・安達 夕>